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「それが本当なら、シュリルたちを認めてくれてたってことでしょ?」
「確かにな…。シュナって子はそれが嬉しかったんだろう?
多かれ少なかれ、シュリルもシュークも同じ気持ちだったんじゃないのか?」
シュリルとシュークの話を聞いていたアニスは不思議そうな表情で、そう問い掛けた。
次いでガイも、オリジナルを憎むようになった理由が分からないと首を傾げた。
「あいつらは…私達の…何より、シュナの想いを踏みにじったのよ!」
「俺達3人の中でシュナだけは、言ってたよ。
“今まで、自分達を理解してくれる人には会えずに来たけど、この先の未来できっと分かってくれる人が現れるって私は信じてる。
諦めなければ明るい未来は待ってると思うから”
……オリジナルたちにどんなに蔑まれ、罵られようともいつも自分に言い聞かせるように…俺達に言ってたんだ。」
「…それなのに…それなのにッ!」
シュリルとシュークは怒りに拳を強く握り締めて、そう言った。
握り締めた拳からは血が滴りおちるほどに。
「…あなたたちは、その夫婦についていったんですね?」
「…そうさ…。
シュナが強く望んだことだったし…俺達も嬉しかったから…」
「…私達にとって…誰かが認めてくれること…居場所があるということ…それはずっと…ずっと夢見て来たことだったのよ。
あなたたちだって、認めてくれる人がいるってこと…嬉しいと思うでしょ?
それがずっと望んで来た夢ならすがりたくなるでしょ?
私達もシュナもあの夫婦の言葉を信じたのよ…。」
「今にして思えばオリジナルなんか信じたのがバカだったよ。
オリジナルなんて生きる価値もない、最低最悪の生き物だからな!」
「…続きを…聞いてもいいか?」
強い憎しみと怒りをぶつけるシュリルとシュークにアッシュは、話の続きを聞きたいと言った。
シュリルとシュークは自分を落ち着かせるためにふぅ、と息をはいた。
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『違うでしょ!?
シュリルは生の魚なんて嫌いなのよ!
シューク!あなたは大人しい子なの!
シュナは、動物なんて嫌いなの!』
マルスとシェリーの家に住み始めたシュリルたちは、今は亡き自分達のオリジナルの代わりをするように無理強いされていた。
それは3人にとって苦痛でしかなかった。
自分達はオリジナルとは全く別の存在なのに、性格や好きなモノ、嫌いなモノ…オリジナルのことを全て覚えろというのだ。
オリジナルのシュリルは生魚は嫌いだったようだが、レプリカであるシュリルは刺身が大好物だった。
オリジナルのシュークは、どちらかというと大人しい性格だったらしいが、レプリカであるシュークは全く逆のやんちゃな性格だった。
オリジナルのシュナは、動物が苦手だったらしいが、レプリカのシュナは動物が大好きだった。
正反対の3人にシェリーは苛立ちを募らせていった。
レプリカである3人にオリジナルの代わりをさせようと思っていたのに、代わりにもならない3人が気に食わなかった。
『シェリー!!
お前…あの時に言ったな?
あのレプリカどもをあの子たちの代わりとして育ててみせると。
性格も何もかも、あの子たちと全く同じにしてみせると。
それがなんだ!?代わりにもならないじゃないか!』
『私だって、あそこまで思い通りにならないなんて思わなかったのよッ!
仕方ないでしょ!?レプリカはオリジナルより劣ってるらしいんだから!』
思い通りにならないことに苛立ったマルスとシェリーは、度々ケンカをしていた。
それが、シェリーの苛立ちを強くさせる原因の1つにもなっていた。
代わりにしたいのに代わりにもならない劣化品だと、シェリーはシュリルたちを蔑んだ目で見るようになった。
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