06
『ケンホロウ、戦闘不能!
フロンティアブレーン、4勝のため、この勝負…フロンティアブレーンの勝ち!』
「待ってください!!」
サトシが4勝したのでシューティーの勝利はなくなった。
そのため、エニシダがシューティーとのバトルの終了をコールすると、シューティーが声をあげた。
突然、声をあげられ、エニシダは「おや?」と呟いたあと、首を傾げた。
「…僕の勝ちはなくなりました。
だけど、僕が申し込んだのはフルバトル。
最後まで戦わせてください。
このまま、終われません!」
『こちらは構わないけど…それはサトシくん次第かな。
サトシくんも連戦で疲れてるだろうし…どうする、サトシくん?』
「もちろん、続けさせてください!!」
エニシダにどうするか問われたサトシは迷うことなくバトル続行を了承した。
エニシダもサトシがそう言うだろうと予想していたのか、苦笑しながらも「分かった。」と頷いた。
「ヘイガニ、お疲れさま。
ゆっくり休んでくれ。」
「ヘーイ♪」
サトシに労いの言葉をかけられたヘイガニは満足そうに笑いながら頷いた。
「サトシ。
ここからのバトルはフィールドを変えてもらいたい。
水のフィールドよりもノーマルフィールドの方が戦略も練りやすい。
こういうフィールドこそ、基本がどれだけ大切なんだということが分かるだろう?」
「わかった。
エニシダさん、フィールドチェンジでお願いしてもいいですか?」
「いいのかい?」
「はい!」
エニシダに確認のために問われ、サトシは力強く頷いた。
「サトシ…、絶対にこのままでは終わらせない!!
君のような基本がなってないトレーナーに一勝も出来ないまま負けるなんて…汚点でしかない!!
シャンデラ!絶対に勝つぞ!」
「デラァ!」
「フカマル!君に決めた!!」
「カフカフ♪」
悔しそうなシューティーと純粋にバトルを楽しむサトシ。
次のバトルはフカマルVSシャンデラとなった。
「フカマルはどんな技を覚えているか、把握している。
今まで通り自分の優勢で進められると思わないでくれよ!!」
何度か登場したフカマルが次の相手と分かるとシューティーは勝てるとふんだのか、余裕のある笑みを浮かべてきた。
「フカマル、お前なら勝てる!
けど、バトルはどんな展開を迎えてもおかしくない。
油断するなよ。」
「カフカフッ!」
サトシの言葉にフカマルはこくこくと頷いてみせた。
「このまま連勝なんてさせるものか!
行くぞ、シャンデラ!
“かえんほうしゃ”!!」
「“りゅうのはどう”!!」
互いに攻撃技を指示するところから始まった。
シューティー自身、何度かフカマルのバトルを観戦しているとはいえ、今のところ全敗しているからか少し警戒しているようだ。
シャンデラとフカマルの攻撃がぶつかり合い、フィールドに爆発音が響き渡り、そのあとに煙が辺りを覆い尽くした。
「煙が晴れたらすぐに攻撃する。
シャンデラ、攻撃に備えていてくれ!」
「シャン!」
「フカマル!“あなをほる”!!」
「カーフッ!」
煙で全く周りが見えない現状では満足に攻撃をあてることも出来ないだろうと考えたシューティーは煙が晴れると同時に攻撃に転じるつもりだった。
サトシも同じ状況ならば同じことを考えているだろうと考えたシューティー。
しかし、サトシは煙で周りが全く見えていないのにも関わらず技の指示をとばしてきた。
何度目かも分からない予想を裏切るサトシの行動にシューティーはどうするつもりだと、眉間にシワを寄せた。
煙でシャンデラもフカマルも、サトシも見えない。
それはサトシとて同じはず。
闇雲に指示をとばせばいいものではないことくらいサトシとて分かっているはず。
「フカマル!そのままフィールド内を掘り進むんだ!」
「一体何を…?」
「カーフー!」
サトシの言葉から察するに、地中を掘り進んでいるだろうことは分かる。
しかしそんなことをして何になるというのか?
シューティーにはサトシの狙いが皆目検討もつかなかった。
そして、フカマルがサトシの指示通りにしている間に煙は晴れ、視界もクリアになってきた。
「サトシ、君が何をするつもりかは分からない。
だけど、それを待つつもりはない。
地中を繋げてしまったのは失敗だったな。
シャンデラ!穴の中に“かえんほうしゃ”!!」
「そうくると思ったぜ!!
フカマル!穴の中で“りゅうのはどう”!!全力で行けー!」
「なんだと!?」
何を狙っているかは、分からないがそれを待ってやるほど自分はお人好しじゃないとシャンデラに攻撃の指示をとばしたシューティー。
だが、サトシはそんなシューティーの行動を予想していたようで、動揺することもなく、次なる指示をとばした。
「シャ…デラァ!」
「シャンデラ!!
…ウソだろ…。」
シューティーは我が目を疑った。
フカマルの“りゅうのはどう”が地中から空に向かって立ち上がっていたのだ。
間欠泉のように勢いよく空に立ち上がるフカマルの攻撃。
シャンデラは攻撃するために穴の中に顔を突っ込んでいたため、その攻撃をまともに受けた。
もともとフカマルの攻撃は強力ではあったが、今回の攻撃技は今までの比ではなかった。
シャンデラも耐えられず、戦闘不能に陥ってしまった。
「……!!
そうか!!サトシの狙いが分かったわ!!」
「アイリス、サトシの狙いが分かったってどういうこと?」
「サトシがフカマルに穴の中を掘り進めるように言っていたのは、シャンデラを穴の中に誘い込むため。
それと、“りゅうのはどう”の威力をあげるためだったのよ。」
「どういうことだ?」
ルークの問いかけにアイリスは驚きながらも、説明してみせた。
次いで、ケニヤンが更に詳しい説明を求めてきた。
「ただ、攻撃を放つより、穴の中で放った方が空間が限られてる分、威力も増してくるはずよ。」
「凝縮された“りゅうのはどう”ということだね。」
「なるほど…。
穴の中という密閉された空間だったら威力があがるのは当たり前よね。」
デントとラングレーが感嘆の声を漏らした。
何もない状態での攻撃より凝縮された攻撃の方が威力が高くなるのは当然だ。
それだけでなく、誘い込んで強力になった攻撃を確実に当てるというのだから、驚きだ。
今の攻撃は1度、外してしまえば2度目は狙えなくなる。
一歩間違えばピンチになる可能性もあったのだが、そこはサトシとサトシのポケモンなだけあって、確実に命中させた。
「(なんでだ!?
…なんで、サトシに手も足も出ない!?
基本がまるで出来てないようなトレーナーのくせに…!なんで勝てないんだ!!)」
不意をついたつもりでも、結果的に不意をつかれるような展開に持ち込まれ、攻撃を少しもあてられずに次々と戦闘不能になる自分のポケモンたち。
それが自分より弱いと思っているサトシが相手だからこそ信じられない気持ちでいっぱいだった。
「最後のバトルは絶対に勝つ…!!
ジャローダ!頼む!!」
受け止めきれない現実に強く躊躇いながらもシューティーは相棒たるポケモン…ジャローダを繰り出した。
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