―8―
「━━ッ、サトシ!!」
サトシを捜して駆けていたシゲルたちは力なく座り込むサトシを見つけた。
ピカチュウたちに囲まれるサトシはどこか元気がないようにも感じた。
「サトシ、大丈夫か?」
心配そうな表情を浮かべながらサトシに声をかけるタケシだったが、サトシは俯いたままで反応を返してくることはなかった。
明らかにいつもと様子が違うサトシにタケシもヒカリもシゲルの考えは間違っていなかったのだと確信した。
「ピカピカー!
ピッカチュウ!」
「ハンガーッ!ハガーッ!」
「ウッキャー!キャキャー!」
「ムクホー!」
「ブイブイ!」
「グライオー!」
そして、サトシと一緒にいたピカチュウたちがシゲルたちに何かを伝えようとそれぞれが必死に言葉を発していた。
「…?
ピカチュウたちは何かを伝えようとしているみたい…。
なにかしら?」
ピカチュウたちが何かを伝えようと必死になっていることは分かったが、何を訴えようとしているのかはまるで分からなかった。
そして…、そんな時だった。
「「なーっはっはっはっ!」」
聞き覚えのある笑い声が響き渡ったのは…。
それは言わずもがな、ロケット団のもので。
機械に乗り込み、サトシたちの前に姿を現した。
「こんな時に…!」
「またピカチュウを狙ってきたのか!」
「まだ君達はそんなことをしていたのかい?
……暇だね…。」
いつもと同じように姿を現したロケット団にタケシとヒカリはモンスターボールを手にロケット団をキッと睨んだ。
対するシゲルはまだピカチュウを狙ってサトシを付け回していたのか、と呆れている様子だったが…。
「今日はピカチュウを狙っているわけじゃないんだな、これが。」
「どういうこと!?」
「答える義理はないニャー!」
ピカチュウを狙っているわけじゃない、というロケット団にヒカリは眉を寄せながらその意味を問いかけた。
しかし、いくらロケット団といえどそれを教えてやるほどバカではなく…。
ただ1人…、ロケット団とシゲルたちの会話をぼんやりと聞いていたサトシはびくりと肩を震わせ、目を見開いた。
そんなサトシの変化はサトシ自身が俯いていたため、気付く者はいなかった。
「行くわよ!
コジロウ、ニャース!」
「落とし穴くん3号、発進!」
そう言うとロケット団が乗る機械は穴を掘り、その場から姿を消した。
「…どこ!?
どこから出てくるの!?
それに…ピカチュウを狙ってきたわけじゃないなら…誰を狙ってきたの…?」
「油断するな、ヒカリ。
ああ言いながら俺達の意識をピカチュウ以外に向けて…目的はピカチュウだという可能性もある。」
「…どっちにしろ、ロケット団があのまま引いたとは考えにくい。
警戒は怠らないように。
サトシ、君も…。
……サトシ?」
どこから来るか分からない以上、警戒する必要はあると言うシゲルにタケシもヒカリも頷いた。
そして、サトシに声をかけたシゲルはサトシの体が震えていることに気付き、眉を寄せた。
「サトシ…、一体どうし…」
━━ドンッ
サトシに声をかけながらサトシに近付こうとしたシゲルはその言葉を最後まで紡ぐことが出来なかった。
「うわあぁあっ!」
「きゃあぁあっ!」
「わああぁっ!!」
大きな音が響いたかと思えば、サトシたちのいた場所が突然崩れ…落下してしまった。
つまり…ロケット団がよく使う落とし穴に落ちたのだった。
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