02





「俺はバチカルには帰らねぇ…。」



不機嫌そうな表情を変えることなく、アッシュはルークたちにそう言った。



「…え!?
何でだよ!アッシュ!」



それに1番食ってかかったのはルークだった。



「今更…帰って俺にどうしろというんだ。
俺は全てを捨てた。
…だから帰らねぇ。」
「だったら!
…だったら俺も帰らないからな!」



ルークの言葉を聞いたアッシュはルークを睨みながら言い放った。



「貴様…バカにしてるのか!?
ふざけるなッ!」
「ふざけてねぇよ!
元々は…お前の居場所だろ!?
俺はアッシュの居場所にただ居ただけだ!
だったら…あそこに帰るべきなのはアッシュの方だろ!?
父上をサポートするのも絶対アッシュの方が上に決まってる!」
「レプリカ…貴様…!」



このままではヒートアップしていくだけの2人のケンカを止めたのはジェイドだった。



「2人とも落ち着きなさい。
貴方達がこうして戻って来たのは我々の前でケンカをするためですか?」
「それは…。」
「チッ…!」



ジェイドの言葉にルークは俯き、アッシュは顔をそらして舌打ちをした。



「それにアッシュ、貴方たちの帰りを待っていたのは私達だけではありません。」
「…何…?」



アッシュはジェイドの言葉に訝しげな表情を浮かべた。



「…奥様は…まだお前達が帰って来ると信じている。
体調をずっと崩しているがな…。」



ジェイドの言葉を付け足すようにガイがアッシュに言った。



「アッシュは帰らないとダダをこね、そのまま消えたということを知れば、さぞかしショックに感じるでしょうねぇ。
もしかしたら…寝たきりになってしまうかもしれませんね♪
誰かさんが意地をはったばかりに…あぁ…可哀相に…。」
「ぐ…!」



ジェイドの軽く脅迫めいた言葉にアッシュは言葉につまった。



「チッ…どこまでも性格の悪い眼鏡だ!」
「ありがとうございます♪」
「褒めてねぇッ!」



アッシュの嫌味にもジェイドはとてもいい笑顔を浮かべて軽く返した。
それにアッシュはイライラする気持ちを隠せずにいた。



「…アッシュ…。
戻って来てはくれませんの?」



ナタリアの今にも泣きそうな表情にアッシュはため息をつきながら言った。



「…分かった…。
帰ればいいんだろう!
レプリカ…!貴様も帰らないとタダではすまさんぞ!」



アッシュはヤケだと言わんばかりに叫んだ。

アッシュの言葉にジェイドはニヤリと笑った。
まんまとジェイドの策略にのせられたことにアッシュは気付いていない。



「アッシュ…良かった…。
俺…お前が帰らないって聞いて…すっげぇ嫌だったんだ!
一緒にこれからも頑張っていこうな!
…でも…本当に一緒に帰ってもいいのか?」



ルークは不安そうな顔でアッシュに問い掛けた。



「くどい!
俺が帰るように言ってるんだ!
いつまでもうだうだ言ってるんじゃねぇッ!
……俺と同じ顔でいつまでもガキみたいな事言ってんじゃねぇッ!」
「…うん。」



ルークは嬉しそうにはにかんだ笑顔を浮かべながら頷いた。



「ガキみたいな事って…ルークって実はこの中じゃ1番年下だよね〜。」
「そうね。
見た目は…って…、アッシュは最後に会った時より大人になったカンジだけどルークは…。」
「そうだな…。
あれじゃあ、あの時の…17歳のままだな。」



ティアたちはルークとアッシュの違いにようやく気付いたのか驚いたように口を開いた。

さっきまではルークとアッシュが帰って来たことに嬉しい気持ちが先走って気付かなかったが、少し背の伸びたアッシュに対してルークは服装も背も17歳の時のまま。


不思議そうな表情を浮かべることしか出来ずにいたのだった…。



「ルーク、お前は見たところ…あの時の…17歳のままに見えるんだが…。」
「そうね…アッシュとルークは完全同位体のはずよね?」
「そうだよ〜。
何でルークは小さいままなの〜?」
「小さい言うなッ!」



ガイたちの問い掛けに対してルークが噛み付いたのはアニスの“小さい”という言葉だった。



「フ…。」



その言葉を聞いていたアッシュは鼻で笑った。
もちろん、それに気付いたルークはアッシュの方に向き直り、抗議した。



「あ!
アッシュ…!今…笑っただろ!?
鼻で笑っただろ!」
「笑ってねぇ。」
「笑った!ヒデェよ!」



アッシュとルークのやり取りを見ていたナタリアが嬉しそうに笑いながらジェイドたちに言った。



「アッシュ…以前よりルークに対して優しくなりましたわね。」



ナタリアの言葉を聞いたティアも頷いた。



「そうね。
以前の2人からは考えられないことだわ。
こうやって見ているとまるで兄弟みたいだもの。」
「アッシュはヴァンとの最終決戦の時にルークを認めてルークに力を、後を託した…これはルークを認めたからこその行動なんだろう。」
「恐らく、自覚はしていないでしょうがね♪」

「何だよ〜!
俺をバカにしやがって!」
「フン…バカをバカにして何が悪い?」
「俺はバカじゃねぇ!」



アッシュとルークの会話を聞いていたジェイドはこのままでは終わることはないと判断し、2人の前まで歩み寄ると口を開いた。



「はい…兄弟喧嘩はこの辺にして聞きたいことがあります。」
「兄弟だと!?ふざけるな!」
「アッシュと…兄弟…?
そっか…兄弟か…。
俺…、兄貴がいい!」
「何だと!?
どうしたらお前が兄貴になるんだ!
どう考えても俺の方が上だろうが!」
「はいはい♪
どちらが兄かは後でゆっくり話し合ってください♪♪
ルーク…貴方に1つ聞きたいことがあります。」



ジェイドの表情が真剣になったことでアッシュもルークもケンカをやめてジェイドに向き直った。



「ルーク、貴方はどうしてあの戦いの後から成長した様子が見られないのですか?」



ジェイドの問い掛けに対して、アッシュとルークはお互い目を合わせた後、静かに頷くと口を開いた。

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