未来へ続く絆

「サトシくん。私とフルバトルしてくれないかしら?」



ジュニアカップを終え、次の町へ向かおうとしたサトシを引き止め、シロナは突然そんなことを言い出した。
その言葉にデントとアイリスは思わず固まった。



「俺でよければ、喜んで!!」



そして、固まっている2人には微塵も気づかず、サトシは二つ返事で了承した。



「ちょちょちょ!!サトシ!?
冗談でしょ!?チャンピオンのシロナさん相手じゃ絶対に勝ち目なんてないわよ!」
「そうだよ、サトシ。
とても、デンジャラスなテイストを感じるよ!やめた方が…!」
「だったら、オーキド研究所にいるポケモンたちでバトルしたらいいんじゃない?」
「「オーキド研究所にいるポケモンたち…??」」



必死に止めるデントとアイリスとは違い、冷静にそのやり取りを見つめていたヒカリはそんな提案をした。
その言葉にデントとアイリスは目を瞬かせた。




***



「これより、シロナVSサトシのバトルを開始します!
6対6のフルバトルですが、どちらかのポケモンが戦闘不能になった瞬間にポケモンをチェンジし、最後のポケモンとのバトルが終了した瞬間、戦闘可能なポケモンの数が多かった方の勝利となります!」



ヒカリの提案から一時間後…、サトシはシロナとバトルフィールドで対峙していた。
審判はデントがつとめることとなった。
審判をつとめるデントもアイリスも不安そうにサトシを見つめている。
修行中のサトシでは、シロナのポケモン相手に恐らく手も足もでないものだろうと思っているからこそだった。



「サトシくん。
楽しみましょう!
手加減はしないわよ?」
「はい!よろしくお願いします!」
「まずは、ミロカロス!行ってちょうだい!!」
「だったら、俺は…ワニノコ!君に決めた!!」



第一戦目はミロカロスVSワニノコの水タイプ同士のバトルとなった。



「ワニノコ!楽しもうぜ!」
「ワニワニワー♪」



サトシの言葉にワニノコは嬉しそうに笑った。
久々にサトシとバトルできるとあって、喜びもひとしおだ。



「こちらから行くわよ!ミロカロス!“れいとうビーム”!!」
「ワニノコ!“みずでっぽう”!!」



ミロカロスの攻撃にワニノコは“みずでっぽう”を放った。
“みずでっぽう”は“れいとうビーム”で凍りついてしまい、攻撃が届くことはなかったが、それはミロカロスの攻撃も同じだ。
ぶつかりあった攻撃は氷となり、ぶつかりあった時の衝撃でその氷が弾け、割れた。



「まさか、“れいとうビーム”を“みずでっぽう”で相殺されるなんて…。
よく育てられているわね、そのワニノコ。」
「ありがとうございます!」
「それなら、この攻撃はどうするのかしら?
ミロカロス、“なみのり”!」



シロナに誉められ、嬉しそうに笑うサトシ。
だが、ここで攻撃の手を緩めるシロナではない。
次に命じたのは…“みずでっぽう”ではとても相殺しきれない攻撃だった。
だが、その攻撃にサトシは慌てることなく冷静だった。



「ワニノコ!踊れ!!」

「へっ?」
「踊れって…ダンス?そんな技あったっけ?」



サトシの言葉にデントとアイリスは目が点になった。
“踊る”なんて技を覚えているのかと、そもそもそんな技があるのかと、様々な疑問が飛び交った。



「ワニワニワー♪ワニャー♪」



そして、どうするのか見つめているとミロカロスの“なみのり”に自分も乗り、とても楽しそうに踊っている。
まさに“踊る”だ。



「ふふふっ。
面白いわね、そのワニノコ。」
「昔からワニノコは踊ってばっかなんですよ。
基本的に攻撃を避ける時も踊りながら避けるくらいで…。」



くすくす笑うシロナにサトシも苦笑を返した。
だが、他のポケモンとは違うその動きはトレーナーがそれを活かせばバトルのバリエーションも増やしてくれる。



「今度はこっちから行きますよ!
ワニノコ!そのまま“ロケットずつき”!!」
「ミロッ!?」



波に乗りながらの攻撃にミロカロスはうろたえた。
避けて!というシロナの声にうまく反応出来ずに、“ロケットずつき”をくらった。



「次は“きりさく”攻撃!!」
「そうはいかないわ!“れいとうビーム”!!」
「ワニャ!?」



連続攻撃をしかけるも、相手はチャンピオン。
そう簡単に何度も攻撃を受けてくれるはずがない。
近付いてきたワニノコに向かって放たれた“れいとうビーム”は、ワニノコを氷付けにしてしまった。

