汚された言葉





「わあああぁーーーっっ!!」



翌朝、アスベルたちはルークの悲鳴を聞いて目を覚ました。



「ルーク!!どうした!?」
「何かあったんですか!?」



ルークの悲鳴を聞いて慌ててルークの部屋へと足を踏み入れたアスベルたち。
侵入者かと辺りを警戒して見回すが、怪しい気配はない。
念のため、警戒しながらアスベルはルークに声をかけた。



「ルーク、何かあった…のか?」
「ア、アスベル…!!
な、な、な、なんでソフィとパスカルが一緒に寝てるんだよ!?
ていうか、2人とも女だろ!?
男と女が同じ部屋で一晩を明かしたら…ヤバいことになるんだろ!?
教官が、言ってたけど…いやーんとか、あはーんとかってよく分からないけど…ヤバいことが起こるんだろ!?
なんで2人はそれが分かってて一緒に寝てるんだよ!?」
「…………………教官?」
「…間違ったことは言ってない。」
「ルークに余計なこと、言わないでください!!
よくも悪くもルークは信じやすいんですから!」



ジト目でマリクを見るアスベルとヒューバート。
その横でルークは、顔を真っ青にしながら「どんなヤバいことが起きるんだ…?もしかしてもう起きたあとなのか…!?」と慌てている。



「大丈夫よ、ルーク。」
「でも、シェリア…!おれ…!!」
「ルークなら、ヤバいことにならないわ。
だから大丈夫。」
「本当か…?」



不安そうにするルークをシェリアが落ち着かせる中、ソフィとパスカルは気持ち良さそうに爆睡していた。



「さあ、ルーク。
朝ごはん、食べに行きましょう?」
「う、うん…。」
「シェリア、俺たちもソフィとパスカルを起こしたら行くよ。」
「えぇ、わかったわ。」



ちゃっかりルークの手を握りながらシェリアは食堂へと誘った。
だが、それを後に後悔することになる…。

━━━…もう少し時間が経ってからにすれば良かった、と。




***



「ルーク!!」

「………っ!?」



朝食をとりに宿屋の食堂に向かったルークとシェリアを待っていたのは軽蔑のまなざしを向ける複数の視線だった。



「アクゼリュスを崩壊させておいて、よくもこんなところで呑気に過ごせるわね!!」
「自分のしたことから目をそらすなんてさいってー。」



食堂にいたのは、ユリアシティで放置してきたはずの、かつてのルークの同行者だった。
それに気付いたシェリアはすぐさまルークを庇うように自分の背後に下がらせた。
そして、気付いてしまった。
ルークの体が可哀想なくらいに震えていることに。



「自分の罪から目を背けるなんて、これだからわがままなお坊っちゃまは…。」
「罪…?
ルークは罪に問われるようなことはしていないわ。」
「何をいっていますの?
そこにいるレプリカが、アクゼリュスを崩壊させたことこそ罪ですわ!」
「ルークはヴァンを引き付けるために自ら危険をおかして、アクゼリュスの住民を守ったのよ。
それの何が罪なのかしら?」
「兄さんの言葉を鵜呑みにして、超振動を使ったのよ!?
住民を守れた、というのは結果論でしかないわ!」
「ルークは私たちのことを信じてくれたわ。
鵜呑みにしていたわけじゃないわ。
必死にヴァンに逆らって…頑張っていたのに、あなたたちは罵倒することしかできないの?」
「そんなの、ルークが自分の都合のいいように言っているに決まってるじゃん!」
「…あなたたちはルークの何なの?」
「仲間よ。」



