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「シューティー、サトシとのバトルはどうだった?」
控え室に戻ってきたシューティー。
どこかスッキリした表情を浮かべていたシューティーにデントが、そう問いかけた。
「…自分の視野がどれほど狭かったのか、ようやく理解出来ました。
それに、本当に悔しいです。
……僕にはポケモンとあそこまで深い絆を結ぶことなんて出来ない…。
進化もしていないのに、あんな強さを手にすることが出来るなんて知らなかった。
進化をしてないのに…サトシのポケモンはみんな強かった。
サトシは自分のポケモンたちの実力を心の底から信じている。
そしてポケモンたちもサトシの期待に応え、互いに何を望んでいるのかを理解して、サトシの予想もつかない指示も信頼しているからこそ戸惑うことなく聞いて、こっちの度肝を抜いてくる…。
進化が全てだ、基本が全てだと思っていた僕の考えを根底から覆させるバトルでした。
あんなバトルがあるのかと驚かされてばかりでした。
…でも、次は必ず勝ちます!!」
「そう。
シューティーもサトシとバトルして、何かを感じ取れたんだね。」
「はい。」
「シューさん…!
どうでした!?サトシさんのバトル、本当にすばらしいと思いませんでした!?
サトシさんって本当に素敵なトレーナーですよね!!」
サトシの実力を認める返答に我を忘れた様子のキョウヘイが瞳をキラキラさせながら、興奮をおさえることなくシューティーに話しかけた。
「……キョウヘイ。
君の言う通りだった。
今ならサトシが普通なら知られたくないような負け方をしたというのに、僕達に語ってみせた理由がよく分かるよ。
強くなるために、挫折も受け入れて、乗り越えてきたからこそ、語ってみせることが出来たんだと…今なら分かる。
少しでも恥ずかしいと思っていたのなら話さなかっただろうしね。
…君がサトシに憧れているというのも…分かるよ。
本当に理屈じゃないね、サトシは。」
「……え?
あ…え、は、はい…。
はええ?え?ええ?
そう、ですね…。
…あれ?幻聴?
ま、まさかシューさんからそんな耳を疑う言葉が飛び出すなんて…。
えーっと…?
はっ!!分かった!
も、もしかして…シューさん、何か変なものでも食べました?
ま、まま…まさか!!
腐ったシュークリームでも食べたとか!?
だ、大丈夫ですか!?
すぐに病院に行って診てもらった方がよくないですか!?
僕、良かったら付き添いますよ!?
今すぐ病院に行きましょう!シューさん!!」
「…君も本当に失礼だな…。
だけどその発言も、我を忘れた時にしてるんだってことも分かったからか、そんなに腹も立たないんだ。
本当に不思議だよ。
負けても得られるものがあるんだって知ったからかもしれないけど…。
次は君のバトルだろう?
君のバトルも楽しみにしてるよ。
それと、今更だけど敬語とかなしでいいし、シューティーでいいよ。
年も変わらないし、君の見る目は本物だった。
そういう意味では君のことも尊敬できる人物だしね。」
「はえ?ええ?
え、あ…は、はい…。
あ、じゃなくて、うん。
き、恐縮です…じゃなくて恐縮だよ。
あ、じゃあ…行ってきますでございます…。」
激変したシューティーにひどく戸惑うキョウヘイは、妙に落ち着かない様子でフィールドへと向かった。
そのあとに続くルカリオが『落ち着け、キョウヘイ。』と言わんばかりに肩をポンポン叩いている。
「…キョウヘイ、めちゃくちゃ戸惑ってたわね…。」
「あはは…。
まあ、僕達の目から見てもシューティーは激変しすぎじゃないかなって思うくらいだから…キョウヘイなんてもっと強く感じてるんじゃないかな…?」
「…サトシとバトルしたシューティーだからこそ感じられた何かがあるんじゃないか?」
「…進化してないポケモンだけでバトルするってなると、バランスなんてガタガタになるし、フルバトルになんてなったら、大きく影響するわ。
それでも全勝したサトシの実力は本物だってことよね。」
「…現に、みずタイプのポケモンたちばかりになってたしね。
…あれじゃ、サトシの方が圧倒的に不利よ。
それでも勝ったんだから…悔しいけどラングレーの言う通り、サトシの実力は相当なものだってことね。」
「特にフシギダネの“ソーラービーム”はスゴかったよ…。
あれが進化をしてないポケモンの技だと言われても信じられないほどのものだったよ。」
「ブイゼルの氷の“アクアジェット”もカウンターシールドもな!」
「ええ?
フカマルの間欠泉式“りゅうのはどう”の方がスゴかったわよ!」
「いや、ヘイガニのあの強力すぎる“クラブハンマー”の威力も相当なものだったよ!
混乱させると酔っ払いになるポケモンなんて初めて見た!」
「ゼニガメの“ハイドロポンプ”…いや、あれは“ハイドロカノン”と呼んでもいいあの攻撃も忘れちゃいけないと思うよ?」
「えー…?
ワニノコちゃんのダンスもとっても可愛かったじゃない!
あんな風にくるくる楽しそうに躍りながら避けるなんてとってもスゴイもの!
あーん!サトシくん、どの子か交換してくれないかなー?」
「…まだ、諦めてなかったのかよ…?」
それぞれが感想を口にする中、ベルだけは相変わらずマイペースな発言をして、馴染みのメンバーたちから苦笑された。
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