10
「いくよ、ルカリオ!!
“シャドーボール”!!」
「わうっ!!」
「ピカチュウ!“エレキボール”!!」
「ピカッ!」
バトル開始早々、それぞれが技の指示を飛ばす。
ピカチュウとルカリオの攻撃はぶつかり合い、爆発し、大きな砂煙がたった。
「ルカリオ、波動でピカチュウの位置を感じ取るんだ!
“インファイト”!!」
「わうっ!」
「そう簡単にいかせないぜ!!
ピカチュウ!!
カウンターシールド!!
ルカリオを近付かせるな!」
「ぴっか!ぴかちゅ!」
「……ッ!!
ルカリオ!一度、下がって!」
「わふ!」
煙で見えない今が攻撃のチャンスと指示を飛ばしたキョウヘイ。
けれど、サトシとて何もせずにその攻撃を受けるつもりなどない。
ピカチュウにカウンターシールドの指示をした。
ピカチュウを中心に電気がバチバチと散り、ルカリオは素早く距離をとった。
少しでも距離を取るのが遅かったら、電気にあてられ、最悪の場合は麻痺してしまう可能性もあった。
だから、一度下がるように指示をしたキョウヘイ。
「…下手に近付くとカウンターシールドにやられる可能性があるんだったら…、ルカリオ!
“じしん”!!!」
近距離攻撃がダメなら遠距離攻撃。
そう考えたキョウヘイが指示したのはピカチュウからしたら弱点の攻撃技だ。
更にルカリオはよく育てられているのか、その攻撃技の威力も高い。
もともと威力の高い攻撃だけに、くらえばタダではすまない。
「ピカチュウ!!
岩を使って空に飛べ!」
「ピッカァ!」
どうするつもりなのかと誰もが見守る中、サトシはフィールドを利用して空へ逃げることを選んだ。
ただのノーマルフィールドであれば難しかっただろう。
だが、カビゴンの攻撃でフィールドは原型をとどめておらず、小さな岩が辺りに散乱していた。
ピカチュウはそれをうまく、そして素早く使い、空中へ飛んだ。
「ルカリオ!避けられない今がチャンスだ!
“はどうだん”!!」
「避けられないけど、相殺は出来るぜ!
ピカチュウ!“エレキボール”!」
キョウヘイの狙いは“じしん”を当てることではなかった。
サトシを知っているからこそ、きっと避けるだろうと思っていた。
だからこそ、キョウヘイは“じしん”をフェイクに使った。
効果抜群の攻撃を避けるためには空中に逃げるしかない。
仮にピカチュウが地面に潜れたとしても、“じしん”は地中にいても当たる攻撃。
ならば逃げ場は空中しかない。
そしてサトシもキョウヘイがそう出ることを予想していた。
空中という不安定な態勢での指示だが、ピカチュウなら応えてくれると信じているサトシは迷うことなく指示を飛ばす。
そしてピカチュウもその信頼に裏切ることなく応えた。
再び、ピカチュウとルカリオの攻撃はぶつかり合い、大きな轟音と共に煙が舞った。
「サトシさん、僕のルカリオの“はどうだん”は一発だけじゃないですよ!」
「えっ?」
煙がもうもうと舞う中、キョウヘイはそう言った。
そしてサトシはその言葉の意味をすぐに理解した。
「ピッカァ…っ!!」
「ピカチュウ!」
相殺したはずの“はどうだん”。
だが、ピカチュウが地面に着地した瞬間に再び飛んできたのは“はどうだん”だった。
攻撃を放った後は多かれ少なかれ、次の攻撃に転じるのに時間が必要になる。
だが、ルカリオからはその時間をまるで感じなかったのだ。
さすがのサトシもこれには驚いた。
「驚きました?
ルカリオは右手と左手、それぞれにエネルギーを同時に込められるんです。
だから、僕のルカリオの“はどうだん”は一発だけでなく、二発放てます。」
「…そんなことが出来るのか…。」
キョウヘイの言葉にサトシはただ驚いた。
ポケモンにも人間と同じように利き手というものがある。
だからこそ、両手で同じように力を込めることなんてこと、なかなか出来る所業ではない。
まして技となれば余計に。
「ルカリオとのバトル、サトシさんに勝ちます!」
「俺だって負けないぜ!
ピカチュウは俺が旅に出た時からずっと一緒に旅をしてくれた一番の相棒なんだ。
俺たちだっていろんなバトルスタイルを身につけてきたんだ。
俺たちはそれをぶつけて、必ず勝つ!!」
互いに強い相手を前に更に闘志を燃やした。
負けたくない。
勝ちたい。
そんな思いが互いの心を支配した。
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