ルークの何なのかと問いかけた時、ティアは意味が分からないと言わんばかりに仲間だと即答した。
その矛盾した返答にシェリアは深いため息をついた。



「そのため息はなに?」
「…仲間という言葉の意味をずいぶん履き違えているのね?」
「…なんですって?」
「仲間なら、どうしてルークを罵倒することしかできないのかしら?」
「それは…ルークが、自分の罪を認めないから…!」
「…そう。
仮にルークに罪があったとして…どうしてあなたたちはその罪をルーク1人に背負わせるのかしら?」
「はあ?
なんで、お坊っちゃまの罪を一緒に背負わなきゃいけないわけ?」
「…そんな言葉がでてくること自体、お前たちとルークは仲間ではない証拠だ。」
「……教官!!」



アニスの言葉に応えたのはシェリアでもルークでもない、マリクだった。
マリクの登場にシェリアは驚きの声をあげたが、マリクは無言で頷いたあと口を開いた。



「仲間だと即答するなら何故、ルークと共にその苦しみを背負うと言えない?」
「冗談はやめて。
ルークの犯した罪はルークが、背負うべきだわ。
私たちには関係のないことよ。」
「仲間だと即答した人間のセリフとは思えないな…。
それは仲間ではない。自分達には関係ないと言うなら、ルークの仲間だと言うな。
仲間という言葉を汚す気か?」
「なっ!?」
「シェリア、ルークを部屋へ。」
「はい。」



かたかたと震えるルークをこれ以上、目の前の矛盾した一行のそばにいさせるべきではないと判断したマリクはシェリアに、部屋に戻るよう促した。




「お待ちなさい!」



それに、気付いたナタリアが制止の声をあげるが、マリクは武器を手に取り、強く睨みながら口を開いた。



「待つのはお前たちだ。
ルークをこれ以上侮辱するような発言をするつもりなら、俺も黙っていない。」
「バ、バッカじゃないの!?
あんなワガママお坊っちゃまのことなんか庇っちゃって!」
「…お前たちはルークの何を知ってる?」
「俺はルークが小さい頃から面倒を見てきたんだ。
俺の方がルークのことをよく知ってる。」
「知っていてそっち側にいるのか?
ガイ、それは知ってるとは言わない。
知ってる気になってるというんだ。」
「っ!!…違う!!」
「長い時間を共に過ごしてきたという割に付き合いの短い方についてルークを庇おうともしないお前に違うと否定する権利はない。」
「ガイは悪くありませんわ!」
「…いいか?
お前たちがどれだけ喚こうとも、俺たちはお前たちにルークを渡す気はない。」
「あなたの許しを得るつもりはないわ!
ルークに罪を償わせなければいけないの!
早くルークを渡して!!」
「………。」



非常識極まりないルークの元同行者の言葉に相手にすることすら鬱陶しいと感じていたマリクは、背後から見知った気配を感じ取って、ちらりと視線を向けた。



「…教官。
ムダですよ…、そこにいる頭の足りない人たちに何を言っても時間の無駄です。」
「ヒューバートか。」
「キーキー喚くだけなら猿でもできますよ。
いえ、逆に猿に失礼ですね。」
「なっ!?…なんなのよ!?」
「教官も損な役回りですね。
ルークからあの猿以下の人たちを引き離すためだったとしても、まるで言葉が通じない人たちを相手にするのも楽ではなかったでしょう?」
「…まるで宇宙人か何かと話をしている気分だ。
いや、宇宙人に失礼か。」
「そうですね。…行きましょう。
ルークの精神状態を落ち着かせなければいけないというのに、逆に追い討ちをかけられてしまいましたからね。
ルークが心配です。
…それに兄さんとラムダがかなり怒っていますから、なだめるのに付き合ってください。」
「あそこにいる奴等を相手にするより何百倍もマシだ。」



そう言いながら踵を返したマリクとヒューバート。
それに気付いたティアが引き留めようと足を踏み出した時だった。

ティアの足元にヒューバートが弾丸を撃ち込んだのは。
ヒューバートの方に視線を向ければ、ヒューバートは首を捻り、ティアたちを見ていた。
視線だけで人を殺せるのではないかと思わせるほどの冷たい視線を向けていて、ティアたちは硬直した。

[*←前] | [次→#]







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -