09
「「………。」」
互いの技がぶつかり合い、大きな衝撃と煙に包まれるフィールド。
もうもうとする煙が晴れた頃、ヨルノズクとジャローダは互いに地に伏していた。
『ヨルノズク、ジャローダ、共に戦闘不能!』
エニシダが判定の声を上げる。
「…やっぱりサトシさん、スゴイです。」
「いや、キョウヘイ…、強いよ。
…“ハードプラント”を囮に使われたのが痛かったな…。」
はははと笑うサトシ。
相性でいえばヨルノズクの方が有利だったのだ。
だけど、“やどりぎのタネ”と“みがわり”でじわじわと、だが確実にヨルノズクの体力は奪われてしまった。
時間をかけすぎてしまったのはサトシの判断ミスだ。
「このバトル大会に参加して本当に良かったよ。
まだまだ俺の知らないバトルがたくさんあるって改めて知ることが出来た。」
「…僕、サトシさんに本当に憧れて、参考にさせてもらったところもたくさんあります。
今回のジャローダの囮攻撃もサトシさんの意表を突く攻撃を参考にさせてもらったんです。」
「…俺のバトルが参考になったなんて言ってもらえるなんて、なんか嬉しいけど照れ臭いな…。
……キョウヘイ。」
「はい。」
サトシに呼ばれ、キョウヘイは頷く。
皆まで言わずとも分かっているから。
「ルカリオ、最後は君だ!頼むよ!」
「わふっ!!」
「相手にとって不足なしだ!
行くぞ!ピカチュウ!」
「ぴっかー!」
キョウヘイに拳を突き出され、コツンと付き合わせたあとフィールドに降り立ったルカリオ。
そして、サトシと視線を合わせ力強く頷き合いフィールドに立つピカチュウ。
どちらも最も信頼し、親友で相棒と呼べるポケモン同士となれば気合いもこれまでの比ではない。
観客も、そしてエニシダやシューティーたちもその空気にごくりと唾を飲み込んだ。
泣いても笑ってもこれが最後のバトル。
「悔いのないバトルにしようぜ、キョウヘイ!!」
「もちろんです!!」
サトシとの最後のバトルが今まさに始まろうとしている。
最初にサトシと対峙する形でフィールドに立った時はただ緊張して、感動して。
ただ興奮するだけだったキョウヘイ。
けれど、今は違う。
ポケモントレーナーとしてこうして対峙し、勝ちたいと思った。
憧れの人に勝ちたいなんて思うこと自体、おこがましいのかもしれないけれど。
目標とする人だから、負けたくないとも思った。
サトシとピカチュウの絆は強い。
言葉だけでなく、心で通じ合っているから。
だから、そんなサトシとピカチュウに勝つためにはそれ以上の絆で以って挑まなければすぐに呑まれ、負けてしまう。
「ルカリオ。」
「わう。わっふ!」
「うん。
…僕たちのもてる全てをサトシさんとピカチュウにぶつけよう。
そして、勝つぞ!」
「わうっ!!」
「ピカチュウ。
…俺さ、今…すっごくわくわくしてる。
…ピカチュウ、それはきっとお前もだろ?」
「ぴか!」
「俺たちの強さ、このバトルに込めるぞ!」
「ぴっかちゅ!!」
サトシの言葉に力強く頷いたピカチュウはルカリオを見つめながら戦闘態勢をとった。
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