08
「ちょっと!!ええ!?
どうして!?ヒヒダルマ!?」
さっきまでサトシに文句をつけていたカベルネも突然倒れたヒヒダルマに慌てふためいた。
「ジュカインが高く跳躍してから、放った“リーフブレード”だからだろうね。
普通なら考えられないくらいに高く跳躍していれば、重力も相当なものだったと思うよ。
それも、高く飛んでからジュカインはそのまま空中で高速回転しながら“リーフブレード”を叩き込んでいる。
威力は2倍…いや、あの様子から見ても4倍は威力があがってたんじゃないかな?
現に、フィールドはその衝撃を顕著に現している。」
デントがフィールドを見つめながら、そう言った。
確かに、“リーフブレード”で激しくひび割れていた。
まるで、その一点だけ“じしん”、もしくは“じわれ”が放たれたような破壊ぶりだった。
だからこそ、フィールドを見るだけでその威力はうかがい知ることが出来た。
いかに相性がよくとも、あそこまで強い攻撃を受ければひとたまりもないだろう。
“リーフブレード”はそんなに強い攻撃技ではないし、もっと強い攻撃技もたくさんある。
だが、サトシはそれを跳躍させ、更にジュカインが高速で回転しながら命中させることで威力を桁違いなものへと変えさせた。
ただ高く跳ぶだけなら一撃で倒されるようなこともなかっただろう。
だが、サトシのジュカインはレベルも相当高く、ジャンプ力も相当なものだった。
ひこうタイプをあわせ持つポケモンならまだしも、くさタイプのポケモンがあそこまで高く跳躍出来るものなのだろうかと疑問に感じてしまうほどのものだった。
サトシがジュカインの能力を正しく理解していることがうかがい知れた。
バトルは気合いだ!といつも豪語していることもあり、相性の悪い相手でもそれを簡単にひっくり返させるほどのバトル構成を練ってくる。
そして、それに応えるポケモンたち。
あそこまで深い信頼関係を結べているトレーナーは恐らくこの会場には1人もいないだろう。
そう思わせるものだった。
「…っ、戻って!ヒヒダルマ!
…だったら、ムーランド!お願い!
あのすかした顔を絶対に歪ませてやるんだから!」
悔しそうに地団駄をふむカベルネ。
こっちはまだ3体もいるんだから!と声をあげるカベルネ。
だが、ジュカインは余裕な表情を浮かべて笑っている。
それを見たカベルネが、「その、すかした顔がムカつくのよ!!」と怒り心頭だ。
「ジュカイン、油断するなよ?」
「ジュイ!」
サトシに声をかけられ、ジュカインは深く頷いた。
サトシのポケモンとして、無様な姿はさらせない。
まだまだこんなものでは終われないぜ。
そう言わんばかりの表情だ。
「ムーランド!!
“たいあたり”!!」
「かわせ!」
「かわすんじゃないわよ!キーッ!」
ムーランドの攻撃をあっさりとかわしたジュカイン。
かすりもしない攻撃にカベルネは再び地団駄を踏んだ。
キョウヘイに「あの人は地団駄を踏むのが好きなんですか?」と問われたデントは渇いた笑いを返すことしか出来なかった。
とにかく、カベルネは熱しやすく冷めにくいトレーナーなのだ。
怒り始めたらしばらくはおさまらない。
それを知らないキョウヘイが、そんな風に問いかけてくるのも仕方のないことだろう。
「そのすばやさ!反則よ!!」
「そんなこと言われても…、ジュカインの持ち味の1つだからなぁ…。」
カベルネの言葉にサトシは苦笑を返した。
すばやさで相手を翻弄して攻撃に繋げるのはジュカインの得意な戦法でもある。
だから、サトシもそれを活かしたバトルになるように構成を練る。
それを反則だと言われても、困ってしまうのだが、カベルネのムーランドではジュカインの動きに対応しきれないのだから、彼女としてはキレるしかないのだろう。
「ムーランド!“ほのおのキバ”!!
とにかく、何がなんでもあてなさい!」
「ワウ!?」
カベルネの指示にムーランドは「ええっ!?」言わんばかりの表情を浮かべた。
何故ならムーランドにはたった一度攻撃をかわされた時に気付いたからだ。
あの俊敏な動きにはどう考えても今の自分では敵わないと。
だからこそ、トレーナーのカベルネにどうにかあの俊敏な動きを抑えながら攻撃を当てる方法を模索してほしかったのだが、怒りで我を忘れているのか、彼女は「何がなんでもあてろ」としか言わなかった。
これで戸惑うなという方がおかしい。
サトシとジュカインは、こちらの考えていた以上に深い絆を結んでいる。
その上で共に強くなっていったのだろうことは嫌でも感じてしまう。
現に今、互いに目を合わせて無言で頷きあっている。
言葉にしなくても通じる何かがあるのだろう。
「カベルネ。
興奮したまま、何の戦法も練らないで攻撃して勝てるほどバトルは甘くないぜ!
ジュカイン!ムーランドの顔に向かって“タネマシンガン”!!」
カベルネに一言、声をかけたあと、サトシはジュカインに指示を飛ばした。
威力はそんなに強くないはずの“タネマシンガン”だが、ムーランドはその強さに必死に踏ん張って耐えていた。
「キイィィィーーッッ!!
さっきから、地味に鬱陶しいのよ!
素早さばかりあげることに集中しすぎて威力のある技を覚えさせられなかったにしても、そういう攻撃が一番ウザいのよ!」
「威力のある技がみたいなら、見せてやるぜ!
ジュカイン!見せてやれ!“ソーラービーム”!!」
「ジュイッ!!」
地味に攻めてくるのが鬱陶しいというカベルネ。
そんな挑発に乗らず、サトシはジュカインに指示を飛ばす。
「“ソーラービーム”はエネルギーをためるのに時間がかかるのよ!
そのミスチョイスに後悔するといいわ!
ムーランド!“ほのおのキバ”!!」
サトシの指示は隙を作るだけのもので、そのチャンスを逃すつもりはないと効果抜群の指示をとばすカベルネ。
だが、カベルネの予想は裏切られた。
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