08
「何を話しても君には意味がないことは理解したよ。
だったら、バトルでそれを証明するだけだ!
いくぞ、ジャローダ!“ドラゴンテール”!!」
「フシギダネ、“つるのムチ”。」
シューティーの言葉に会場の全員に、何を話しても意味がないのはお前だ!と心中で激しくツッコミを入れられているのだが…そのことに気付かず、シューティーは指示を飛ばした。
対するサトシは真剣な表情はそのままにフシギダネに“つるのムチ”を指示する。
フシギダネはサトシの意図を正確に読み取り、ジャローダの尻尾に“つるのムチ”を巻き付け、こちらに向かって跳んできていたジャローダを地面に叩き付けた。
体格差では圧倒的にフシギダネの方が劣る。
だが、フシギダネはジャローダがこちらに向かってくる勢いを逆に利用して見せたのだ。
攻撃を防がれただけでなく、攻撃までしてきたフシギダネをシューティーは気にくわないと言わんばかりの表情を浮かべて睨み付ける。
だが、いつもオーキド研究所で様々な問題を解決し、リーダーシップをとるフシギダネからすれば、シューティーに睨み付けられようが気にもならない。
ため息をつき、ゆるゆると首を左右に振ったあと、白けた視線を向けた。
「フン!ずいぶんと生意気そうなポケモンだ。
たかだか攻撃を一度防いだくらいでいい気にならないでくれよ!
ジャローダ!“まきつく”攻撃!!」
「ジャロー!」
「“つるのムチ”で飛んで避けろ!
…フシギダネ。」
「ダネー!」
サトシの指示に従い、“つるのムチ”で上空へと飛んだフシギダネ。
だが、ただ避けるだけのフシギダネではない。
サトシに名前を呼ばれたフシギダネは、空中という不安定な状態であるにも関わらず、“ねむりごな”を放った。
“まきつく”攻撃を避けられ、一瞬できた隙をサトシとフシギダネは見逃さなかった。
「マズイ!ジャローダ!避けろ!」
「フシギダネの攻撃を甘く見るなよ!
フシギダネ!そのまま空中で回れ!」
「ダーネ!」
“ねむりごな”をくらったらマズイと慌てて避けるように言ったシューティーだったが、サトシは冷静に対応してみせた。
空中でフシギダネは仰向けになると、器用にその体を回転させた。
フシギダネの“ねむりごな”は、フィールド全体をほとんど埋め尽くした。
この攻撃を前にジャローダは眠ってしまった。
「君、ポケモンとどんな関係を築いてるのか、知らないけど…少なくともそのフシギダネにはナメられているようだね?」
「どういう意味だ?」
「今の攻撃…“ねむりごな”を君は指示していない。
名前を呼んだだけだ。
つまり、“ねむりごな”はフシギダネの独断で放たれた攻撃だ。
君の指示を聞くより自分で考えて技を使った方がいいからだとフシギダネが考えているからだろう?」
「ダネー…ダネェ…。」
シューティーの自信満々なそのセリフにフシギダネは「はあ?何言ってんの?」と言わんばかりの視線を向けた。
「フシギダネは俺のことをナメてるとか下に見てるから“ねむりごな”を使った訳じゃない。
シューティー。
俺とフシギダネの絆を甘く見るなよ。」
シューティーの言葉にサトシも不機嫌そうな表情を浮かべて言葉を返した。
「フシギダネはピカチュウと同じくらい付き合いの長いポケモンだ。
だから、俺がどんなことを望んでいるのか、言葉にしなくても理解してくれる。
言葉だけじゃないんだ、俺たちの関係は。」
「ダネ!」
サトシの言葉にフシギダネも強く頷いた。
付き合いが長い分、サトシの考えも読み取ることなんて造作もないのだ。
フシギダネはサトシが次の技の指示を飛ばす前に“サトシならこうするだろう”と考えて攻撃したのだ。
もしかしたら俺の指示もなく勝手に技を放つなというトレーナーもいるだろう。
そうなればポケモンの意思は尊重されることは難しい。
だが、フシギダネは信頼している。
サトシなら自分の意思を尊重してくれると。
だからこそ、今…自分は“フシギダネのまま”でいられるのだから。
サトシはフシギダネならば何を伝えたいのか理解してくれるだろうと心から信頼し、フシギダネはサトシならこうするだろうと予め予想して技を放った。
それこそ計り知れない信頼関係のなせる技なのだということに気付かないシューティーは眉を寄せるばかりだ。
「フシギダネ、見せてやろうぜ。
進化なんかしなくたってつよくなれるんだってことを。
そしてそれがお前なら出来るって俺は信じてる!」
「ダネフッシ!」
「行くぞ、フシギダネ!!
“ソーラービーム”!!」
「ダネダネダネダネー!」
「…ッ、マズイ!!
ジャローダ!起きろ!起きるんだ!」
フシギダネの“ねむりごな”で眠ってしまっているジャローダ。
無防備な状態で攻撃をくらうような真似は避けねばとジャローダに呼び掛けるが、起きる様子はない。
そしてその間にソーラーパワーをたっぷりためたフシギダネは“ソーラービーム”を発射した。
- 48 -
[
*前
] | [
次#
]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -