07
「カベルネ、いいバトルにしようぜ!」
「サトシ。
アンタを倒すための作戦、考えてるんだから、覚悟しなさい!!」
「俺はポケモンたちを信じてバトルするだけだ!」
「言ってなさい!
サトシ!アンタは2体、私は4体で戦うわ!
ポケモンは今まで繰り出してきたポケモンしか出しちゃダメよ!」
「……へ?」
作戦があると豪語するカベルネ。
しかし、そのあとの言葉にサトシは目を瞬かせた。
「今まで勝てたのは、見たことのないポケモンたちに気を取られてうまく対応が出来なかったからよ!
そうでなかったら、こんなにほぼ負けなしでいけるはずがないのよ!
だったら、バトルをするために少しでも出たポケモンでバトルすれば、勝てるわ!
更に私の勝ちを確実にするために、サトシが出せるポケモンは私の半分にしてもらうわ!いいわね!!
ダメだって言っても聞かないわよ!」
「…えっと…、つまりは…一度はバトルしたポケモンならいいんだよな?
…ってことはバトルしてないポケモンは出すなってことか?」
「さっきからそう言ってるでしょ!
人の話はちゃんと聞きなさいよ!
デントを見返すためにも、絶対に勝つんだから!!」
カベルネの有り得ない提案にサトシは戸惑いながらも確認のために問い返せば逆に怒られた。
「うーん…、エニシダさん…。
受けても大丈夫ですか?」
「…サトシくんも苦労するね…。
いいよ、サトシくんがいいって言うなら、こちらとしては異論はないから、好きにしてもらってかまわないよ。
バトルフィールドはどうする?」
「ありがとうございます!
フィールドはこのまま…ノーマルフィールドのままで大丈夫です。
…本当はゴウカザルとコータスを出そうかと思ったんだけど…2人ともバトルしてないし、…じゃあ…、ジュカイン!君に決めた!!」
「ちょっと!なんでそんな強そうな…ていうか、強いポケモン出すのよ!!
容赦なさすぎっ!!」
「えぇー…、でも…カベルネの提案通りにしてるだろ?」
「だからって!…あー!もういいわ!
そのスカしたポケモンの顔を歪めて見せるんだから!!」
「ジュイィ…。」
「ひっ…!に、睨むんじゃないわよ!
くさタイプなら、ほのおタイプね!
いけ!マイヌーボーフレーバー!ヒヒダルマ!!」
ジュカインにじとりと睨まれ、怯みながらも、カベルネはヒヒダルマを繰り出した。
相性でいえば、サトシが圧倒的に不利だ。
どんなバトルになるか、誰もが固唾をのんで見守るなか、サトシがゴウカザルを出そうとしていたことを知ったキョウヘイはがっくりと肩を落としていた。
どうやら、ゴウカザルのバトルを見たかったらしい。
カベルネさん、鬼だ…と、呟いていた。
『それでは、バトル開始!!』
「ジュカイン!相手にとって不足なし!
そうだろ!?」
「ジューイ!」
「どう足掻いたってくさタイプじゃ、ほのおタイプには勝てないわよ!
ニューテイスティ…」
「ジュカイン!高く跳んで“リーフブレード”!」
「ヒヒッ!?」
バトルが開始され、それぞれが気合いを高める。
サトシは、ジュカインと意識を高め、そのまま技の指示を飛ばした。
高く跳躍し、スピードとパワーの増した“リーフブレード”を受けたヒヒダルマ。
フィールドは大きくひび割れた。
ヒヒダルマは眉間にシワを寄せながらも、何とか立ち上がった。
「ちょっと!!テイスティングの途中で攻撃するんじゃないわよ!」
「あ…、ごめん…。
デントのテイスティングを聞いたあとだったから……忘れてた。」
「デントなんかのインチキテイスティングと一緒にするんじゃないわよ!
だいたい忘れてたってなに!?」
キー!と金切り声をあげるカベルネ。
サトシは申し訳なさそうに頭をかいていた。
「テイスティングの存在も忘れるくらい集中してるってことなんだと思うけどね…。」
「えっ?どういうこと?」
デントの言葉にベルがきょとんとしながら問いかける。
その問いかけにデントもサトシを見つめながら言葉を返した。
「普通に考えて、ここまでバトルを立て続けに受けるのも相当な集中力が必要だと思う。
チャンピオンや、四天王でもここまで連戦でバトルを受けたこともないんじゃないかな?
サトシの性格上、どれだけ疲れていてもバトルを受けた以上、全力で受けてたつと思うんだよ。
…となれば、集中力が切れたからと言って質の落ちたバトルは絶対に出来ない…、つまりはいつも以上に相当集中してバトルをすると思わないか?
バトルに集中するあまり、テイスティングのことも抜け落ちてしまったんだろうね。
サトシも表情からは分からないけど、相当疲れてると思うよ?」
「…そうだよな…。
あれだけのトレーナーを相手にして負け知らずってことに気を取られてたけど…、相手がどう出るかとか、どんなポケモンを出してきて、どう対応するかとか考えてバトルの構成も考えないといけないもんな!
…スゴい奴だよ、ホントに。」
デントの言葉にケニヤンはただ、感心したように呟いた。
どれだけ集中力が高くとも、長時間集中していれば、それは疲れとして返ってくる。
休憩を挟んでいたとはいえ、サトシはのんびりとしていた様子もない。
休憩らしい休憩をとっていた印象もない。
にも、関わらずここまで内容の深いバトルを繰り広げられるのはサトシのレベルが高いからだろう。
「あ…、ヒヒダルマが倒れた。」
会話を交わしていたデントの耳にキョウヘイの呟きが聞こえ、ヒヒダルマを見れば、カベルネがテイスティングの途中で攻撃してきたことに対し、ぶつくさと文句をたれ、そしてそれを聞きながら困ったように笑うことしか出来ないサトシ。
しかし、カベルネがひたすら文句をたれている途中でヒヒダルマは、突然ばたりと倒れた。
「えっ?ちょっと!ウソでしょ!?」
どうやら、最初に受けたジュカインの“リーフブレード”のダメージがじわじわきたらしい。
たったの一撃で、更に効果は望めないくさタイプの攻撃で沈んだヒヒダルマにカベルネは戸惑うことしか出来なかった。
『ヒヒダルマ、戦闘…不能!
ジュカインの勝ち!』
倒れたヒヒダルマに、エニシダも戸惑いながらもコールした。
…カベルネの第一戦目はカベルネが文句をたれている間についてしまった。
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