あたたかさ





「ここにいるとバカな発言にイライラさせられます。」
「最低…!
イオン様、行きましょう!」
「貴方は変わってしまいましたのね。」
「あまり幻滅させないでくれ…。」
「少しはいいところもあると思ってたのに…。」



アクゼリュスが崩落した。
そして、超振動でアクゼリュスを崩落させてしまったルークをジェイドたちは責め立てた。

…ある事実を知らないまま。



「おれは…!!」
「さいってー。
アンタのせいでアクゼリュスの人達は死んじゃったのに、言い訳するつもり?」
「ちが…っ!」
「ルーク…、頼むからこれ以上は幻滅させないでくれ…。」
「なんで…はなしを…きいてくれないんだ…。」



ルークの声に耳を傾けようとせず、ジェイドたちはルークを蔑んだ目で見つめた。



「━━━ルーク!」



冷たい視線を浴び、体を強張らせるルーク。
そんなルークの元に複数の影が近付いてきた。



「アス…ベル…。
みんな…。」



ルークの元に駆け寄ってきたのはアスベル、ヒューバート、シェリア、ソフィ、パスカル、マリク、リチャードだった。
ルークの表情を見たアスベルたちは、すぐにルークを1人にするべきではなかったと後悔した。

ルークは強く傷付いた表情を浮かべていた。
そんなルークを少しでも安心させたくて、アスベルは優しく微笑み、ルークの頭を撫でながら口を開いた。



「ルーク。
ルークが頑張って時間稼ぎしてくれたから、避難は無事にできた。
ありがとう。」
「…ほんと、に…?」
「シェリアが治癒術をかけたら回復した人もいました。
ルーク1人にヴァンの相手をさせてすいません。」
「ヒュー…バート…。」
「あ、タルタロスで少し故障してたところはガガガー、ゴゴゴーって直しといたから安心してねー。」
「パスカル。
その言い方だと安心できないわ。
逆に壊してるように聞こえるわよ。」
「そっかなー?」

「な、なんなの!
あなたたち!!」



突然現れ、存在を無視されたことに憤りを感じたティアは怒りの声をあげた。



「兄さん、この人たちは、陛下が言っていた人たちですか?」
「ああ。
ルークの同行者だ。」
「なッ!?
同行者って何よ!?
私達は仲間よ!!」
「仲間は、話も聞かずに責める人たちのことなの?」



ティアの言葉にソフィは不思議そうな表情を浮かべ、首を傾げた。



「違うよ、ソフィ。
彼女たちは仲間だと思い込んでるだけだ。」
「もしくは、仲間が何かも理解できていないんじゃないですか?」
「なんですって!?」
「アスベルたち…なのか?」



怒りに震えるティアたち。
しかし、そんな中…ただ1人…ガイだけは信じられない様子でそう呟いた。



「ガイ、知ってるんですか?」
「あ、ああ。
何年か前に旦那様がルークのわがままに手をやいていて、一時的に世話係として雇っていたことがあって…。」
「わがまま、か…。
あんなものはわがままのうちに入らんぞ。」
「そうだね。
周りにいる誰もがルークのことを腫れ物にでも触るような反応をしていたんだ。
あんな環境の中にいたら、反抗したくもなる。」



マリク、リチャードはあれはわがままにはならないと否定した。
そして、アスベルたちも賛同するように頷いた。



「そんなことどうでもいいよ!
ルークはたくさんの人を殺したんだよ!?
総長に騙されて…、アクゼリュスの人達が死んじゃったんだよ!」
「言っている意味が分かりませんね。
アクゼリュスの住民は僕たちが保護しました。
瘴気に蝕まれ、亡くなった方もいますが、アクゼリュス崩落による死者は1人もいませんよ。」
「……え?」



ヒューバートの言葉にティアたちは驚きを隠しきれない表情を浮かべた。
そんなティアたちに向かってソフィが言葉を発した。



「ルーク、私達にアクゼリュスの前にあった街で偶然会って、相談してくれたよ。
ヴァンって人に言われたことも全部、話してくれたよ。」
「その話を聞いて、僕たちの考えと対策を考えて教えたら、僕たちのことを信じると言ってくれました。」
「あなたたちに話すかどうかは、ルークの判断に任せると言ったけど…その様子ではルークは話さない方がいいと判断したようね。」
「………なるほど。
つまり、ヴァンに住民を避難させていることを悟られないよう、ルークに時間稼ぎをさせていた、というわけですか。」



ジェイドの言葉にリチャードは頷きながら、口を開いた。



「その通りだよ。
…君たちはルークの話を全く聞こうとしなかったようだね。
仲間だと言っているのに、仲間の声に耳を傾けないなんて…僕は信じられないな。」
「それはルークの今までの態度が!」
「じゃあ、仲間っていうのはおかしくない?」



信じられない様子で呟いたリチャードの言葉に反論するも、パスカルにおかしいと言われ、ティアたちは口ごもった。



「…ッ、だけど…!
私達にも相談してくれていたら、確実に住民を避難できたわ!
たまたまうまくいったから良かったけど…、全員を救出できなかったら、取り返しのつかないことになっていたわ!」
「ティアの言う通りですわ!
仮に避難ができていなかったら…、わたくしたちに相談しなかったルークはどう責任を取るつもりでしたの!?」
「もう黙ってくれないか?
……ラムダがかなり怒ってる…。」



ルークが悪い、と責め立てるティアたち。
そんな中、アスベルはぽつりと呟いた。



「ラムダ?
だれ、それ?」
「『お前たちの言動は聞くにたえぬ。
ルークは我にとって大事な者の1人…。
それ以上、ルークを愚弄すれば、その命はないものと思え。』
…だってさ。」
「ラム…ダ…。」



アスベルからラムダの言葉を聞き、ルークはうるうると瞳を潤ませた。
ルークはアスベルの中に住むラムダの存在を教えた時、あっさり受け入れたのだ。

アスベルたちがいるって言うなら信じると言ってくれた。
話してみたい、と言ったルークにアスベルは精神をラムダに明け渡し、ルークもラムダと楽しそうに話していた。

━━アスベルたちは、異世界からきた。
だが、自分達の世界でも、ラムダの存在を信じる者はいなかった。
まして、話してみたい、などと言ったのもルークが初めてだった。
ラムダは自分を受け入れてくれたルークをかなり気に入っているようで、だからこそルークが悪いと責め立てるティアたちを許せなかったのだろう。



「ラムダ…。」
「ルーク、お前は我を受け入れてくれた数少ない者の中の1人。
故に、我はお前を蔑む者がいるなら容赦はしない。」
「あら、いつの間にラムダに意識を明け渡していたのかしら?」
「アスベルとラムダとルークは仲良しだからね〜。」



シェリアとパスカルは微笑ましそうにそのやり取りを見守っていた。



「え、なに?
あのアスベルって人、二重人格だったってこと〜?」
「話を聞いている限り、そのようですね。」
「二重人格者に偉そうに語られたくないわ。」
「アスベルとラムダのことを悪く言うなッ!!」



アスベルとラムダをバカにするような物言いにルークは強い怒りを露にしながら叫んだ。



「アスベルもラムダも…、それにヒューバートたちも俺のことを一度もバカにしなかった!
分からないことを聞けばちゃんと教えてくれた!
みんなみたいに、何でこんなことも分からないんだって呆れたりしないで、俺が理解できるまで教えてくれた!
ヒューバートや教官は、いろんな豆知識みたいなの教えてくれたし、ソフィは一緒に花の種を植えて一緒に世話をしてくれて…、シェリアは美味しいものをたくさん作ってくれたし、リチャードは剣の稽古に付き合ってくれた!
パスカルはバナナパイバナナパイってうるさかったけど一緒にいて楽しかった!
アスベルたちのこと、何も知らないくせに、アスベルたちのことをバカにするな!」
「いいんだ、ルーク。
事のあらましはキムラスカ、マルクトの両陛下に伝えておいた。
彼らの処遇は遅かれ早かれ決まると思う。
それに、俺たちはルークがいてくれるなら、それだけでいいんだ。
さあ、帰ろう。」



そう言ってルークに手を伸ばせば、ルークはこくんと頷いた。


納得がいかないとわめき散らす同行者たちをおいて、ルークはアスベルたちと共に立ち去った。



END

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