信じているから
「ルーク。
なにをしているの?
早くして。」
アクゼリュスに向かうべく歩みを進めていたルークはティアの言葉にため息をついた。
アスベルたちと別れてからもう何度、ため息をついたか分からなくなるくらいだ。
アスベルたちは大丈夫だろうか、そして余計なことに巻き込んでしまって申し訳ないという罪悪感からアスベルたちと別れた街の方を振り返ることが多くなった。
その度に同行者たちに早くしろ、と急かされた。
アスベルたちだったら、どうかしたのかと理由を問いかけてくれると分かっているからこそ、その言葉に嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
「(アスベルたちだったら、俺のことをこんな冷たい目で見たりしない。
見下したりしない。
…一緒に旅をするのが何でアスベルたちじゃないんだろう?)」
「ルーク!
早くして!」
「こうしている間もアクゼリュスの民は苦しんでいますのよ!?」
「そうだぞ、ルーク。
あまりのんびりしていられる状況じゃないんだ。」
同行者たちの言葉の1つ1つに嫌気がさしてしまう。
アスベルたちが協力してくれるから、お前らはバチカルに戻れ、と何度言いかけただろう?
だけど、その度に踏み止まった。
ティアたちに打ち明けて、万が一にでもアクゼリュスの住民を避難させることができなくなったら、と考えたルークは黙っていた方がいいとひたすら自分に言い聞かせた。
***
「…………っ!」
アクゼリュスに到着したルークは言葉を失った。
瘴気の影響を受け、苦しそうにしている人の数が多くてただ、驚いた。
ヴァン師匠はこんな状態でも避難させるな、と言うのか?
こんな状態ならシェリアやソフィが言っていたように住民を避難させた方がいいと感じるのは当たり前だろう。
昔、シェリアが教えてくれた。
傷ついていたり、苦しんでる人がいたら自分にできる限りでいいから助けてあげてほしいと。
助けてくれる人がいる、ということは苦しんでる人たちにとって強い励みになるのだと。
護衛として屋敷にきた時に、ケガをして倒れたメイドを治癒しながら、そう言った。
あの時のシェリアの言葉がなければ、きっと何をしたらいいか分からず、ただ慌てていただけだったろう。
あの時のシェリアの言葉があったからこそ、自分にできることを精一杯やろう、と思えた。
だからこそ、住民を無事に避難させることができるよう、ヴァンを引き付けておかなければならない。
でも、きっと師匠ならここまでひどいなら避難させるべきだと言ってくれるに違いないと思っていた。
アスベルたちのことを信じてる。
だけど、ヴァンのことも信じているから、だからこそ理解してくれると思っていた。
━━━━…ヴァンに会って話をするまでは。
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