聞きたくてたまらない声
気が付いたらアクゼリュスは崩落していた。
ルークはただ混乱した。
必死に暗示に逆らっていたからか、精神的にも肉体的にもギリギリな状態だったが、それでも崩落してしまった原因を必死に考えていた。
「貴方は兄に騙されたのよ。」
混乱するルークにティアはそう言った。
ヴァンは自分を利用するために今まで優しい師を演じていたのだ。
それを知ったルークは悲しくて今にも泣き出しそうになった。
「…アクゼリュスは崩落してしまいましたわ…。
何千人もの民と共に…。」
「あ…。」
ナタリアの言葉にルークはハッとした。
アスベルたちと約束をしたのに、結局暗示には逆らえずアクゼリュスは崩落してしまった。
住民の避難は無事に終わったのだろうか?
そして、アスベルたちは無事なのだろうか?
ただ心配で仕方なかった。
「みんな…!
アクゼリュスのことだけど…。」
「ルーク。
認めたくない気持ちは分かりますわ。」
「だけど、言い訳なんてみっともないわ。」
「ルーク…。
罪を認めてくれ。」
「そうじゃない!」
「そうじゃないって…。
自分のせいじゃないとか言うつもり?」
「親善大使殿は、自分の非を認めるつもりはないようですね。」
アスベルたちが心配で、ルークはティアたちに助けを求めようとした。
だが、言い訳をするだけだと決めつけられていて、ルークは最後まで言うことができなかった。
何を言っても言い訳にしか取られない。
「(アスベルたちにもしものことがあったら…俺はどうしたらいいんだ…?)」
アスベルたちの安否が心配なだけなのに、アクゼリュスの崩落を認めないなんて言ってないのに、ティアたちには何も伝わらない。
「(そっか…。
俺みたいな奴の言葉に耳を傾ける必要はないんだ…。
…アスベルたちが無事じゃなかったら…、俺には生きる理由なんて存在しない…。
アスベル、ラムダ、ヒューバート、リチャード、ソフィ、シェリア、パスカル、教官…。
巻き込んでごめん…。)」
非難の目で見られ、アスベルたちの安否も分からない今、生きる理由なんてどこにもないとルークは思った。
でも、アスベルたちの安否がはっきりしない今、ティアたちに協力してもらわなければ自分一人の力ではどうしようもないことも分かっていた。
だけど、目の前にいる彼らは冷たい視線を向けるばかりで、話を聞いてくれるとは思えない。
助けたいのに、助けられない。
「やだ…。
そんなのは…いやだ…。」
やっと、命に代えても助けたいと心から思える仲間に会えたのに、助けられない無力な自分。
それが怖くて、悔しくて、アスベルたちのいない世界でなんて生きられないと、そしてそれを否定したくて、ルークはそう言った。
「ここにいるとバカな発言にイライラさせられます。」
「最低…!
イオン様、行きましょう!」
「貴方は変わってしまいましたのね。」
「あまり幻滅させないでくれ…。」
「少しはいいところもあると思ってたのに…。」
ルークの「いやだ」という言葉は罪を認めようとせず、自分の罪から目を背けようとしているのだと決めつけたティアたちは、ルークを責めた。
「おれは…!!」
「さいってー。
アンタのせいでアクゼリュスの人達は死んじゃったのに、言い訳するつもり?」
「ちが…っ!」
「ルーク…、頼むからこれ以上は幻滅させないでくれ…。」
「なんで…はなしを…きいてくれないんだ…。」
罪を認めないなんて一言も言ってないのに。
ただ、大切な仲間たちに何かがあったんじゃないかという不安を否定したくて言っただけなのに。
…アスベルたちのいない世界に生きていても仕方ない。
もうこの世に未練なんてない。
ルークがそう思った時だった。
「━━━ルーク!」
聞きたくてたまらない声を聞いた。
その声を聞いたルークは体を強張らせた。
アスベルたちはそんなルークを安心させるように笑いかけた。
━━生きていてくれた。
その事実がただ、嬉しくて。
ユリアシティにつき、同行者たちと別れたルークはアスベルにギュッと抱きついた。
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