ー6ー
あれから、サトシは体力が回復するまで休養をとった。
そして、アルセウスたちはサトシの幸せを願い、それぞれの場所へ帰っていった。
***
数日の間、休養をとっていたサトシは体力も戻り、旅を再開することになった。
旅を再開することになり、サトシの回復を待っていたシゲルたちもそれぞれの場所へ戻るために、そしてそれぞれの目的のために別れることになった。
「……みんな、本当にありがとう。
俺さ…、今回のことでよく分かったんだ。
どんなに力があっても、1人でやれることなんて限られてるんだってこと。
……俺は本当にいろんな人達やポケモンたちに助けられてきたんだってこと。」
仲間たちと別れる当日、サトシは空を見上げながらそう言った。
一番前にいるサトシの表情は誰にも見えない。
だが、サトシの声には力があってシゲルたちは、ホッとした。
「…サトシ。
夢を諦めないでくれて、ありがとう。」
サトシの背中を見つめながらシゲルは感謝の言葉をかけた。
シゲルの言葉にサトシは苦笑した。
「感謝しないといけないのは、俺の方だろ?
だって…、みんなの言葉があったから夢を諦めないでいられた。」
「もし、お前が夢を諦めたら、俺はお前を許さなかった。
…シンオウリーグで戦うと言っておきながら、戦わずに逃げ出すような奴がライバルなんて冗談じゃない。
俺は必ず、シンオウリーグでお前に勝つ。」
「俺だって今度こそ、絶対にシンジに勝つ!!
俺にできることは、みんなの力を信じて一緒に戦うことだけだから。」
そう言ってサトシはゆっくり振り返った。
『振り返ればお前には心強い仲間がいることを忘れるな。』
ホウオウが言っていた通り、振り返れば仲間がいてくれた。
独りじゃない。
ただそれだけのことが、こんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。
まだまだきっと、この世界には知らないことがたくさんある。
知らないことも、知らないポケモンも、知らない地も。
知らないたくさんのことを知って、そして仲間たちと一緒に強くなりたい。
サトシは強くそう思った。
「サトシくん、そしてシンジくん。
私は2人の戦いを楽しみにしているわ。
そして、サトシくんが“御子”であることは誰にも言わないわ。
あなたの夢のためにも、その方がいいと思うから。」
「確かにその通りだ。
それと、ギンガ団が持っていた文献は国際警察である私達が責任を持って管理しよう。
もう…、悪しき者たちの目に触れないようにしなければならない。」
「シロナさん、ハンサムさん。
本当に…ありがとうございました。」
シロナとハンサムの方へ顔を向けたサトシは深々と頭をさげた。
そんなサトシにシロナとハンサムは「頑張って」と激励の言葉をかけ、肩をポンと優しく叩いたあと、その場を立ち去った。
「…必ず、シンオウリーグに来い。
お前と次に戦う場所はそこ以外にない。」
シロナとハンサムが立ち去ったあと、シンジはサトシにそう言うと、振り返ることなく歩いていった。
「シンジ!
必ず…シンオウリーグでバトルしようぜ!!」
サトシはシンジの背中に向かって手を振りながらそう声をかけた。
シンジは特に反応することはなかったが、自分の声はシンジに届いていることは分かっていた。
だから、サトシもそれ以上は何も言わなかった。
「本当に、どんどん大人になっていくわね。」
「…!
ママ。」
「サトシ、あなたが信じる夢を私は自分にできる精一杯で応援するわ。
でもあなたの帰る場所はマサラタウンにあることを忘れないで。
私はサトシがいつ帰ってきても迎えられるように待っているから。
あなたが帰る場所で待っているから。」
「ママ…。
うん…、ありがとう…。
でも、ママはどうやって帰るの?」
「サトシ、ママさんは僕が責任を持ってマサラタウンまで送るよ。
だから、君はシンオウリーグ…頑張って。」
「シゲル…。」
「目指す場所は違っても僕は君を誰よりも一番に応援しているよ。」
「あら?
一番に応援しているのは私よ?」
「いくらママさんでも、これは譲れませんよ?」
「シゲルくんも、けっこう言うわね。」
ふふ、と笑うハナコにシゲルも笑った。
「タケシくん、ヒカリちゃん。
サトシのことを頼むわね。」
「はい!!」
「任せてください!」
最後にハナコはサトシをギュッと抱き締め、シゲルと共に立ち去っていった。
「…俺、絶対にポケモンマスターになる。
こんなにも、みんなが応援してくれてるんだ。
諦めるわけにはいかない。」
「そのためにも、バッジを全部集めないとな。」
「特訓する時はいつでも言ってね!!」
「タケシ、ヒカリ。
本当にありがとう。」
「さあ、サトシ!
俺たちも旅を再開しよう!」
「行きましょう、サトシ!」
「ピカ、ピッカチュウ!!」
「ポチャマー!!」
「…ああ!!」
諦めかけた夢を叶えるためにサトシは再び歩みを進めた。
しっかりと地に足を踏みしめながらサトシはタケシとヒカリと共に歩き出した。
独りじゃない。
みんながいる。
みんなと一緒にいる。
サトシは何があっても、逃げずに全力で立ち向かうことを心の中で強く誓った。
それが、背中を押してくれた人たち返せることだと思うから。
END
※※※
ようやく完結しました!
これまで応援してくださった皆様に深くお礼を申し上げます。
ああーっ!
最後にまとめるのが難しーっっ!!
人と関わりをもつことで、傷つくことってたくさんあると思います。
でも、人と関わりをもつことで、救われることもあります。
私も何回もへこんだり、傷ついたりしたことがありました。
だけど、その度に友達に救われてきました。
たくさん、支えられてきました。
そういう時にいつも思うんです。
独りじゃないって、こんなにも有り難くて、泣きたくなるくらいに嬉しいことなんだって。
この話を通してそれが伝われば幸いでございます。
なんかムダに語ってすいません…。
閲覧いただき、本当にありがとうございました!!
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