信頼と約束






「親善大使?」
「ああ。
それで今、アクゼリュスに向かってるんだ。」
「…しかし、気になりますね。」
「え…?」



久々の再会で話すこともたくさんあるだろうとルークは落下して目を回すミュウを連れ、アスベルたちと一緒に彼等が泊まる宿に来ていた。
成人するまでは出られないと聞いていたのに、外に出た理由を問うたアスベルたちにルークは包み隠さず打ち明けた。
それを聞いたヒューバートは顎に手を添え、眉を寄せながらぽつりと呟いた。
その言葉に同意するようにリチャードが頷きながら言葉を発した。



「確かに今までルークの身を守るために軟禁していたのに、預言に詠まれていたからと言ってこうも簡単に外に出ることを許可するのも妙な話だ。
それだけじゃない。
故意であろうとなかろうとルークを誘拐した人と共に行動させることを許可するなんて、どう考えてもおかしい話だと僕は思う。」
「それに、ヴァンの言うことも気になるな。
ルークが超振動という力を使えるにしても、まだ力をコントロールできていないルークに超振動を使えば、アクゼリュスを救うことが出来るという言葉も矛盾を感じるな。」
「強い力はコントロールできなければ悲劇を招くこともあるからね。
首席総長なんて肩書きがあるなら、それくらい簡単に予測できると思うんだけどねー。」
「ヴァン師匠が何かしようとしてるって言いたいのか?
ヴァン師匠を疑うのか…?」



ヒューバートたちの言葉にルークは眉を寄せながらそう返した。
そんなルークにリチャードが静かに口を開いた。



「ルーク。
ラムダはね、最初はアスベルとではなく、僕に寄生していたんだ。」
「え?そうだったのか?」
「そうだよ、ルーク。
僕に寄生していた時、ラムダの負の感情が強くて、それに強く同調していた僕は世界を消そうとしたんだ。
強い力はうまくバランスが保てなければ自分の身や周りの人をも滅ぼすことになるのだと、僕はアスベルたちに助けてもらうまで気づけなかった。
そしてラムダもそれは同じだった。
僕とラムダのケースとは少し違うけど、ルークには超振動という強い力がある。
強い力があるという点ではラムダと同じだ。
だからこそ、それをコントロールできない今は、ルークの体に何かしらの害を及ぼす危険もあるし、もしかしたらアクゼリュスに悪影響を及ぼす可能性だってあるんだよ。」
「……………。
だったら…、俺はどうすればいいんだよ?
だって、ヴァン師匠は超振動を使えば英雄になれるって言ったんだ!
そうすれば俺のことをバカにしてる奴らに俺のことを認めさせることが出来るって、そう思ってたのにそれを否定されたら…、俺はどうすればいいんだよ!?
俺は…結局誰にも認めてもらえないってことなのかよ!?」



泣きそうな表情を浮かべながらルークは叫んだ。
そんなルークの手をソフィはギュッと握りながら言葉を発した。



「…っ、ソフィ…?」
「あのね、ルークが英雄じゃなくても私たちは仲間だよ。」
「ソフィの言う通りよ、ルーク。
だから…アクゼリュスの人たちをどうしたら救えるのかを一緒に考えましょう。
私たちもそのヴァンって人にあまり会ったことがないから、どんな人なのかはよく知らないわ。
でも、ルーク。
アクゼリュスの人たちは今、苦しんでいるのよね?」
「うん…。
でも、ヴァン師匠はアクゼリュスの住民を避難させずに俺が超振動を使えば預言通りになることはないから、避難させるなって言ったんだ。」
「でもね、ルーク。
瘴気は人の体に有害なものなの。
それが蔓延している場所にいて、避難させれば助かったかもしれない命を見捨ててまですることかしら?
まずは瘴気のある場所から住民を避難させることを最優先させるべきじゃないかしら?」
「…でも…。」
「ルークはアクゼリュスの人たちが死んでしまっても知らない人だからいいと思うの…?
私はね、苦しんでる人がいるなら助けてあげたい。」
「ソフィ…。」



信頼するヴァンの指示とは反することを言うシェリアとソフィにルークはただ戸惑った。



「ルーク。
英雄にならなくたっていい。
俺たちは英雄になったルークと仲間でいたいわけじゃない。
“ルークだから”仲間でいたいんだ。」
「……!
アスベル…。」
「だから、ルーク。
俺たちと一緒に考えよう。
どうしたら被害を最小限に止めることができるかを。
もし、それをしてヴァンって人に怒られたとしても、俺たちも一緒に怒られるから。
そして、理由を説明しよう。
もし、ヴァンって人がルークのためを思ってしたなら、俺たちも疑ってしまったことを謝るから。」
「…アスベル…。
本当に…3年前と変わらないんだな…。」
「ルーク?」
「……わかった。
俺だって苦しんでる人がいるなら助けたい。
シェリアの言う通り、ヴァン師匠の言う通りにしたことで死ぬ人がでるなんて嫌だから…。
だから一緒に考えてほしいんだ。」
「ルーク…!」



不安そうに見上げながらルークはアスベルたちを信じることを選んだ。






[*←前] | [次→#]







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -