心の傷




約束通り、ルークと旅をするようになってすぐ、アスベルたちはルークの異変に気付いた。

戦闘に参加させるわけにはいかないと何度言っても「俺も一緒に戦う!」と言ってきかないルークにアスベルとソフィが何かあってもすぐに対応できるような形で陣形をとった。

だが、旅の途中で襲いかかってくる魔物や盗賊相手に無傷ですむというのも難しい話で、数の多い敵を相手だったのと不意討ちを受けたために陣形を崩され…ルークが傷を負ってしまった。



「…すまない、ルーク…。
何かあったら守ると言っておきながら…ルークにケガを負わせてしまうなんて…。
本当にすまない…。」
「きにすんなって!!
俺がアスベルたちがダメだって言っても全く聞かないで戦闘に参加してたんだし…。
俺が…アスベルたちと一緒に戦いたいってワガママ言ったんだし。
一緒に戦えて嬉しかった!
アスベルたちとなら戦ってても不安なんて感じないんだからな!
しかも今回は敵の数も多かったし、そんな中でもアスベルとソフィは必死に守ってくれた。
それにさ、全然痛くないから…!」
「何を言ってるの、ルーク!
腕の傷は少し深いわ。
痛くないはずないでしょ?」



強く落ち込むアスベルを励ますルーク。
痛くないからというルークに治癒術をかけながら、シェリアがそんなはずはないと言った。
アスベルが魔物を蹴散らしながら、ルークを守ったから大事には至らなかったものの、痛くないと言えるような傷ではない。
そんなウソをついても分かる、と咎めたシェリアだったが、対するルークはきょとんとした表情を浮かべて口を開いた。



「ウソなんかついてねぇけど…。」
「えっ…?」



ルークの言葉にシェリアは目を見開いた。
ルークの表情を見ても、ウソをついているようには見えない。
ルークとシェリアのやり取りを見守っていたアスベルたちも何かを感じ取ったのか、表情を固くした。



「……ルーク、それは本当か?」
「なんだよ、教官まで!
痛くないってさっきから言ってるだろ…!?」
「…兄さん。」
「ああ、分かってる。」
「次の街についたら、すぐに医師を手配しよう。」
「へ…?
リチャード?なんだよ、医者って?
俺が診てもらうってことか?
いやだぜ、めんどくさいし。」
「ルーク、診てもらった方がいいよー。」
「うん。
私も、ルークのこと、心配だから…診てもらった方がいいと思う。」
「なんだよ、パスカルとソフィまで…。」



アスベルたちは渋るルークを説得し、街につくなりすぐに医師による診察を受けてもらった。
そして、医師から聞かされたのはアスベルたちが予想していた通りのものだった。



「麻痺…ですか?」
「そうですね。
ルークさんは痛覚をまるで感じていません。」
「やっぱり…そうですか…。」
「体の一部の感覚が麻痺をするというのは、精神的な要因で起こるケースが多いです。
精神が強く傷つくと、そういった障害が起こる場合も多く報告されています。」
「あの…、どうしたらルークは元気になりますか?」
「精神的なものであれば、彼の精神状態を安定させてあげることが一番の薬になると思います。
人の心というのは目に見えない分、傷ついていても気付かないことも、あります。
彼が何に不安を感じているのかを見極めた上で対処してあげるしか方法はありません。」



精神的なものであれば、薬を処方しても限度がありますからね…、と言った医師にアスベルたちは目を伏せた。

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