受け入れてもらえる喜び



ユリアシティでいきなりアスベルに抱きついたルーク。
アスベルもいきなり抱きついたルークに驚いたが、その体が可哀想なほどに震えていたことに気付いていたから、ルークの背に腕を回し、ぽんぽんと優しく叩いた。



「アス…ベル…。
みん…な…、よかっ…た…。」



かたかたと体を震わせるルークにアスベルたちは不安にさせてしまったことにただ申し訳なくなった。



「ルーク…。
やっぱり1人にするべきじゃなかったね…。」
「いいんだ…。
だって、住民を避難させるためには足りないくらいだった。
それなのに…アスベルたちはアクゼリュスの人たちを助けてくれた。
…生きていて…くれた…。」



リチャードの言葉をルークは頭を振りながら否定した。
住民を避難させるために、相当無理をしたのだろう。
アスベルたちの体や服は汚れていた。



「ルーク…、」
「待ちなさい!彼は…ルークじゃないわ!」
「そうですわ!
彼は…偽者のルークです!」



ユリアシティの市長に部屋を借り、休んでいたアスベルたちの元に別れたはずのルークの同行者たちが現れ、そう言った。



「どういうこと?」



彼女たちの言葉の意味を理解できず、シェリアは訝しげな表情を浮かべながら問いかけた。



「そいつは、俺の情報を元に作られたレプリカ…、劣化複写人間なんだよ!」



シェリアの問いかけに答えたのは紅色の髪の男だった。



「れぷりか…。」



男の言葉を聞いたルークの頭にヴァンの言葉がよぎった。

ヴァンは言った。

人形だと。
愚かなレプリカルークだと。

そうか。
人間ですらなかったんだ。



「ふーん…。
それで?」
「だからなんだ?」
「レプリカだから、なんだって言うんだ?」
「…全く…。
たかがそんな理由で僕たちがルークから離れるとでも思っていたんですか?」
「みくびらないでほしいわね。」
「ルークは偽者なんかじゃない。
私たちの仲間だよ?」
「…ていうか、ルークには常に抱きつきたい衝動にかられるのに、紅色の髪をした人には全くその衝動にかられないんだよねー。」
「パスカルさん…。
そういう問題じゃ…。
だけど、レプリカだなんてちっぽけな理由で離れると思われるのは心外だね。」



自分という存在に自信がもてなくなりそうだったルークの耳に届いたのは、そんな言葉の数々だった。



「みんな…?」
「ルーク。
ルークがレプリカだったとしても、負い目を感じる必要はない。
俺たちと同じように生きているんだから。」
「ねえ、ルーク!
タルタロスの修理を頑張ったんだから抱きついてもいい?いいよね?」
「パスカル。
ルークだって疲れてるのよ?
あとにしてあげて。」
「えぇ〜…?」



レプリカだという話を聞いてもちっぽけなことだと言い切るアスベルたちにルークはぽろぽろと涙を流した。

人間じゃない自分のことをアスベルたちは“ちっぽけなこと”で、仲間だと言ってくれた。
その程度のことでルークから離れるはずがないと。
当たり前のように受け入れてもらえることがこんなにも嬉しいことだなんてルークは知らなかった。



「ちっぽけなことって…!」
「本気で言ってるわけ〜!?」
「ちっぽけなことですよ。
どう生まれようと、ルークがここにいて、生きているという事実をたかがレプリカだからという理由でねじ曲げられるとでも思っているんですか?
ああ、そうですね。
僕たちとあなたたちとでは、“仲間”という言葉の意味の捉え方が違うようですから、そう言ってしまうの仕方がないのかもしれませんね。」
「なッッ!?」
「仲間ごっこを楽しみたいなら、好きにするといい。
だけど、ルークは、僕たちの仲間だ。
君たちなんかの仲間じゃないことは覚えておいてくれ。
さあ、行こう。ルーク。」
「ちょっと!!待ちなさいよ!」
「納得いきませんわ!」
「非常識にも程がありますよ」
「好きに喚いていればいい。
だが、これだけは言っておく。
俺たちはルークを傷つける者には容赦しない。
それだけは覚えておくんだな。」



マリクが最後にそう言うと、アスベルたちはルークのことを気遣いながら、もうここには用はないと言わんばかりにその場から立ち去った。
後ろでふざけるなと叫ぶルークの同行者たちのことを無視して。

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