再会の時





「わがまま言わないで。」
「やれやれ。
わがままなお坊っちゃまの話を聞くのも楽ではありませんね。」



うんざりしてた。
親善大使としてアクゼリュスに向かう道中、共に行動する奴等は俺が何を言っても“わがまま”だって決めつけて話を何も聞いてくれなかった。


屋敷の外に出られるようになった時は本当に嬉しかった。
だけど、一緒に行動しているのが屋敷の中にいる奴らと一緒で“わがまま”だって決めつけてくる奴らだから、全然楽しくない。



「みんな…。
俺…、外に出られるようになったんだ。
約束を…守ってくれよ。
……会いたい…。」



空を見上げてルークはぽつりと呟いた。
会いたいと願うのは幼い頃に共に時を過ごした友達。
会いたくて会いたくてたまらなくて、ルークは空を見上げることが多くなった。

空に会いたい気持ちをぶつければ、会えるかもしれないなんて無茶苦茶なことを考えるほどルークの心は寂しい、と叫んでいた。


そして、その願いは思いもよらないところで叶うことになった。




***



アクゼリュスの前の街で一晩を明かすことになり、ルークは1人で街の中をぶらついていた。



「ご主人様、ティアさんたちと一緒にいないですの?」
「一緒に…いたくない。」



街の中をぶらつくルークに小さな従者…ミュウは大きな目をぱちぱちさせながら問いかけた。
その問いかけにルークはそう返した。

一緒にいればまたどんな文句を言われるかも分からない。
だったら1人の方がよっぽど気が楽だ。
1人だと寂しい気持ちにはなるけど、ミュウはルークのそばを離れようとしなかった。
みゅうみゅうと、ウザいとは思う反面、いつもそばにいてくれるミュウにルークは密かに感謝していた。



「ルーク…?」
「…………っ!?」



どうしようかと考えていたルーク。
そんな時、背後から自分を呼ぶ声を耳にしてルークの体は震えた。

3年前に会って以来、一度も会えなかったけど、聞き間違えるはずがない。
その声は会いたくてたまらなかった人の声だったのだから。


声のした方を振り返り、ルークは脇目もふらず、駆け出した。
いきなり駆け出したせいで肩に乗っていたミュウが落下して「み゙ゅッ!!」と声をあげていたが、それに構う余裕がルークにはなかった。
すぐに駆け寄らなければ幻となって消えてしまうのではないか、と考えたルークはただ必死だった。

無我夢中で駆け寄り、ルークは自分を呼んだ声の主に思いっきり抱きついた。



「アスベル…っ!!」



抱きつきながら名前を呼べば、自分の声は情けないくらいに強く震えていた。



「ルーク。」
「アスベル…、会いたかった…っ!」
「本当にルークなんだな…。
俺も…いや、俺たちもずっとルークに会いたかった。
でも、どうしたんだ?
確か…成人するまでは外に出られないんじゃなかったのか?」
「それは…。」
「あれーっ!?
ルークだーっ!」
「本当だ!ルーク!」
「わっ…!!」



アスベルの少し後ろからパスカルとソフィが現れ、2人がルークの姿を見つけた途端、パスカルとソフィはアスベルをはね除け、ルークにギュッと抱きついた。
はね除けられたアスベルは困ったように笑いながら頭をかいていた。



「パスカル…、ソフィ…。」
「会いたかったよー、ルーク!
ああー…、生ルークだ!
ルークに抱きつけてるよー。
ずっと抱きつける日を待ち望んでたんだからねーっ!」
「私もルークと次に会った時に一緒に植える種をずっと集めてたの。
ほら、見てルーク。」



人の温かいぬくもりを感じたルークは瞳が潤んでいくのを感じた。
そんな中、ソフィは一緒に植えようと集めていた種をルークに見せた。
その数の多さにルークは約束を交わしてからずっと再会できる時を信じてくれていたのだと知って嬉しくてたまらなかった。



「ルーク、久し振りですね。
何か知りたいことがあれば何でも聞いてください。」
「ヒューバート…。」
「大きくなったな、ルーク。
さて、あの時より知性を兼ね備えた俺に何でも聞いてくれ。
雑学でも、何でもな。」
「教官…。」
「その前に何が食べたいのか教えてね、ルーク。
何でも作るわ。」
「シェリア…。」
「シェリアさんの手料理を口にした後はルーク、久々に一緒に稽古しよう。
食後の運動になるだろうからね。」
「リチャード…。」



ヒューバートたちの言葉を聞いてルークは、ふるふると体を震わせた。
その言葉の全ては幼い頃に交わした約束を忘れてはいないことを示していたから。



ああ、3年経っていてもアスベルたちは何も変わってない。
3年前と同じ優しさがそこにはあった。
まるで3年前に戻ったような気持ちになるくらいに、変わってないアスベルたちにルークは嬉しくてたまらなくなった。




[*←前] | [次→#]







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -