行動開始






「ルーク、ヴァンは住民は避難させるな、と言ったんだな?
瘴気が噴き出すアクゼリュスから出すな、と。
そう言ったんだな?」
「うん…。」



どうするべきかを考えるためにマリクはルークに再度確認を取るように問いかけた。
その問いかけにルークはこくりと頷いた。



「だったら、住民を避難させてしまったことが彼にバレてしまったらマズイわね…。
まずは気付かれないよう、住民を避難させる方法を考えるべきだわ。」
「誰かがヴァンを引き付ける、というのが一番だとは思います。」
「それなら俺が…、」
「俺がやる。」



ヴァンに気付かれないように行動するためには誰かが引き付けておくのが一番だとヒューバートが言った。
アスベルがその役を引き受けると名乗りをあげるが、それはルークによって遮られた。



「ルーク?」
「…ヴァン師匠に住民を避難させていることがバレないようにすればいいんだろ?
だったら、俺がやる。」
「でも、大丈夫なのかい?
ルーク、君はヴァンを信じてるんだろう?
彼の指示とは反することをしてしまうことに罪悪感だって感じてるはずだ。
それなのに…引き付け役を引き受けたりして…大丈夫なのかい?」
「失敗しないように…頑張るから……大丈夫だ。」
「僕が心配しているのは失敗するかどうかじゃない。
ルークの心の心配をしてるんだ。」
「リチャード…。」



失敗はしない、と言ったルークにリチャードはそうじゃないと返した。
誰だって信じたいと感じる人を騙して時間稼ぎをすることを喜ぶはずがない。
だから、リチャードはルークの心が傷つくのではないかと心配したのだ。



「……確かに…、ヴァン師匠の言ってたことと違うことをするってのは…辛い。
でも…、リチャードは俺のことを心配してくれた。
みんなも、どうすればいいかを一緒に考えてくれた。
今…一緒に旅をしてる奴らはそんなことしてくれなかった。
俺が何か口を開けばワガママだって言われて…苦しかった。
だけどアスベルたちに久しぶりに再会して、みんな変わってなくて…あの時に…戻ったみたいで…。
俺…、嬉しかった。
嬉しかったんだ。」
「ルーク〜!!」
「なッ、やめろよ、パスカル!
抱きつくなよ!俺はガキじゃない!!」
「イヤだよ〜☆
だってもうそんな嬉しいこと言われたら誰だって抱きつきたくなるって!」
「私もルークに抱きついてもいい?」
「ソフィまで何言って…!」
「じゃあ一緒に抱きつこうよ〜。」
「うん。」
「やめろって!!恥ずかしいだろ!?」



パスカルとソフィに抱きつかれたルークは顔を真っ赤にしながら暴れた。



「…話を戻していいか?」



目の前で、ぎゃいぎゃい騒ぐルークたちにマリクは苦笑しながらそう言った。



「あ、ごめーん。」
「……ルーク、本当にいいんだな?」



マリクに言われ、パスカルは話を進めるべきだと判断したのか、少し名残惜しそうにルークから離れた。
それを見たマリクは再び確認するようにルークにそう問いかけた。



「…俺がやる。
…それに…ヴァン師匠ならわかってくれるって信じてる。」
「…わかった。
ならばルークはヴァンを引き付けてくれ。
俺たちはその間に住民を避難させる。
だが、忘れるな。
お前は独りじゃない。」
「教官…。」



ポンポンと優しく頭を撫でながらマリクは言った。
その言葉にルークは心が温かくなった。



「(そうだ、俺は今…独りじゃない。
独りじゃないなら頑張れる。
…独りじゃ…ないんだ…。)」



たったそれだけのことだったが、ルークは不思議と心が落ち着いていくのを感じた。
アスベルたちに会う前と今とでは全然違っていた。



「……俺…、そろそろ戻るよ。」
「ルーク…。」
「大丈夫。
だってもう独りじゃないんだから。」



そう言って笑ったルークの笑顔に曇りはなかった。



「あの、さ…。
ティアたちにはこのこと言った方がいいのか…?」



自分の泊まる宿に戻ろうとしたルークは途中で立ち止まり、ティアたちには打ち明けるべきかどうかを問いかけた。



「…それは…、僕たちでは判断しづらい問題だね…。」
「え?」



リチャードの言葉にルークは目を瞬かせた。



「だって僕たちはルークじゃない。
ルークが一緒に行動している人たちのことをルークが話してもいいと自然に思えるくらい、信頼できるなら話せばいいと思う。」
「そうだな。
ルークが俺たちを信じたいと言ってくれたように、話してもいいと思えるなら話せばいいと思う。」
「…うん…。」



リチャードとマリクの言葉にルークは少し視線をさ迷わせたあと、頷いた。
そして名残惜しそうにしながら静かに部屋を退室していった。



「教官。」
「ああ。
わかっている。
ルークから聞いたヴァンの話や預言のことも含めてキムラスカ、マルクトの両国に話をつけておくよう、すぐに動く。
アスベルたちは、避難方法などを含めてアクゼリュスの住民のことを頼む。」
「わかりました。」
「絶対にルークを助けましょう!」
「私たちはルークの味方だもん。頑張ろうね!」
「そうと決まったら早速行動開始だね!」
「その前に作戦会議をして各々、どう動いたら円滑に事を進められるか考えた方がいいと思うよ。」
「陛下の言う通りです。
まずは状況判断やこれからの動きを明確にしましょう。」



マリクが単独でキムラスカとマルクトの陛下に働きかけ、その他のメンバーは住民の避難をするべく動き出した。


少しでもルークが傷付くことのない方法を選ぶために。
また、昔のように笑いあえる時を過ごすために。


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