02
「今度はこっちから行くぜ!
ゼニガメ!“こうそくスピン”!!」
「ガメガー!」
驚きを隠しきれない様子のシューティーに対し、サトシは攻撃をしかけた。
サトシの技のチョイスにシューティーは深いため息をついた。
「ゴーストタイプをもつブルンゲルにノーマルタイプの攻撃があたるはずがないだろ?
そんなこと基本も知らないのか?」
「そんなこと、分かってるさ!
ゼニガメ!
そのまま、ブルンゲルの背後に回り込んで“ハイドロポンプ”!!」
「なにっ!?」
サトシの狙いが何かを理解したシューティーは狼狽えた。
サトシが“こうそくスピン”を指示したのは攻撃のためではなく、すばやくブルンゲルの背後に回り込むためだったのだ。
“みずでっぽう”でも威力の高かった攻撃を放ったゼニガメの“ハイドロポンプ”は予想以上の威力をもつことはイヤでも分かる。
だが、みずタイプの攻撃であることに変わりはない。
さすがに戦闘不能にまで追い込まれることはないと思ったシューティーは、ブルンゲルに攻撃をあててきた瞬間に攻撃をすればいいと考えた。
…しかし、それは無意味となった。
「ブ…ル…!!」
『ブルンゲル、戦闘不能!
ゼニガメの勝ち!!』
ブルンゲルはゼニガメの“ハイドロポンプ”に耐えられず、バタリと倒れた。
「ウソ…だろ…?
いくら威力が高いとはいえ…みずタイプの攻撃で負けるなんて…!」
まさか“ハイドロポンプ”に耐えられずに戦闘不能になるとは予想もしていなかったシューティーはただ、驚いた。
「シューさん、分かってないみたいですね。
“こうそくスピン”はただ、ブルンゲルの背後をとるためだけに指示した訳じゃないってことを。」
「えっ?えっ?どういうこと?」
キョウヘイの言葉にベルは首を傾げながら問い掛けた。
その問い掛けにキョウヘイはサトシとゼニガメを見つめたまま口を開いた。
「サトシさんのゼニガメの“ハイドロポンプ”は殻にこもって回転しながら放ってましたよね?
あれは“こうそくスピン”と同じ動きです。」
「あ、なるほど!!
動きが同じだからこそ、“こうそくスピン”でスピードもあげられるし、“ハイドロポンプ”の威力もあげられるってことだね!
…背後に回り込むだけでなく、威力をあげるための“こうそくスピン”だなんて…予想もしていなかったよ。」
キョウヘイの言葉にデントがポンと、手をたたきキョウヘイの言わんとしていることを理解したのか、そう言った。
高速でスピンしながら背後に迫り、更にそのまま“ハイドロポンプ”を使う。
下手をしたらあの攻撃は“ハイドロカノン”よりも威力をもっていたのではないかとさえ思える。
無防備な状態で、更に背後からの攻撃で威力を2倍以上にあげ、至近距離であてられれば、いくら効果はいまひとつの攻撃とはいえ耐えられるかどうか問われれば微妙なところだろう。
ゼニガメは消防団として働いていて、いかに迅速に対応して消火するべきかを考え、逃げ遅れた人がいれば救助をするという命に関わる仕事についている。
そんな環境の中にいるからこそ、ゼニガメは日に日に強くなっていく。
そんな事情を知らずとも“みずでっぽう”の威力の高さを目の当たりにしている分、進化こそしていないが、レベルの高さを感じることなど容易い。
“みずのはどう”を“みずでっぽう”で相殺された時に気付いていればバトル展開は変わったかもしれないが、シューティーはサトシのことをレベルが低いトレーナーだと見下している。
あれでは気付けるはずもないだろう。
悔しそうにブルンゲルをモンスターボールに戻したシューティー。
「…こんなの、まぐれに決まってる!
たまたま初戦で勝てたからって次もこうだと思うなよ、サトシ!
バイバニラ!次は君だ!!」
悔しそうにしながシューティーが次に繰り出したのはバイバニラだった。
「ゼニガメ、ありがとう。
ゆっくり、休んでてくれ。」
「ゼニ♪」
サトシに労いの言葉をかけられ、ゼニガメはにっこり笑って頷く。
そして愛用のサングラスをかけて、ゼニガメはシューティーの方へ視線を向け、得意気に笑った。
ゼニガメのその態度にシューティーは不満を露に睨み付けた。
ゼニガメをモンスターボールに戻したあと、サトシはもう一度「ありがとう。」と言葉をかけたあと、別のモンスターボールを取り出した。
「ブイゼル!君に決めたっ!!」
「ブブイ!」
サトシが次に繰り出したのはブイゼルだった。
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