06
「後悔?僕がサトシ相手に?
それは有り得ないな。」
「…さっきのサトシさんの話を聞いて何も感じなかったんですか?」
何をバカなことを、と鼻で笑うシューティーにキョウヘイは深いため息と共にそんな言葉を投げ掛けた。
シューティーはキョウヘイの言葉に眉を寄せ、嫌悪感を露にしながら言葉を返した。
「…さっきの話?
ああ、サトシのレベルが低いってことだろう?
サトシのファンだと豪語している割にわざわざ僕にサトシのレベルが低いことを改めて認識させて…何がしたいんだ、君は?」
「…あの話を聞いて、そんなことしか感じ取れなかったなら、あなたはもう今以上に強くなることは出来ないと思います。」
「いちいち気にさわることを言うんだな、君は。」
「シューティー。
悪いけど、僕もキョウヘイと同意見だよ。」
「俺も!」
「私も!!」
キョウヘイをバカにするような言葉を返すシューティー。
しかし、キョウヘイに同調するように、その場にいる誰もが声をあげた。
それはサトシと実際にバトルしたトレーナー全員だ。
「みんな、サトシとのバトルでいろんなことを感じて、成長することが出来た。
そして、さっきのサトシの言葉は僕たちにポケモンたちとの付き合い方というものを改めて教えてくれたよ。」
「子供だってバカにしてたけど、サトシの強さは私が子供だってバカにしてたとこから生まれてるんだって、気付いたよ。」
「実際にバトルしてみなさいよ。
見ていただけの時は、こうしなさいよ!とかああすればいいのに!とか思うけど…、本当にサトシって柔軟な思考を持ってるから…、それに翻弄されるわよ。」
「その柔軟な思考にポケモンたちがついていけるのも、信頼関係あってこそだしな!!」
「サトシは実にファンタスティックでミステリアスなテイストを醸し出すからね。
度肝を抜かれると思うよ?」
サトシとバトルをした者がサトシのことを甘く見るなと口を揃えて言った。
それをシューティーは気に入らないと、不機嫌そうな表情を浮かべて見た。
キョウヘイは、サトシが語ってくれた話に胸を打たれた。
ポケモンリーグで負けてしまったのは、リザードンのせいだと責めることもなく、そしてリザードンのようなポケモンであればいかに強くても、言うことを聞かないからという理由で捨ててしまうトレーナーもいるだろう。
けれど、サトシの言葉からはそれは少しも感じ取れなかった。
サトシには、端から捨てるという選択肢はないのだ。
だからこそ、人間に傷つけられたポケモンたちも彼に心を開く。
キョウヘイもサトシとポケモンたちがどのようにして出会ったか、全てを知るわけではない。
けれど、ゴウカザルはサトシと出会ったことで変われたし、強くもなれたのだとゴウカザルとの出会いの話、そして今のリザードンの話を聞いて確信することが出来たのだ。
シューティーの言うように進化して強くなることも悪い方法ではない。
けれど、ポケモンたちの強さの全てが進化だけに限られる訳ではない。
ポケモンたちの意志を汲み取ることで生まれる強さもあることをキョウヘイはサトシとポケモンたちの姿を見て、改めて学んだ。
そして、サトシとバトルした者たちはみんな、それを感じ取った。
シューティーのやり方を否定するわけではないが、シューティーはサトシのやり方を否定している。
キョウヘイはそれが許せなかった。
「サトシさんとバトルしたら、きっと分かりますよ。
負けても得られるものがたくさんあるんだってことを痛感することになりますよ。」
「だから、僕は負けるつもりはない。」
「…そんなこと、勝ってから言ってください。」
「僕の強さを見て、腰を抜かせばいいさ。」
何を語ってもシューティーは絶対にサトシのことを認めようとはしないだろう。
キョウヘイはそこにようやく気付いた。
だったら、フルボッコしてもらって気付かされればいい。
そんな思いを込めて、キョウヘイは「僕が腰を抜かすとしたら、サトシさんのスゴさや素敵さを目の当たりにした時くらいですよ。」と返した。
『お待たせしました!
フィールドの調整も終わりましたので、バトル大会を再開します!
カベルネ選手!バトルフィールドまでお越しください!!』
キョウヘイの言葉にシューティーが不愉快そうに見返していると、エニシダの声が響いた。
バトル再開となり、次のサトシの相手…、カベルネが呼ばれた。
カベルネは、「私だって負けないんだから!!デント!私の方がレベルが高いんだってことを思い知らせてやるわ!よーく見てなさいよ!」とデントに向かって言葉を発したあと、フィールドに向かうために部屋を退出したのだった。
デントはただ、乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。
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