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「オオスバメ!君に決めた!!」
「スーバー!!」
カベルネにポケモンチェンジを指定され、サトシが次に繰り出したのはオオスバメだった。
「デントに負けた弱いポケモンをまた出すなんて…いける!
この勝負、もらったわ!!」
サトシがオオスバメを繰り出した途端、カベルネは自信ありげに笑った。
どうやら、カベルネの中でオオスバメはサトシのポケモンの中でも弱い部類だと思っているようだ。
「…カベルネ…、完全にオオスバメは弱いと思ってるみたいだけど…。
忘れてるのかな…?
オオスバメは何度も効果抜群の攻撃を受けてもなかなか倒れないほど、強いスピリットをもつポケモンだってことを…。」
「さすがに俺のポケモンもあそこまで連続で効果抜群の攻撃を受けてたらオオスバメほど持ちこたえられなかったって思うからなー…。」
デントの言葉に賛同するようにケニヤンも頷きながら言葉を発した。
泥沼の中に沈み、身動きの取れない状態で何度もでんき技をくらってもなかなか戦闘不能にならなかったというのに、カベルネの頭の中には弱いという印象しか残らなかったのかと不思議に思うくらいだ。
更に戦闘不能になってしまったことがよほどショックだったのか、次はあんな失態はさらさないぜ!と言わんばかりにオオスバメは気合い十分だ。
あの調子なら、さきほどよりも根性を見せてくるだろう。
更に、メブキジカ相手であれば、オオスバメの方が圧倒的に有利だ。
そんな相性の問題さえも、カベルネの頭の中から抜け落ちているらしい。
「…この勝負、見るまでもないですね…。」
キョウヘイの呟きをもう誰も否定できなかった。
「メブキジカ!“とびげり”!!」
「かわせ!!」
「かわすんじゃないわよ!!」
「ええっ!?」
メブキジカの攻撃をあっさりかわしたオオスバメ。
それを見たカベルネはかわすなとサトシに怒ってくる。
あまりにも理不尽な怒りをぶつけられ、サトシは慌てた。
「オオスバメがよけたりするから、私のメブキジカがダメージ負っちゃったじゃないのよ!!」
信じらんない!と八つ当たりと言っても過言ではない理不尽な怒りをぶつけてくるカベルネをオオスバメは白けた視線を向けて見つめていた。
なんだ、このヒステリー女…。
そう言わんばかりの表情だ。
「スバ、スバスバッ!」
「オオスバメ…。
うん、そうだな!!
バトルはバトル!
相手にのまれたりしたらダメだよな!
オオスバメ!“つばめがえし”!」
理不尽な怒りをぶつけてくるカベルネにペースを狂わされていたサトシだったが、オオスバメに声をかけられ、ハッとした表情を浮かべるとすぐに指示をとばした。
トレーナーとして、相手のペースにのまれ、ポケモンたちの実力を引き出せないようなバトルをしてはいけない。
信頼に応えてくれるポケモンに同じように…否、それ以上の信頼を返すことが大切だと分かっているから。
「メブキジカ、“ウッドホーン”!!」
「“でんこうせっか”でかわして、“つばめがえし”から“つばさでうつ”!!」
効果抜群な攻撃を連続で受けたメブキジカが耐えられるはずもなく、そのままバタリと倒れ、戦闘不能になった。
「メブキジカ!!
…メブキジカに何てことするのよ!
だいたい、さっきまで動揺してたくせに、立ち直り早すぎるのよ!」
悔しそうにサトシを睨み付けるカベルネ。
しかし、サトシはその言葉に納得したような表情を浮かべた。
「そっか!さっきのは俺の動揺を誘うための作戦だったのか!
心理作戦っていうやつだよな?」
「えっ?
あ、え…そ、そうよ!」
もう少し動揺してくれると思ったのに、誤算だったわ!と言うカベルネ。
しかし、デントたちは思った。
“絶対に違う”と。
「危うくペースが乱されるところだったけど、オオスバメのおかげで助かったぜ!」
「スバァ!」
ありがとな、と言ってオオスバメに優しく笑いかけるサトシ。
そんなサトシに和んでいるキョウヘイの隣にいるデントがオオスバメを見つめながら口を開いた。
「…本当にこの大会でサトシとサトシのポケモンたちの様子を見ていると思うよ。
ああ、あれが人とポケモンと築く理想の絆なんだなって。
時にポケモンを叱咤激励し、逆にポケモンに叱咤激励され…。
ああやって、人とポケモンは絆を深く結んでいくんだね。」
「僕の理想です!!」
デントの言葉にキョウヘイも嬉しそうに笑いながら強く賛同した。
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