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「くう…っ!!
おかしいわ!こんなはずじゃ…!
私がデントより弱いって言うの!?
そんなことあるはずないわ!
サトシ!!勝った気でいるんじゃないわよ!?
バトルは最後までどうなるか分からないものなんだから!
アンタのオオスバメもジュカインもこの子に一発KOされちゃえばいいのよ!
行くわよ、フタチマル!」
「フタッチー!!」
このままでは終われないと、カベルネは4体目のポケモン…、フタチマルを繰り出した。
フタチマルは、こおり技も覚えている以上、どうなるかは確かに分からない。
「俺とオオスバメの根性だってまだまだこんなものじゃ終わらないぜ!
オオスバメ!次のバトルも根性で勝つぞ!!」
「スッバア!!」
「その余裕がムカつくのよ!」
サトシとオオスバメのやり取りを見ていたカベルネは頭をかきむしりながらイラついている。
しかしサトシはそんなカベルネには目もくれず、オオスバメと目を合わせながら、バトルの集中力を高めている。
その姿はいつもの無駄に元気なサトシとは違っていて、本当に実力のあるトレーナーなんだと思わせてくれるものだ。
キョウヘイの言う通り、もうこのバトルの勝敗は決まったようなものだとデントとアイリスは密かに思った。
「フタチマル!“れいとうビーム”!」
「オオスバメ!急上昇!」
効果抜群の攻撃をあてて、さっさと終わらせようと考えたカベルネが“れいとうビーム”の指示を飛ばすも、オオスバメはサトシの指示により空へ飛び、急上昇することであっさり避けた。
「オオスバメ!一気に決めるぞ!!
最大パワーで“つばめがえし”!!」
「スッバー!」
「ふんっ!!
攻撃をあててくる前に“れいとうビーム”で撃ち落としてやるわよ!
フタチマル!“れいとうビーム”の射程範囲内に来たところをあてるのよ!」
「フタチー!」
攻撃力の高いオオスバメの攻撃を最大パワーでくらえば、タダではすまないことを察したカベルネは迎え撃つ体勢をとるよう指示した。
だが、カベルネもフタチマルもまだ気付いてなかった。
サトシとオオスバメはあるものを利用して、フタチマルが攻撃をあてにくくなるようにしていることを。
そして、それに気付いた時にはすでに遅いことにもまだ気付かずにいた。
「…フ、フタチャ!?」
「どうしたのよ、フタチマル!!」
「いっけー!!!」
「スーバー!!」
「フタァ…!!」
「ああ!!フタチマル!」
カベルネの指示通りにオオスバメが地上近くまで迫ってきた時に攻撃をあてようとしていたフタチマルは、途中で動揺したような声をあげた。
それに気付いたカベルネが声をかけるも、時すでに遅く…フタチマルはオオスバメの攻撃を受け身もとれずにまともにくらった。
『フタチマル、戦闘不能!!
フロンティア・ブレーン、サトシの勝ち!!』
『ワアアアアアーーッ!!』
エニシダがフタチマルの戦闘不能を告げると、会場に歓声がわきあがった。
「ちょっと!どういうこと!?
どうしてフタチマルは攻撃をあてなかったのよ!?」
「…あてなかったんじゃなくて、あてられなかったんだよ。」
「はあっ!?」
「オオスバメは太陽の光のせいでフタチマルからは姿が見えなかったと思うぜ。
オオスバメは太陽を背にフタチマルに迫ってたからな。」
「太陽!?そんなもの…普通は“ソーラービーム”とかでしか使わないものでしょ!!」
「確かに、ひこうタイプのオオスバメは技を放つ上で天候なんて利用する必要はない。
だけど、効果抜群の攻撃をあてられないための対策として使えるなら使っておくべきだろ?」
「…太陽の光を利用するなんて…っ!
なによ!そんなの聞いてないわよ!!」
「利用できるものは利用してバトルに挑むのも必要なことだぜ!」
「なによ!なによっ!
そのチャンピオンみたいなセリフは!!
実力者のコメントみたいなことするんじゃないわよ!!
…いいわ!ジュカインとオオスバメを次は絶対に打ち負かしてやるんだから!
覚悟して待ってなさいよ!!」
フンッ!と鼻息荒くずかずかと不機嫌そうに足音をあてて、立ち去っていったカベルネにサトシはオオスバメと顔を見合わせて…困ったように笑った。
「オオスバメ、ありがとう。
俺の考えてること、理解してくれたし、やっぱりオオスバメもスゴいなっ!」
「スバスバ。」
サトシの言葉にオオスバメはそれくらい朝飯前だと言わんばかりに頷いた。
『次の試合を始めます。
シューティー選手、バトルフィールドまでお越しください。』
エニシダに呼ばれ、シューティーはにやりと笑ったあと、キョウヘイの方へ視線を向けながら口を開いた。
「僕が間違っていないんだってことを、よくそこで見ていたらいい。
サトシのポケモンはあらかた出尽くしたようだし、ある程度のバトル構成も練った。
本当のバトルというものを見せてあげるよ。」
そう言うと、シューティーは控え室から出ていった。
「…あの人はさっきのサトシさんの話から本当に何も感じていなかったみたいですね…。」
「…そのようだね…。」
キョウヘイの言葉にデントもため息混じりに返事を返した。
シューティーはサトシが語った話から“サトシのレベルが低い”としか感じ取らなかったようだが、そうではない。
普通なら、あんなみっともないとさえ思われそうな経歴を知られれば、言い訳をしてしまいがちなものだ。
そして、ほとんどのトレーナーが隠してしまうだろう。
だが、サトシは違った。
自分に力が足りなかったからだと全てを受け止めて、次へ進むために努力してきた。
だからこそ、リザードンもサトシのことを認め、信頼しているのだ。
“今”に辿り着くまで、サトシが積み重ねてきた努力が少しずつ形になってきたからこそ、フロンティア・ブレーンとしてレベルの高いバトルを展開してきたのだ。
それをシューティーは“レベルが低い”とそんな簡単な言葉で括ってしまったのだ。
あれではサトシに勝てるはずがないのに。
それが分かっていない。
「でもサトシとバトルしたら嫌でもサトシの実力を理解することになるんじゃない?」
「そうですね。
負けて項垂れている姿が目に浮かびますよ。」
アイリスの言葉にふふふ…と黒い笑みを浮かべるキョウヘイ。
その様子にデントとアイリスは思わずひきつった笑みを浮かべて後退りしたのだった…。
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