―17―
「━━━…出せよッ!
ここから…早く出せ!」
サトシをさらったロケット団。
とある森の中でサトシは小さな檻の中に閉じ込められていた。
檻を掴み、ガタガタと揺らしながら出すように言うが、ロケット団がそれに素直に従うはずがない。
「あんたはそこで大人しく待ってなさいよ〜?
明日にはボスのところに連れてってあげるから♪」
「これで…俺達も幹部昇進か〜…。
長い道のりだったなー…。」
「ピカチュウ以上のお宝がこんニャに近くにあるとは思ってなかったニャー♪」
カップラーメンを食べながらロケット団たちはご機嫌な様子で笑っていた。
「…俺を連れて行ったところで、俺はまだ力も目覚めていない。
そんな中、俺を連れて行ったって信じてもらえるもんか!」
「それを判断するのは、ジャリボーイじゃなくてボスだニャー。」
「………俺が捕まったら…、伝説のポケモンたちが苦しむことになる…。
そんなこと…させるもんかッ!
モウカザル!檻に向かってマッハパンチだ!」
檻の中で呟かれた言葉。
カップラーメンを食べる手を止めてサトシを見たロケット団は驚愕した。
モンスターボールからモウカザルを出したサトシはモウカザルのマッハパンチで檻から脱出し、森の中を駆けて行ってしまった。
「ジャリボーイが逃げたぞ!
しまった…、ジャリボーイのポケモンのことをすっかり忘れてた…!」
「お、追うニャ!」
「昇進のためにもジャリボーイを逃がすわけにはいかないのよ!」
森の中へ消えたサトシを追ってムサシたちも森の中へ消えていった。
***
「ハァハァ…、はっ…。
ここまで来れば…大丈夫…だよな…。
モウカザル、ありがとう。」
「ウキャーッ!」
ロケット団を撒くために必死に森の中を走りつづけたサトシは息を乱しながら、ようやく立ち止まった。
それと同時に自分を助け、一緒に走ってくれたモウカザルにお礼を言いながらそっと頭を撫でるサトシにモウカザルはサトシな服の裾を掴み、くいくいと引っ張った。
「…モウカザル?」
その意味が分からず、サトシは首を傾げた。
モウカザルは真剣にサトシに自分の思いを必死に伝えた。
「ウッキャー、ウキャウッキャーキャー!」
「……戻れないよ。
みんなのところには…戻れない。」
「ウキャ!?」
「俺のせいで、みんなを危険な目に遭わせるわけにはいかないんだ。」
「ウキャキャ!
ウッキャー!」
「ごめん、モウカザル。
もう…決めたんだ。
一緒に…強くなろうって約束したのに…、ごめんな…モウカザル。」
「ウキャー…。」
悲しげに笑うサトシにモウカザルはもう何も言えなくなってしまった。
まだ、短い間しかいないけどサトシは決めたことを簡単に曲げるような人じゃないことも分かっている。
モウカザルはサトシの力になれない自分が悔しくてたまらなかった。
「…モウカザルは…ピカチュウたちのところに戻…、」
「ウキャ!ウッキャー!」
サトシが言おうとしていることを理解したモウカザルはそれを拒絶するように首を横に振りながらサトシの手を掴んだ。
━━いつも一緒にいるよ。
モウカザルはサトシにそう伝えたかった。
「ブイブイ!」
「ムクホー!」
「ハンガ!」
「グライオー!」
モウカザルの気持ちが分かったのか、今にも泣き出してしまいそうなくらいに瞳を潤ませていたサトシ。
そんなサトシを励ますように他のポケモンたちもモンスターボールから出て、サトシの周りに集まった。
「…ありがとう…。
ありがとう…、みんな…。」
優しい仲間たちにサトシは俯き、声を震わせながらそう言った。
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