―15―
シゲルたちがサトシが眠る部屋を出て、別室へと移動してすぐ、サトシは目を覚ました。
目を覚ましたサトシの表情はいつもの笑顔など、どこにもなく…、とても暗いものだった。
「ピ、ピカピ…。」
「ピカチュウ…。」
明らかに気落ちしている様子のサトシにピカチュウが気遣わしげに声をかけた。
そこでようやく自分の近くにピカチュウがいたことに気付いたサトシはピカチュウを見た。
ギンガ団にもロケット団にも狙われる自分。
そうなれば危険が及ぶのは自分だけじゃない。
ピカチュウやタケシやヒカリ、…シゲルやシンジにも危険が及ぶことだってあるだろう。
そんなことにサトシ自身が耐えられるかと聞かれれば、間違いなくサトシはそれを否定するだろう。
━━叶えたい夢があった。
それを目指して仲間と苦楽を共にして旅をしてきた。
それらを捨てなければならないのかもしれないのだと考えただけでサトシの頭の中は悲しみや苦しみ…それらが渦巻いて強い戸惑いが生まれた。
いっそのこと、全てが夢であれば良かったのにと心から願った。
いろいろな感情が混ざったサトシは目を覚ました途端、助けてくれたシンジに八つ当たりをしてしまった。
「…最低だよな、…シンジに八つ当たりするなんて…。」
「ピカピカ、ピカピ!
ピカチュ!」
「…ハァ…。」
「ピカピ…。」
自己嫌悪に陥るサトシにピカチュウは必死に伝えた。
サトシが悪いんじゃないと。
あまり自分を責めないで、と。
だが、ピカチュウの言葉もサトシの心に灯を燈すことはなかった。
「ピカチュウ、…おれ…。」
「ピカピ!ピカチュ、ピカピカ!」
サトシの表情を見たピカチュウはサトシが悪い方へ悪い方へと考えていることに気付いた。
そんな風に考えないで!
そう伝えたくても、ピカチュウには人間の言葉を話すことは出来ない。
今日ほど、それを呪ったことはなかった。
「ピカチュウ、お前はここにいろよ。
……俺は行く。」
「ピ!?
ピカピ!ピカー!」
何かを決意したような表情を浮かべながら言ったサトシの言葉を聞いただけでピカチュウはサトシが1人でどこかに行ってしまうつもりなのだと気付いた。
しかし、ピカチュウがそれを良しとするはずがない。
いつだって一緒だったのに、離れていこうとするなんて嫌だとピカチュウは頭を振った。
「「なーっはっはっはっ!」」
重く、暗い空気が辺りを満たす中、能天気な笑い声が部屋に響いた。
声のした方に視線を向ければ、そこにはシンジのリングマのはかいこうせんで空の彼方へと消えたはずのロケット団がいた。
「ピカピ!
ピカー!ピカチュピ!」
「1度やられたくらいで諦めるほど俺達は聞き分けがいい人間じゃないんだよ!」
「ジャリボーイゲット目指して再び登場だニャー!」
「さあ、ジャリボーイ!
大人しく捕まっちゃいなさい!」
「ピカチュピ!
ピッピカ!チュー!!」
捕まれ、と言うロケット団からサトシを守るようにピカチュウはサトシの前に立ち、電気袋からばちばちと電気を放ちながら、警戒心を露にしつつ、ロケット団を睨んだ。
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