そのあとに、“なみのり”攻撃をくらい、ワニノコは戦闘不能になってしまった。



「やっぱりそう簡単にはいきませんね…。
ワニノコ、ありがとう。
よく頑張ったな。」



戦闘不能になってしまったワニノコに激励の言葉をかけたサトシはモンスターボールへ戻した。
シロナもミロカロスをモンスターボールに戻す。



「次は…ブイゼル!君に決めた!」
「グレイシア!行ってちょうだい!」



次いでのバトルはグレイシアVSブイゼル。氷と水のバトルだ。



「ブイゼル!“みずのはどう”!」
「ブイッ!」
「グレイシア!“シャドーボール”!」
「グレッ!」



ブイゼルとグレイシアの攻撃がぶつかり合い、爆音と共にそれぞれの攻撃は相殺された。



「グレイシア!“シグナルビーム”!」
「ブイーッ!!」
「ブイゼル!」



攻撃のあとの隙もつけるほど相手も甘くはなく…、更に攻撃技を放ってきたグレイシア。
その攻撃を受けて飛ばされるブイゼル。
さすがはチャンピオンのポケモン。
威力は相当なものだった。

だが、やられっぱなしで終わるサトシとブイゼルではない。



「負けるな、ブイゼル!
“ソニックブーム”!!」
「ブイブイッ!」
「…っ、早い!!」



攻撃を受けて、飛ばされながらもブイゼルはサトシからの指示を聞き、反撃した。
その反応の早さにはシロナも驚いたように目を見開いた。



「グレーッ!!」



“ソニックブーム”をくらいながらもグレイシアは耐えてみせた。
そうやすやすとは倒れてはくれない。



「シンオウで見た時よりスピードがあがってるわね。」
「オーキド博士から研究所でも毎日かかさず修行してたって聞いてますから。」
「そう。
だったら、グレイシア!“れいとうビーム”!!」
「その攻撃もらった!!
“アクアジェット”!!」



“れいとうビーム”を放ってきた瞬間にサトシは“アクアジェット”を指示した。
“れいとうビーム”に突っ込みながら進むブイゼルの“アクアジェット”は氷を纏っていく。

しかし、シロナはそんなサトシの考えを読んでいたのか、どこか余裕さえ感じる表情を浮かべている。



「サトシくん。
氷タイプの技を吸収して威力を増す、“アクアジェット”。
すばらしいと思うわ。
だけど…、私のグレイシアの攻撃に耐えられるかしら?」



そのシロナの言葉通り、グレイシアの攻撃にブイゼルは圧されていた。
“アクアジェット”の威力が徐々に落ちているのだ。
このままでは、逆に大ダメージとなる可能性もある。



「負けるな、ブイゼル!!
お前の根性を見せてやれ!!
全力でそのまま回転するんだ!!」
「ブー…イッ!」



サトシの声に応えるようにブイゼルはその体を回転させた。
すると、圧されていた攻撃を徐々に押し返していく。
更に回転しながら“れいとうビーム”を巻き込んでいっているからだろう。
それはまるでドリルのような形に変わっていった。

さしずめ、“氷のドリルジェット”と言ったところか。

回転し、勢いのつく攻撃にグレイシアも相殺しきれず…、辺りは大きな爆発に包まれた。

…そして、辺りを覆っていた煙が晴れたあと…、そこにはブイゼルとグレイシアが倒れていた。
相討ちだ。

迫力満点のバトルにデントもアイリスも呆然としていた。
ブイゼルのバトルスタイルを知っているヒカリでさえも、驚きを隠しきれない様子だった。



「…訂正するわ、サトシくん。
スピードだけじゃないわ。
パワーも増しているわね。」
「ありがとうございます。」
「まだバトルは始まったばかりよ。
次は…ロズレイド!お願い!!」
「ゴウカザル、君に決めた!!」



二戦目も終え、まだまだ興奮冷めやらぬ2人が次に繰り出したのは、ロズレイドとゴウカザル。
相性で言えばゴウカザルの方が有利だが、シロナが相手では油断はできない。
もちろん、バトルに全力で挑むサトシが油断するつもりはないことは明白だった。



