―16―
サトシを守るためにピカチュウはロケット団と対峙していた。
「ピカチュウ、いいんだ。
ありがとう。」
自分に背を向けてロケット団を睨むピカチュウにサトシはそんな言葉をかけた。
「ぴ!?
ピカピ!!
ピーカ、ピカチュウ!」
「…悪いけど、俺は捕まるつもりはない。
まだ…自分の中にある力が何なのかも理解出来ていない今、ポケモンたちを守るためにも…捕まるわけにはいかないんだ。」
「ピカピ…?」
ロケット団に向かってそう言ったサトシの目には強い意志を感じた。
ピカチュウはサトシが考えていることが分からず、心配そうにサトシの顔を見つめることしか出来なかった。
「ジャリボーイの意見なんか聞いてないのよ!」
「そうだニャ!
ニャーたちの昇進のために捕まった方が身のためだニャ!」
「これで、缶詰やカップラーメン生活ともおさらばだ!
ニャース!」
「分かってるニャ!」
昇進のためにサトシを捕らえようとするロケット団はサトシの言葉に耳を傾けようとはしなかった。
コジロウに呼ばれたニャースはおめむろに、操縦用の機械を取り出し、そのボタンを押した。
「特大マジックハンドくん、発動!」
「Σ…ピ!?」
「Σ…なッ!?」
ニャースがボタンを押した瞬間、ロケット団の背後から特大サイズのマジックハンドが姿を現した。
あまりの大きさにサトシもピカチュウも驚いたように目を見開いた。
「さっきは操作盤に攻撃されたら壊れるようなものだったけど、今回はあのマジックハンドくんに、ジャリボーイを捕まえて離さないようにインプットしたから、仮に操作盤を壊されてもマジックハンドくんが、捕まえておいてくれるんだ。」
「ピカチュウもついでにゲットでチュー♪
さ、行くのよニャース!」
「了解だニャ!
特大マジックハンドくん、ジャリボーイとピカチュウを捕まえるのニャ!」
「ピ…ピカー…!!」
「あ…ッ!
危ない、ピカチュウ!」
━━━ドンッ!
「ピカピ!!」
「ぐあ…っ!」
ポケモンセンターの中にいたサトシとピカチュウを捕まえるために、建物を破壊しながらも自分達に向かって飛んできたマジックハンドにサトシは咄嗟にピカチュウを助けるためにピカチュウを突き飛ばした。
ピカチュウを突き飛ばしたサトシはマジックハンドに背を向けていたため、逃げる隙もなく、再びロケット団に捕まってしまった。
「ピカチュウは逃したけど、ジャリボーイは捕まえたことだし、さっさと撤収よ♪」
「「了解!」」
再び、捕われの身となってしまったサトシはギリギリと締め付けられ、苦痛に顔を歪めた。
「ピカピ、ピカピカチュウ!」
「ピカチュウは何て言ってるのよ?」
「サトシ、今助ける!って言ってるニャ。
それは無理だニャー♪」
「そうそう。
さっきのマジックハンドと同じように攻撃すればするほどジャリボーイが苦しむようになってるからな。」
「ピカー…、ピカピ…。」
ロケット団の話を聞いたピカチュウは悲しげにサトシを見つめた。
どうすればサトシを助けだせるのか、ピカチュウには分からず、瞳を潤ませて見つめることしか出来なかった。
いつだって自分が捕まった時、サトシは助けてくれるのに。
サトシが捕まってる今、何も出来ずにサトシを見つめることしか出来ない自分が歯痒くてたまらなかった。
どうしたらサトシを助けられるのか、必死に考えるピカチュウ。
「サトシ!?
大丈夫か!?」
「扉が…開かない!?」
そんなピカチュウの耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。
これでサトシが助かる。
そう思ったピカチュウ。
しかしマジックハンドが無理矢理、建物に侵入してきた時の衝撃で扉は歪み、開かなくなってしまっていた。
「天は我等に味方した!」
「さっさと撤収よ〜♪」
「帰るニャー♪」
変形した扉を開けようと必死になるピカチュウ。
「ピ、…ピカピーーーーーーッ!!」
しかし、ロケット団がそれを大人しく待つはずもなく、サトシはロケット団にさらわれてしまった。
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