―11―
「サトシッ!」
「しっかりして、サトシ!!」
「ピカピ!!」
落とし穴から脱出したシゲルたちはまっさきにリングマに抱えられているサトシの元に向かった。
リングマからサトシを受け取ったシゲルは意識のないサトシの様子を伺った。
「サトシの様子はどうだ?」
「…どうやら、気絶しているだけみたいだね。
特に大きなケガもないみたいだし、じきに目を覚ますと思うよ。」
「よかったー…。」
シゲルの言葉にヒカリは安堵の息をもらした。
「シンジ、サトシを助けてくれてありがとう。
助かったよ。」
サトシに大きなケガがないことを確認したタケシは、サトシを助けた人物…、シンジに感謝の言葉をのべた。
「…シンジ…?
じゃあ、君がサトシのライバルの…?」
「…誰だ、お前。」
「ああ、すまないね。
僕の名前はシゲル。
ちょっと訳あってサトシたちの旅に同行してるんだよ。」
「あいつと…?」
サトシと共に旅をしていると聞いたシンジはちらりとサトシの方に視線を向けたあと、ぽつりとそう呟いた。
「…サトシを助けてくれたこと…、感謝しているよ。
僕からもお礼を言わせてほしい。
ありがとう、シンジ。
タケシ、サトシを早く休ませた方がいい。
近くにポケモンセンターはないか調べてくれないか?」
「あ、ああ。
ちょっと待ってくれ。」
シゲルの言葉にタケシはポケモンセンターがないか、ヒカリと共に調べはじめた。
「…お前は…なんだ?」
サトシの体を支えるように抱えるシゲルに向かってシンジはそんな言葉を投げかけた。
「…シゲルだと、さっき名乗ったつもりだったんだけど…聞こえていなかったかな?」
「そういう意味で聞いたわけじゃない。
そいつの…サトシのなんだと聞いている。」
「…それは答えなければいけないことかい?」
「…なに…?」
「…………僕はサトシのことを大切に思っている。
それだけだよ。」
「……………。」
「シゲル、一番近いポケモンセンターの場所がわかったぞ。」
「ああ、今いく。」
タケシに呼ばれたシゲルは手持ちからエレキブルを出すと、サトシに刺激を与えないようにポケモンセンターまで運ぶように頼んだ。
シゲルのエレキブルに抱えられ、シンジから離れていくサトシと、その横を歩くシゲルを見て、シンジは妙な苛立ちを感じた。
「なるほど…、そこならすぐに着きそうだね。
そこに向かおう。」
「うん!
サトシ…、大丈夫かしら?」
「サトシならすぐに目を覚ますさ。
さ、ポケモンセンターに向かおう。
シンジ、本当にありがとう。」
「…待て。」
最後にタケシが改めてシンジにお礼を言い、その場を立ち去ろうとしたシゲルたちをシンジは引き止めた。
引き止められるとは思っていなかったタケシとヒカリは首を傾げながらシンジの方を振り返った。
「…俺も行く。」
「シンジが?なんで?」
「…お前には関係ない。」
「なによ!関係ないなんて言い方ないじゃない!」
「まあまあ。
シンジはサトシを助けてくれたんだ。
シンジも一緒に行くというなら来てもらえばいいじゃないか。」
「……わかったわよ。」
カンに障る言い方をされ、腹を立てるヒカリだったが、シンジはサトシを助けてくれた。
だから、ここはシンジの言う通りにしようと言うタケシにヒカリも渋々頷いた。
「……………。」
その会話をシゲルは何も言わず、踵を返した。
早くサトシを休ませたい。
今のシゲルはただそれだけしか頭になかった。
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