―5―
「眠れてるかって…そんなの当たり前じゃない。
昨日だってポケモンセンターに泊まったし…。」
「シゲル…、いきなり何を言い出すんだ?」
「…………2人とも…、気付いていなかった、ってわけか…。
あるいはサトシが2人に心配をかけまいと元気に振る舞っていたか…。」
シゲルの発した言葉に2人は意味が分からないと眉を寄せた。
「…さっきみたいに怒りやすくなるのも、寝不足が原因だとは感じなかった?」
「…でも、サトシはすぐに熱くなるタイプじゃない。」
「…それなら僕が君達の旅にいきなり同行したいと言い出したことを不思議には思わなかったのかい?」
「…じゃあシゲルはサトシが眠れない理由を探るために旅に同行したいと言い出したと言うのか?」
「もしそうなら…サトシがなんで眠れていないのか知る必要があるわね。」
さすがにシゲルの考えていることが何かの間違いだとは思えなくなったのか、タケシもヒカリもその真意を確かめようと、シゲルに向かってそう言った。
***
「ハァ…。
ダメだな…俺…。」
その頃、ため息をつきながら歩くサトシはぽつりと呟いた。
「ピカピ…。」
「ピカチュウ、わかってるんだ。
シゲルの言いたいことは…。
すぐに熱くなって…勢いで突っ走るところがあることも、そのせいでピカチュウたちが傷ついていることも。
シンジみたいな戦い方を全部認めるわけじゃないけど…、シンジみたいに冷静に物事を判断出来るようにならないと…バトルでピカチュウたちが苦しい思いをすることにもなる…。」
「ウッキー!
ウッキャキャー!」
俯き、珍しく弱音を吐いたサトシにモウカザルが何かを否定するようにサトシに向かって声をあげた。
「ありがとう、モウカザル…。
俺をなぐさめようとしてくれてるんだろ?」
「ウッキャー!」
サトシの手を取り、サトシをジッと見上げるモウカザルにサトシはふっと微笑むと、その頭をそっと撫でた。
「……考えなきゃいけないこともあるんだ…。
どうしたらみんなが傷つかなくてすむか…答えを出さないと…。」
「その答えはただ1つ…。
我らの元に来る、それだけだ。」
目を閉じ、何かに悩むサトシにピカチュウたちは首を傾げてそれを見つめた。
そして、サトシの小さな呟きに答えたのは、サトシのポケモンたちではなく…、新たに現れた人物だった…。
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