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「ピィカァァァァア…!!」
「わうぅ…!!」
それぞれが最後の力を振り絞り、放った攻撃。
どちらの攻撃が敗れるか、それが勝敗を分けるだろうということは誰が見ても明らかなことだ。
「ルカリオ!もう一発“はどうだん”!
一発目にぶつけるんだ!!」
「ピカチュウ!“エレキボール”!!」
一発目の攻撃がぶつかり合う中、サトシとキョウヘイは同じ技を加えるように指示した。
互いの攻撃は一歩も引かずにぶつかり合う。
どうなる?と誰もが固唾を飲んで見守る中、サトシの声がすぐに飛ぶ。
「ピカチュウ!ダブル“エレキボール”に魂込めろ!!」
「ぴっか!!」
サトシの言葉にピカチュウは重なり合う“エレキボール”に向けて“10万ボルト”を放った。
魂のこもった10万ボルトはルカリオの攻撃を破り、無防備なルカリオへ向かった。
「ッ、ルカリオ…ッ!!」
キョウヘイの言葉と同時に大きな爆発音が会場に響いた。
もうもうと立ち込める煙が晴れ…、そこには地に伏したルカリオと息を切らしながらもしっかりと立つピカチュウがいた。
『ルカリオ、戦闘不能!!
サトシくんの勝ち!!』
『ワアァァァァァアーー!!!』
サトシとピカチュウの勝利を知らせる審判に、会場は歓声が湧き上がった。
これまでの比ではない歓声に会場が震えているような錯覚を起こした。
「ぴ…か…。」
そして全ての力を出し切ったピカチュウがふらりと倒れるも、それを優しく受け止めたサトシはそのままピカチュウを抱き上げた。
「ありがとう、ピカチュウ。
よく頑張ったな。」
「ぴか…。」
サトシの言葉にピカチュウも笑った。
「ルカリオ、ありがとう。」
ふらつくルカリオの体を支え、キョウヘイは労いの言葉をかけた。
「サトシさん、ありがとう…ござ………、…た。」
自分のワガママに付き合ってくれたサトシにお礼を言おうとしたが、それは途切れ途切れになってしまった。
憧れの人とバトル出来ただけで十分なのに。
それよりもキョウヘイの心を支配したのは悔しさだった。
誰よりも憧れてる人だから、勝ちたかった。
でも、結局は負けてしまった。
「キョウヘイ、熱いバトルありがとう。」
「サトシさん…ぼく…っ!!」
サトシの言葉を聞いたキョウヘイの目からはみっともなく涙が溢れた。
「悔しい…よな?」
「はい…、ぼく…まだ弱いし、サトシさんに勝てるはずがないって…心の奥では分かってました…。
だって…僕にはまだ知識が全然足りない…から…。
でも…でも!!勝ちたかった…!!」
「…負けると悔しいよな…。
負ける度にこうすれば良かったとか、もっとポケモンたちの力を引き出せることが出来たらって…後悔したりするよな…。」
「僕の力不足で負けたんです…。」
「俺だって負けてばっかだぜ?」
「サトシさんはたくさん勝ってるじゃないですか…。」
負けた悔しさをサトシにぶつけるキョウヘイ。
みっともないと思っていても、悔しくてそんなみっともない言葉をサトシにぶつけて八つ当たりしてしまうキョウヘイ。
悔しさをぶつけずにはいられないほど今まで感じたことのない強い悔しさが、渦巻いていた。
「…俺だって何度も負けてるぜ?
……その度に思うんだ。
もっともっとポケモンのことを知って、信じて、…信じ合うことを大切にしようって。
トレーナーとポケモンの間に強い心の絆があればもっともっと強くなれるって。
だから、負けた時の悔しさも絶対に無駄にしないって負ける度に思うんだ。
そして、頑張ってくれるポケモンたちのことをもっともっと大切にしようって思うんだ。
バトルだけじゃなくて、ポケモンと関わる以上、心で繋がってないといけないんだ。
一方通行じゃなく、互いの心はいつもそばに。
勝利を掴むのに大切だって俺は思うからさ!」
そう言ってピカチュウの頭を撫でた。
そんなサトシを見てキョウヘイは思った。
「(まだまだ、この人には敵わないな…。)」
サトシは負けだけじゃなく、勝ちからも何かを得ている。
勝ちも負けも無駄にしないその姿勢がこの大会に現れているのだ。
本当にスゴイ人だなとキョウヘイは改めて認識した。
「サトシさん、それに皆さん。
僕のワガママに応えていただき、本当にありがとうございました。」
そう言ってキョウヘイは深々と頭を下げた。
そして観客は立ち上がり拍手を贈った。
『それでは最後にサトシくんには登場した時と同じようにパフォーマンスをしてもらい、それを閉会式とさせていただきます!
サトシくん、最後だ。
バッチリ決めてくれ!』
「はい!!」
エニシダの言葉にサトシは力強く頷いた。
ポケモンコーディネーターではないが、イッシュにポケモンコーディネーターという職を広げたいという狙いもあってのことだったので、サトシにお願いしたのだが、快く応じてくれた。
「俺はポケモンコーディネーターではありません。
だから、俺の魅せるパフォーマンスは本物のコーディネーターの人たちからしたら、全然ですけど、少しでも興味もってもらえたら嬉しいです!
ドダイトス、ムクホーク!
君に決めた!!」
「ドダー!!」
「ムクホー!!」
サトシがモンスターボールを宙に放つ。
そこから登場したポケモンたちは、気合十分な様子だ。
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