01





「そう、だったんだ…。」
「辛かったな…。」



ルークは自分の悩みを2人に包み隠さず打ち明けた。
何となく、ガイと雰囲気が似ていることも手伝ってルークは出会ったばかりの2人に何のためらいもなく打ち明けた。



「…俺が…何も出来ないのが悪いんだけどさ…。
でも、全然うまくいかなくて…。」
「ルークは悪くないわ。
貴方は自分に出来る精一杯で頑張っているじゃない。」
「ただ結果が出てないだけだ。
努力するルークをスゲェって、俺は思うよ。」
「シュリル…、シューク…。
ありがとう…。
何か…久し振りにまともに話が出来たから…少し気分が晴れたよ。
本当にありがとうな!」
「ううん。
いいのよ。これくらい…。」
「困った時はお互い様だろ?」



ルークは2人がかけてくれる温かい言葉に冷えきっていた心が温かくなるように感じた。



「…あ!!
ヤバい!そろそろ戻らないと…!」
「そっか!
じゃあ気をつけて帰れよ?」
「話が出来て良かったわ。」
「うん…。
ごめんな。俺…泣き言ばっかで…。
あの…さ…。
また…話を聞いてくれないか?
…図々しい頼みだとは思うんだけど…。」



帰ろうとするルークはもごもごと呟くように2人にお願いをした。



「いつでも聞くわ!
遠慮なく来て?」
「俺達、けっこうここにいることが多いから、ここに来てくれればまた会えるよ。」



2人の言葉を聞いたルークは嬉しそうな笑顔を浮かべると『ありがとう。』と言って踵を返して屋敷へと足を進めた。

ルークの背中を見ながら2人は言葉を発した。



「あれがレプリカルークで間違いなさそうね。」
「あぁ…。
なぁ…ルーク?
そこはお前の居場所じゃないんだぜ?
それに気付いた時は迎えに行くから楽しみにしてろよ?」



2人はクスクス笑いながらルークの背中をジッと見つめていた。

ルークの運命を変える出会いがあったことにアッシュもクリムゾンもシュザンヌも、そしてルークの仲間もルーク自身も気付いていなかった。

そして…。
ルークの悩みに気付かずにいたことも少なからず関わっていることに気付いていない…。

気付いているのは…、シュリルとシュークと…マスターと呼ばれている者だけだった…━。




***



「…どこに行っていた?」


屋敷に帰るなり、ルークは仏頂面で立つアッシュにそう問い掛けられた。



「別に…。」



そっけない態度のルークにアッシュは苛立ちを感じた。



「どこに行っていたと聞いている!」
「Σ……!!
…ちょっと…、気晴らしに城下町に行ってただけだよ…。

(シュリルとシュークのことを話したら…俺の悩みまで聞かれることになる…。
隠しておかなきゃ…!!)」
「お前…ッ!
俺がお前の仕事を片付けている間に遊びに行っていたのか!?」
「ちょっと気晴らしに行っただけだろ!
気晴らしも許されないんじゃ息がつまるだけだ!」
「……!!
チッ…勝手にしろ!このクズが!!
ちょうどグランコクマに向かうところだ。
クズの相手をしなくて清々する!!」
「…あ…!!
アッ…シュ…。」



アッシュは苛ついた様子でルークに背を向けて立ち去った。
この時にアッシュがルークの表情を見ていたら、未来は変わったのかもしれない…。

ルークは悲しそうに瞳にはうっすら涙をにじませていた。



「ごめん…アッシュ…。」



ルークは1人取り残された部屋で俯いたまま呟くように言葉を発した。
その声の主は今にも消えそうに悲しそうな表情を浮かべていた。




***



「おい、聞いたか…?」
「何をだ?」
「アッシュ様とルーク様のことだよ!」



部屋に戻ろうとしたルークの耳にまた白光騎士団の声が聞こえ、ルークは慌てて物陰に隠れた。



(この感じ…まただ…。)



ルークは白光騎士団が何を言うのか何となく察していた。
今まで幾度となく陰口を聞いていたルークは悲しいことにそういうことに敏感になっていた。



「心配して声を掛けたアッシュ様の気も知らずにルーク様は城下町に遊びに行ってたって言ったらしいぞ?」
「は?
確か…アッシュ様はルーク様の仕事を押しつけられてなかったか?」
「あげくに、気晴らしだとか言ってたんだ。
いい気なモンだよな〜…。
レプリカのくせに」
「本当だよな〜レプリカの分際でいいご身分だよ。」

『レプリカのくせに』
『レプリカの分際で』



「(レプリカレプリカレプリカ…!!
もううんざりだ!
どうして…っ!
俺がレプリカだってことがそんなにいけないのか!?
俺…どうしたらいいんだよ…!)」



ルークはその場から逃げるように立ち去った。
その瞳からは涙が止まることなく流れ続けていた。



━━ドンッ!



「きゃっ!」
「…あ…!」



走っていたルークにメイドがぶつかり、メイドはそのまま尻餅をつくように倒れた。



「ご、ごめん…!
大丈夫か、マリア…?
本当にごめん…。」
「いえ、私の方こそ…。
…………?
…ルーク様…、私の名前を覚えていてくださっていたのですか?」
「…え?
あ…うん。
アーリアと今日は一緒じゃないんだな…。」
「ルーク様…。
そんなことまで…。」
「あ…ごめん!
そんなことまで知ってて気持ち悪いよな!
あ、本当にぶつかってごめんな!」



ルークはマリアというメイドからまた逃げるように駆け出して行った。



「本当に…こんないい生活が出来るならレプリカで生まれたかったよな〜!!」
「ははッ!!
違いねぇや!」



マリアがルークが走ってきた方に歩いていると、白光騎士団の話し声が聞こえた。



「貴方たち…何やってるの!
喋ってる暇があったら持ち場に戻りなさい!
旦那様に貴方たちのことを報告しますよ!」



仕事をするでもなく、ただ立ち話をする白光騎士団にマリアは叱った。

それにバツの悪そうな表情を浮かべ、それぞれ持ち場に戻っていった。

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