「ゴウカザル、シロナさんに勝つぞ!」
「ウッキャ!」
「その子は正にサトシくんが真摯に向き合ってきたからこそ、強くなったとも言えるポケモンね。
だけど私も負けるつもりはないわよ?」
「もちろんです!バトルは全力でなかったら面白くありませんからね!」
「ふふっ。
それでこそサトシくんね。
行くわよ、ロズレイド!“じんつうりき”!!」
「“あなをほる”!!」



エスパータイプの攻撃は効果抜群だ。
くらってしまったら、いかにゴウカザルといえど耐えられるか分からない。
相手はシロナのポケモンだ。
だからこそ、地中に逃げたのだが…。



「だったら、ロズレイド。
穴の中に“ヘドロばくだん”!
ゴウカザルを引き摺りだすのよ!」
「ローズッ!!」
「…!しまった!ゴウカザル!すぐに出…」
「遅いわ!」



慌てて地中から出てくるように指示するも、サトシの方が一歩遅かった。
穴に向かって放たれた攻撃は容赦なくゴウカザルを襲った。
何とか地中から出てきたゴウカザル。
攻撃には何とか耐えたが、ゴウカザルは苦しそうによろめいた。



「まさか…毒におかされたのか!?」
「ウキャ…。」



ロズレイドの強力な攻撃に加え、運の悪いことに追加効果の毒状態にまで陥ってしまった。



「(…クソッ!まるでシンジとポケモンリーグでバトルした時と同じじゃないか…!!)」



シンジとバトルした時と同じように毒状態にされ、サトシはギリッと歯を食い縛った。
さすがはチャンピオンたるシロナ。
恐らくはゴウカザルが“あなをほる”で避けることを予測していたのだろう。
相性の悪さなどものともしない上に先の先を読んでくるところは、さすがだ。
毒状態にされてしまった以上、長引けば圧倒的にこちらが不利だ。



「(…ん?
…待てよ…。シンジとのバトルといえば…。)」



シンジとのバトルを思い出したサトシはふとあることも同時に思い出した。



「(試してみる価値はある…!)」



そう考えたサトシはキュッと拳を握った。



「これで、終わりよ!ロズレイド!
“じんつうりき”!!」
「ゴウカザル!さっきの穴に逃げ込め!」



毒状態でふらつくゴウカザルに更に追い討ちをかけようとしたシロナ。
サトシはすかさず穴の中に逃げ込むように指示した。



「サトシくん。
穴の中に逃げ込んでもさっきの二の舞よ?
…ロズレイド!穴の中に“ヘドロばくだん”!!」
「そう来ると思いましたよ!」
「えっ?」
「ゴウカザル!そのまま穴の中で“フレアドライブ”!!
全力で行けー!!」
「……っ!!」



サトシの言葉にシロナはハッとした。
それはまるでシンジとのバトルと同じだった。
“どくびし”を消し去るためのあの時と。

違うのは、ゴウカザルの掘った穴の中から凄まじい火柱が立っていることか。
そして穴の中に“ヘドロばくだん”を放とうとしていたロズレイドにそれが襲いかかってきた。

穴の中で熱が凝縮されたその攻撃は普通の“フレアドライブ”よりも格段に威力があがっている。
さすがに威力も増した効果抜群の攻撃を受けたとあっては耐えられずはずもなく…、ロズレイドは戦闘不能になった。



「うっそ…。
シロナさんのポケモンに勝った…。」
「アンビリーバボーなテイストだよ…。」



チャンピオンのシロナに一本とったことに驚きを隠しきれないデントとアイリス。
そんな2人の様子を見たヒカリは苦笑した。




「さすがね、サトシくん。
まさか誘い込まれるとは思ってなかったわ。」
「俺たちだっていつまでもやられっぱなしじゃありませんよ!」



そう言いながらサトシはゴウカザルにありがとうと感謝しながら、モンスターボールへと戻した。
シロナもロズレイドをモンスターボールへ戻した。
そして同時に次のポケモンを繰り出した。



「…トリドトン!次はあなたよ!」
「フシギダネ!君に決めた!」



第四戦目はトリドトンVSフシギダネ。
サトシに勝ち目なんてないと思っていたデントとアイリスだったが、2人のバトルから目が離せないのか、食い入るようにそのバトルの成り行きを見守っていた。

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