ー5ー
『サトシ。
お前の目指すものは決して楽なものではない。
だが、お前なら必ず夢を叶えると信じている。
お前は誰よりも優しく、そしてひたむきだ。
私はお前のそんな姿に救われた。
お前に出会わなければ私もホウオウと同じように人間を拒絶していただろう。
人間と関わりをもつことを避け、人間を滅ぼそうとさえ考えていた。
サトシ、ありがとう。
お前と出会えて良かった。
そしてお前の夢が叶う時がくる時を、信じ…見守っている。』
「アルセウス…。」
夢をあきらめたくない、と言ったサトシにアルセウスは感謝と激励の言葉を贈った。
サトシが夢を叶えたいのか、神域に留まりたいかなど問いかける前に分かっていた。
だが、夢を叶えたいという気持ちがあっても、サトシが他人を犠牲にしてまで、自分の夢を優先するかどうかなんて考えるまでもない。
サトシは優しい子だから。
大切な人が傷付くくらいならどんなに叶えたい夢だったとしても、諦めることを選ぶだろうから。
それだけは絶対に避けたかった。
だから、サトシに仲間を信じられるなら夢を諦めるな、と言った。
この場にいる誰もがサトシを大切に思っているからこそ、サトシの笑顔が曇ってしまうようなことは避けなければならない。
『サトシ、御子として生まれた以上、その事実は変えることはできない。
だが、お前に御子としての運命を乗り越える力があれば、独りでなければ、乗り越えられる。
我らはサトシ、お前を守るためならば、いつでも力を貸す。
その証拠にお前が呼ばなくとも、ラティアスは迷いなく駆けつけた。
お前が辿ってきた旅路は決して無駄にはならない。
自分を、そして仲間たちを信じ、前へ進め。
振り返ればお前には心強い仲間がいることを忘れるな。』
「ホウオウ…。」
『……私も人間は醜い生き物だと思っていた。
人間の勝手で生み出され、存在価値を見出だせなかった私は復讐することでしか存在価値は得られないと思っていた。
…だが、そうではないと知った。
それは、サトシ。
お前がいたからだ。』
「ミュウツー…。」
ホウオウとミュウツーの言葉にサトシは、ほろりと涙を流した。
みんなが背中を押してくれている。
それがサトシにとっては何よりも有り難かった。
そして、ホウオウは静かに羽を広げた。
ホウオウが羽を広げた瞬間、その体は七色に輝き…、辺りはホウオウの羽が舞った。
その羽は空中で燃え、灰と化し…意識を失っていた他のポケモンたちの体に降り注いだ。
ホウオウの灰はポケモンたちを癒やした。
「聖なる灰…。」
それを見たサトシはぽつりとそう呟いた。
『サトシ、お前は世界中に存在する誰よりも愛しい人間だ。
自分の身より、私たちの身を守ろうとしたその心は、私たちの心に灯をともしてくれた。
その輝きが消えぬことを強く願う。』
「ありがとう…。
ありがとう…アルセウス…。
みんなも…、本当にありがとう…。」
サトシを後押しするように意識を取り戻した他の伝説のポケモンたちも深く頷いた。
そしてサトシは強く感謝した。
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