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「シュナと話をして…私達はあの子がすごく優しくて温かい子だってことをようやく知ることができたわ。
それ以来、私たちはシュナを4人目の子供として愛していこうと決めたのよ。」
「1度に自分の子供を3人も失ってからは、俺とシェリーの間に溝が出来ていた…。

それが身代わりとして引き取った自分の子供のレプリカが身代わりにもならないことで俺達の仲は更に険悪になっていっていた…。

シュナはそんな俺とシェリーの夫婦仲まで良くしてくれた。
俺とシェリーにとって、シュナはもうレプリカだとかそんなことを気にすることもないくらいに大切な家族になっていたんだ。」
「シュナは…いつもあなたたちを気にしていたわ。

“2人は元気にやってるのかな?”
“幸せに暮らしているのかな?”

いつも、そう言って2人の身を心配していたわ。」
「俺達もシュリルとシュークにも悪いことをしてしまったと後悔していたから、いつか謝りたいとずっと思っていた。」
「だったら…どうして…シュナを見殺しにした…?」
「あなたたちが言ってることは矛盾してるじゃないッ!

シュナを本当に自分の子供として愛していたら、見殺しになんか出来ないはずよ!」
「私は…あの子を見殺しになんかしてないわ!


どうして…あんなに優しい子を見殺しに出来るって言うの?!
…でも、あの時の私の判断は間違っていたんだって…ずっと後悔してるわ…。
私が…あの子を殺したといっても過言じゃないわ…。
でも、これだけは信じてほしいの。
私はシュナをわずらわしくなんて思っていないってこと…。
私もマルスも、シュナを1人の人間として大切に想っていたこと…。
あの子から大切なものをたくさんもらって感謝していること…。


それは信じてほしいのよ。」
「…正直…シェリーの口からシュナの最期を話すのは…相当辛いだろう。

だが、シェリーはそれでも君達2人にシュナのことを…話したいとジェイドさんについていったってことは覚えておいてほしい。」


シェリーとマルスの言葉にシュリルとシュークは目線をそらした。


「…じゃあ…、話してくれよ…。」
「私達の知らない何があるというの?」



シェリーとマルスの真剣に向き合おうとする態度にシュリルとシュークも強く言えずにいた。




話の続きを聞かせてほしいと言うことしか出来ずにいた。





「…シュナと…向き合うことが出来た私達はシュナに紹介したい人たちがいたの。

私は…その人たちをシュナに会ってもらうために…ある日、シュナをある場所へ誘ったわ。」




そう言葉を発したシェリーの肩は震えていた。
それを視界の隅にとらえたシュリルとシュークが顔をあげると、シェリーは声を押し殺して泣いていた。


憎んでいたはずのシェリーのその姿にシュリルとシュークは自分の胸が強く締め付けられるような感覚に襲われた。




「シェリー…、辛いなら俺が代わりに…。」
「ダメよ…。
私が話さなきゃ…私が話さなきゃいけないのよ。

…逃げたらいけないの…。
逃げずに受け止めて…前を見て歩いていかなきゃいけないんだってことを、あの子から…シュナから教えてもらったことなんだもの…。」



とめどなく流れる涙を拭いながら、シェリーはそう言った。





「今から話す事は…あなたたちにとっても辛いことだと思うの…。


でも…目を背けずに聞いてほしいの。
他でもない…シュナが望んだことだから…。」



シェリーの言葉にシュリルとシュークは小さく頷いた。


2人にとって、シュナの最期など忘れてしまいたい出来事でもある。
でも、シュリルもシュークも本当は分かっている。

シュナの死から目を背けて逃げ続けたところで何も変わらない事。

何も得られるものはない事。







2人は分かっていた。


シェリーの態度を見るだけで、シェリーもマルスもシュナを本当に愛していたことを。




向き合うことを恐れてはいけないのだから…━━。











「私は…ある日、シュナに紹介したい人がいるって言ったわ。」


















***


『ねぇ…シュナ、貴女に紹介したい人たちがいるのよ。

会ってくれないかしら?』
『私に…ですか?』
『そう。

もう貴女は私とマルスの大切な家族よ。
だから、貴女に紹介したいのよ。』
『シェリーさん…。

私…その人たちに嫌われないかな…?』
『大丈夫よ。

貴女は本当に優しくて温かい子だもの。
きっと…喜ぶわ。』
『シェリーさんがそこまで言ってくれるなら、私…会ってみます。』
『ありがとう。

じゃあ…ついてきてもらえる?』
『はい!

ところで、誰に会うんですか?』
『ふふっ…それは会ってからのお楽しみよ。』
『え〜…、そんなこと言われたらすごく気になっちゃいますよ!』


『おや、シェリーにシュナちゃんじゃないか!

どっかへ買い物かい?』
『…シュナをあそこに連れて行こうと思ってるんです。』
『!!

…そうか…。
けじめをつけるんだね?』
『はい。』
『……?』



近所に住むおじさんとシェリーの会話を聞いていたシュナは不思議そうな表情を浮かべて首を傾げていた。


『…シェリーさん…けじめって何ですか…?』
『…貴女のおかげで私は前を見て歩くことが出来たわ。


それは貴女が諦めずに私達にぶつかり続けてくれたから…。
貴女を4人目の子供として接していきたいから…だから私はけじめをつけるためにも、会わせたかったの。




この子たちに…。』










そう言いながらシェリーはある場所の前で立ち止まった。






『ここって…。』
『私達の3人の子供が眠っている…墓場よ。』
『…!!
シェリーさん…。』
『ずっと…お墓参りに来れなかった…。

だってそうでしょ?
ここに来てしまったら私はあの子たちが死んでしまったことを認めることになる…。

それが嫌で…ずっと逃げ続けていたの。
更に私は…現実を見ようともしないで…自分の子供のレプリカを身代わりにしようとした…。

最低よね…。
あなたたちは私の子供の命を奪って生まれて来たんだから代わりになるのは当たり前だって…勝手な感情を押しつけて、苦しめて…。』
『シェリーさん、そんなこと…!』
『あなたたちが望んで私達の子供の命を奪ったわけでもないのに…。

それに気付くのにこんなにも時間がかかってしまったけど…、シュナ…、この子たちのお墓に来ることが出来たのも貴女のまっすぐな気持ちのおかげよ。

…この子たちの前で言わせてほしいの。

貴女は私とマルスの大切な娘だって。』
『私…レプリカですよ…?』
『そんなことどうでもいいわ。

私とマルスは貴女を本当の娘だって思ってる。
これだけで十分よ。


…本当は…この想いをシュリルとシュークにも聞いてもらいたかったけど…。』
『シェリ…さ…ッ!

…ふッ…ぅ…っく…私…レプリカだけど…2人の子供でも…いいんですか…?』
『シュナが嫌じゃなかったら、私達の子供でいてほしいの。



シュナ、大好きよ。
愛してるわ。』
『ふッ…わぁあぁぁあぁん…ッ!』



シュナはシェリーの腕の中で泣きじゃくった。

心のどこかで、レプリカである自分を認めてくれてるのか不安だったシュナはシェリーの言葉の全てが嬉しかった。

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