09
『ムーランド、戦闘不能!
ジュカインの勝ち!』
ムーランドが倒れ、エニシダがコールするも、会場はシーンと静まり返っていた。
カベルネも固まったまま動けずにいた。
「ど、どういうこと!?
“ソーラービーム”はエネルギーをためるのに時間がかかるはずでしょ!?
なんで、指示をしてすぐに発射できるのよ!?」
そう。
カベルネの言う通り、ジュカインはサトシから“ソーラービーム”の指示があってすぐに発射したのだ。
エネルギーをためている間に攻撃をしようとしていた分、カベルネとムーランドは完全に油断していた。
つまりは、もろにジュカインの攻撃を受けたのだ。
隙をついたつもりで、それは隙ではなかった。
しかし、そうなると疑問が残る。
ジュカインはエネルギーをためずに“ソーラービーム”を射てるのかということだ。
「エネルギーをためずに射てるなんて!反則じゃない!!」
「ためずに射った訳じゃないぜ?」
「ど、どういうことよ!?すぐに発射したじゃない!」
「…ジュカインと目で合図してたんだよ。
“タネマシンガン”をうちながら、ソーラーパワーをためるようにって。」
「は?」
サトシの言葉にカベルネは目を丸くした。
今、サトシは何と言った?
目で合図したとか言っていなかったか?
カベルネは予想もしてなかった返答にサトシの言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「…意味わかんないんだけど。
何よ、目で合図って!?」
「えっ?
何となく伝えたいことって分かるだろ?」
カベルネの言葉にサトシはキョトンとした表情を浮かべた。
ポケモンの表情や声を聞けば、何となくでも理解できるものだろ?
サトシはそう言っているのだ。
「…ふざけてんの?」
「ふざけてないって!
ポケモンたちと苦楽を共にしてたら、そういうのって自然に理解できるようになるだろ?
もちろん、細かいことまではさすがに分からないとは思うけど…、だいたいはこう伝えたいのかなとか、逆にこっちがこう伝えたいって思ったりすれば…伝わるだろ?
それに、ジュカインは理解してくれただろ?」
サトシの話を聞いていてカベルネはただ、ぽかんとするだけだった。
それは他の面々も同じようで。
だが、デントとアイリスだけはサトシの言葉を聞いてあるバトルを思い出した。
カミツレとのジムバトルでピカチュウとシビシラスが戦った時、サトシとピカチュウは目で合図して頷いただけで相手の訴えたいことを理解しあっていた。
そうだ。
サトシというトレーナーはそれを当たり前のようにやってのけるのだ。
それは誰しもが出来ることではないが、サトシの中では当たり前のように出来ること。
一番のパートナー、親友と言っているだけあってピカチュウとならそれも出来るだろうとは思えるが、イッシュに来る前に預けたはずのポケモンたちでさえ、それが出来るとなると…本当にサトシはポケモンたちと様々な苦楽を共に乗り越えてきたのだなと自然に思えてくる。
サトシと一緒に旅をしていたからこそ、そういったことも知っているが、たまに大会などで会うくらいしかない他のライバルたちからするとサトシの今の発言を理解することなど難しいのではないかと思えてくる。
「なにそれ!?
ただ、そのジュカインが強いだけでしょ!?
交代よ!交代!!
他のポケモンにチェンジしなさいよ!」
現に、カベルネはサトシの言葉を信じていない。
たまたまジュカインが強かったから負けただけだと思っているようだ。
ぶうっと、頬を膨らませながらカベルネが次に出したのはメブキジカだった。
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