07
「フカマル、ありがとう。
ゆっくり休んでくれ。
フシギダネ、君に決めた!!」
フカマルに労いの言葉をかけたあと、サトシが繰り出したのはフシギダネ。
それを見たシューティーは不機嫌そうに眉を寄せた。
「僕のジャローダの相手がそんな見るからに弱そうなポケモン?
バカにしてるのか?」
「シューティー。
お前は何を見てフシギダネを弱いと決めつけるんだ?
見た目か?進化してないからか?」
「そんなの、両方に決まってるだろ。
見た目からして大した実力があるとも思えない。
進化させれば別かもしれないが…、進化もさせてないポケモンの強さなんてタカが知れてるよ。」
「…シューティー。
基本に凝り固まってたら、それ以上の発見はないぜ。」
「好きなだけ喚けばいいさ。
僕のジャローダは強い。
あとで後悔するのは君だ!!」
そんなやり取りを見ていたキョウヘイは死んだような…濁った目でシューティーを見た。
なにあの人。
本当に何も分かってなかったの?
カケラも理解してないの?
というか、喚いてるのは、むしろ貴方では?
すでに敗けが確定して恥を晒してるようなものなのに、更に恥を晒すって…頭、大丈夫?
サトシさんの言葉やこれまでのバトルを見て、なんでそんな言葉が出るのか理解に苦しむんだけど?
えっと…、今までのバトルの何を見て来たの?
しかも今のところ全敗してるくせに、何?
あの自信。
どっから来るの?え?これって僕がおかしいの?
僕の頭がおかしいの?
憧れのサトシさんを前に僕の思考能力が一気に低下したとかそんな理由なら頷けるけど…。
え?ええ?
そっか!きっとこれは最後のバトルを更に面白い目で見られるように僕の妄想か何かが作り出した幻覚と幻聴なんだ!きっとそうに違いない!
でなければ、あんな見るからに痛い発言するはずがないよ、うん!
って、そうなると僕の頭も相当ヤバいというか…終わってるってことになるの!?
ああああああーっ!!
どうしたらマトモな思考回路って手に入りますか?
どうしたらいいんだーっ!?
これ以上、世界一…いや!宇宙一尊敬してるサトシさんを前に醜態を晒すわけにはいかない!
あっ!でもきっとサトシさんを生で見られて話せて興奮してる僕のことだ。
とっくに目も当てられないほど醜態を晒してるに違いない!
ど、どどどど、どうしようっ!?
…キョウヘイはただ混乱していた。
あそこまで自信ありげにサトシを見て笑うシューティーの異質さに戸惑うなという方が無理なのだろうが、あそこまで異質な人間に会ったことがないだけにキョウヘイは自分の頭がおかしくなったのだと思ってしまった。
が、それはキョウヘイだけではなかった。
「本当におめでたい頭してるわね!
あそこまでバトルして、まだサトシのことを格下に見てるって…ただのアホでしょ?」
「…私だってサトシの強さは本物だってこと、理解はしてるつもりよ?」
「シューティーくんの頭に花でも咲いてるのかな?」
「俺もさすがにフォローする気が全く起きないぜ…。」
「シューティーは自分はとても実力のあるトレーナーだと信じて疑ってないみたいだからね。
…自分を信じるということは大切だと思うけど…ちょっと自分のことを過大評価しすぎかなーとは思うよ。」
「あれはちょっととは言わないわよ、デント!!」
「…映画にするにしてもシューティーのセリフはカットしよう。」
自信満々なシューティーに控え室にいる馴染みメンバーは白けた視線を向けた。
実力があるかないかで考えるならシューティーは実力があるトレーナーだとは思う。
だが、それもサトシのような真に実力のあるトレーナーを前にすれば霞んで消えてなくなるような些細なものだ。
サトシのこれまでのバトルを見て、その実力を正しく理解していればシューティーのあの発言は絶対に出ないだろう。
過大評価しているからこそ出る発言だ。
それを誰もが理解してるからこそシューティーに対する視線が冷たくなるのはもはや、必然だ。
そしてそんなデントたちを見たキョウヘイは僕がおかしかったわけじゃないのか…、良かった…と胸を撫で下ろしていたことを知っているのはルカリオだけだった。
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