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「カベルネ、お疲れ様。」
「…なによ…!あんなに強いなんて…おかしいじゃない…!!
詐欺よ…!詐欺でしかないわよ!!あんまりよ!
オオスバメだってあんなに強かったの!?
信じられない…!!」
シューティーと入れ替わるように控え室に戻ってきたカベルネ。
デントに労いの言葉をかけられるも、いつものように反抗してくることはなく…、手も足も出ないバトルとなってしまい、その結果をまだ完全に受け止められずにいるようだ。
「…けど、…バトルして分かったわ…。
私はまだまだなんだってことも、サトシの実力も。
…圧倒的にこっちが有利だったのに…それをものともしないなんて…。
…しかも目で合図するだけで伝わるとか…天候をうまく利用するなんて考え…、浮かびもしなかった…。
あんな柔軟な指示に応えるポケモンたちだって…見たことないわ…。
なによ…!あんなバトル…勝てるはずがないじゃない…っ!!
勝つために条件だってつけたのに…!
この私が手も足もでないまま負けるなんて…。
…悔しい…!本当に悔しい…っ!!」
「サトシとサトシのポケモンたちが築いてきたものは、今の僕たちでは到底及ばないほど深く、味わいのあるテイストだ。
…キョウヘイのように、サトシを目標とするトレーナーがいても不思議じゃないよ。」
「イッシュにはないですけど、他の地方では密かにサトシさんのファンクラブがありますしね。」
「えっ!?」
「ファンクラブ!?」
カベルネとデントが言葉を交わしあう中、キョウヘイは何の前触れもなく大きな爆弾を落としてきた。
驚くデントたちに、キョウヘイは不思議そうに目を瞬かせながら首を傾げた。
「えっ?そんなに驚くこと?」と、言わんばかりだ。
「サトシさん、大きな大会から小さな大会までいろんな地で好成績をおさめてますし、最初にサトシさんが見せてくれたパフォーマンスの大会にも出場してコーディネーターでもないのに、好成績を残してますよ?
だから最初にパフォーマンスを見せてくれたんですよ。
パフォーマンスは一朝一夕に出来るようなものではないですし、ポケモンと息があってなければ成功することもないって聞いたことがあります。
…これは本当にファンの中のファンにしか知られてませんけど…各地で、悪事を働く人たちからポケモンや、人を助けたって話もあるんですよ。
時々、雑誌やテレビなんかでも取り上げられてますよ。
ジムリーダーやチャンピオンや四天王が、一目おくトレーナーなんて記事もあったくらいですし。」
本当に素敵な人ですよね…!とうっとりするキョウヘイ。
だが、キョウヘイの口から語られた話を聞いたデントたちはフリーズするしかなかった。
実はサトシって本当にスゴイ…否、スゴすぎるトレーナーだったんだ!!と今まで以上に痛感した。
「あ、でもサトシさんのあの様子だと自分が有名人だってことを知らないみたいなので、サトシさんに詰め寄るようなことしないでくださいね?
サトシさんってマサラタウンに帰ってもすぐに旅に出るからインタビューも出来ない…なんて書かれた記事もあったので、まさか自分が雑誌とかに取り上げられてるなんて思いもしないんじゃないかなって思いますしね!
知りたければ他の地方のマスコミとかに問い合わせてみてください。」
サトシのことだ。
自分が有名だと知ったら慌てふためいて、「絶対に俺のことじゃないと思う!!」と言うに決まっている。
そして、さすがというべきか。
サトシに強く憧れていると言葉や態度で示しているキョウヘイはどこでその情報を仕入れてきたのか、ずいぶんサトシのことについて詳しい。
本人が知らない情報まで知っているとなると、もう言葉が出なくなる勢いだ。
そして、キョウヘイの言う通りだろうと、デントたちも自然に思えた。
大会のことは別にしても、訪れた地で事件解決に貢献していることに関しては当たり前のことをしているだけだと思っているだろうから。
「…言わないわよ。
サトシはサトシでしょ。
…今回のバトルで私はもっとポケモンソムリエールとして実力をつけてポケモンたちとも、もっとフレンドリーになって目で合図しただけで伝わるレベルにまで到達してみせるっていう目標が出来たんだから!!
もっと強くなって、ぎゃふんと言わせてやるんだから!!
サトシ以上にフレンドリーな関係を築いてやるんだからっ!
見てなさいよ!!」
『打倒!デント』から『打倒!サトシとデント!』へと目標を少しだけ変えたカベルネ。
そしてその言葉に他の面々も同じように頷いた。
サトシと仲良くなったのは有名だからではない。
サトシという人間が好きだからだ。
有名であろうとそうでなかろうと、サトシが大切な仲間であることに変わりはないとデントたちは強く思った。
そしてこれから始まるバトルを観戦するために、バトルフィールドへと視線を向けたのだった。
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