―7―
夢から覚めたサトシの意識はしばらくの間、夢と現実の狭間にいた。
「……夢…だったのか?
…いや、あれは…夢なんかじゃ…。」
「ピカピ…。」
「あ…、おはようピカチュウ。
……………それと……心配かけてごめん。」
夢から目覚め、しばらくボーッとしていたサトシは、すぐ隣にいるピカチュウが心配そうに自分を見上げていることに気付き、その頭を優しく撫でながら謝罪の言葉を呟いた。
対するピカチュウは起きて早々、謝罪され首を傾げた。
そんなピカチュウに苦笑しつつ、サトシはピカチュウに眠気覚ましに今から一緒に散歩に行かないか?と誘った。
ピカチュウがサトシの誘いを断るはずもなく、ピカチュウはこくりと頷くとピョンとベッドから飛び降り、扉に向かって足を進めた。
タケシとヒカリは未だに眠ったまま。
サトシとピカチュウは2人を起こさないようにそっと部屋を出た。
***
「ピカチュウ、お前は…わかってるんだろ?」
「ピ?」
「…最近、俺が眠れていないこと。」
「…!」
いつもの定位置…サトシの肩に掴まり、ただサトシの言葉に耳を傾けていたピカチュウは図星をついた言葉に驚いたような表情を浮かべながら、サトシの横顔を見つめた。
そんなピカチュウを横目にサトシは静かに口を開いた。
「…今はまだ…、俺も心の整理がつかないんだ。
どうしたらいいのかも、
どうしたいのかも…まだ分からない。
だから…まだ言えないけど…、俺なりに答えを探してみるから…、もう少しタケシたちには黙っててくれないか?」
「ピカピ…。」
サトシの口調はとても穏やかで、ピカチュウは悲しそうにサトシを見つめた。
サトシが最近、何に悩んでいるのかも分からないピカチュウはサトシの言った言葉の意味の全てを理解出来なかったが、昨日までのサトシと違うことだけは感じられた。
「ピカピカ、ピッカチュウ!」
「ありがとう。」
サトシの言葉に頷いたピカチュウにサトシも微笑みを浮かべながらお礼を言った。
「…サトシ?」
お互いに何かがふっ切れたように笑いあうサトシとピカチュウ。
そのすぐ後だった。
サトシの名を呼ぶ声が聞こえたのは…━━。
[
*←前
] | [
次→#
]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -