04
「ハハコモリ!強敵だ。
油断するなよ。」
「ハハー!」
「行くぞ、ハハコモリ!“いとをはく”!」
「ジュカイン!“こうそくいどう”でかわせ!」
「ジュイッ!」
「…ッ!!早い…!!」
ハハコモリの攻撃をあっさりとかわすジュカイン。
そのスピードの早さにルークもハハコモリも驚きに目を見開いた。
「ジュカイン!“タネマシンガン”!」
「ジュ!」
「ハハー…ッ!!」
“こうそくいどう”でスピードをあげてからの“タネマシンガン”にハハコモリはかわす術を見つけられずその身に受けた。
「…ヤナップと同じ“タネマシンガン”なのに…。
こんなに威力が高い“タネマシンガン”、僕は見たことがないよ。」
「…スゴい…。」
「あのジュカインも相当強いわね…。
まだこんなに強いポケモンを隠し持っていたなんて…!」
デントのポケモン、ヤナップと同じ攻撃技の“タネマシンガン”。
しかし、その威力は段違いだ。
悔しいが、ヤナップと“タネマシンガン”で勝負したら確実にヤナップの方が負けてしまう。
見ているだけでそれを十分に感じた。
見ているだけでそう思うのならルークはもっと強く感じているだろう。
そしてジュカインのレベルの高さをも見せつけられているのだ。
ルークの心中は穏やかではないだろう。
「…っ、ハハコモリ!だったら、“リーフブレード”だ!」
「“リーフブレード”には“リーフブレード”だ!」
スピードの高さに翻弄されるも、何とか持ち直そうと次の攻撃の指示を飛ばしたルーク。
サトシはそれを真っ向から受けて立った。
同じ技がぶつかり合い、辺りに生い茂る草がはらりと切れた。
「…ッ、ハハー…!」
「ハハコモリ!」
同じ攻撃技。
しかし、ハハコモリは力負けして、膝をついた。
ルークは固まった。
レベルが違いすぎる。
ジュカインのレベルが高すぎて、どう考えてもハハコモリに勝ち目はない。
同じ攻撃技なのに、膝をついて力負けしているハハコモリに対し、ジュカインの方にはどこか余裕さえ感じ取れる。
ルークの頬から冷や汗が流れ落ちた。
「…ジュカイン!“たたきつける”攻撃!」
「ジューイ!」
「ハハー…!」
「………。」
「次は“でんこうせっか”!」
「ジュ!」
「ハハー…っ!」
「……ルーク…?」
次々と攻撃をしかけるサトシに対し、ルークは何も言わずにただ立ち尽くすだけだった。
さすがに様子がおかしいことに気付いたサトシが声をかけるも、ルークは何も言葉を返さなかった。
「…どうしたんだよ、ルーク?
まだバトルの途中だぜ?」
「…無理だよ。
勝てるはずがない。
…レベルが違いすぎる。」
「そんなの、戦ってみないと分からないだろ!?」
「…サトシは強いから、強いポケモンをゲットしてるからそんなことが言えるんだよ。
…元々、僕のポケモンたちはバトルで勝つために育てていたわけじゃない。
だから…」
「ルーク!
バトルを途中で放棄するってことは、ポケモンたちの頑張りをムダにするってことなんだぞ!?
大事なのは勝つか負けるかだけじゃない!
ポケモンたちと一緒にどこまで頑張れるか、それに俺たちトレーナーが、どこまでポケモンたちの力を引き出せるかだ!」
「サトシはいいさ!
出てくるポケモンたちはみんな強くてレベルが高いんだから!!
それに…サトシはまともにバトルをしたとも言えないような負けを経験したことがないから、そんなこと言えるんだ!」
「…あるよ。」
「…え?」
「まともにバトルにならないまま、負けたこと、ある。
…ポケモンリーグで、経験してる。
あの時、俺は…自惚れてた。
俺の実力はこんなものじゃないって。
こんなところで負けるはずがないって。
…あの時、俺が負けたのは、ポケモンとの絆がしっかり結べてないってことが分かってたのに、一か八かに賭けたからだった。
…あの時に思ったんだ。
ポケモンリーグで勝つかどうかも大事だけど、もっと大切なのはポケモンたちとの絆をしっかり築くこと、ポケモンたちと一緒にどんな不利な状況でも諦めないこと。
それが大事なんだって。」
「……サトシ…。」
真剣な表情を浮かべて語ったサトシ。
真摯なその言葉に、態度に、ルークは戸惑いに瞳を揺らした。
「それに、こうしてフロンティアブレーンとしてここに立ってるけど…フロンティアシンボルをゲットするためのバトルにも何回か負けてるんだぜ?
でも、ここにこうして立てるのは最後までポケモンたちと諦めずに挑み続けたからだ。
…諦めようと思ったことがなかったわけじゃない。
でもさ、その度に思い出すんだ。
ポケモンマスターを目指して旅に出ることを夢見ていた時のことを。
もし過去の自分に会ったときに自分で選んだ選択に後悔したくないから。
だから、諦めちゃダメなんだっていつも自分を奮い立たせるんだ。」
「………。」
「なあ、ルーク。
少なくとも、ハハコモリは勝てないから意味がないって諦めてはいないぜ?」
「ハハー!」
言葉を失ったままのルークにサトシはハハコモリを見つめながら、ハハコモリの意志を汲み取った。
ハハコモリもサトシの言葉を肯定するように力強く頷き、声をあげた。
「トレーナーとして、ポケモンの気持ちに応えようとするのも大事なことだろ?」
「……気持ちに応える…。
………そうだね。
勝ったとしても負けたとしても、そこから学べることはきっとたくさんある。
…ハハコモリ、ごめん。
君が諦めていないのに、僕が諦めてしまったらいけないね。
…ハハコモリ、一緒に頑張ろう!」
「ハー!」
サトシの言葉に、ハハコモリの意志に後押しされ、ルークは自分の態度を改め、最後まで諦めずにバトルすることを選んだ。
「ハハコモリ!いくよ!」
「ジュカイン!“でんこうせっか”!」
「ジュ!」
「ハハコモリ!ジュカインの足元に向かって“いとをはく”攻撃!」
「ハハーン!」
「ジュイ!?」
「この攻撃は…。」
「そう。
さっき、君がキングラーにやったことと同じさ。
ハハコモリではどう足掻いても、ジュカインのスピードには敵わない。
それなら、スピードを落とせばいい。」
ハハコモリの攻撃に足を取られ、動きを封じられたジュカイン。
その見覚えのある攻撃は、さきほどキングラーがゾロアにしたのと同じやり方だ。
ただ、ジュカインに向かって“いとをはく”攻撃をしても、あのスピードでは避けられるだけ。
だったら、違うやり方でスピードを落とせばいい。
そう考えたルークの頭に巡ったのはさきほどのキングラーとのバトルだった。
「(サトシ。
サトシの言葉とバトルで分かったよ。
負けたとしてもそこから学べることもたくさんある。
それを僕がどこまで活かしてポケモンたちとバトルできるかなんだ。
諦めてしまったらそこからは何も得られない。
サトシの伝えたいこと、よく分かったよ。
そして、それはバトルだけじゃない。
夢も同じだ。
諦めずに挫折してもそこから学んでいけば、いつか夢を叶えることが出来る。
…君とバトルしたから気づけたことだ。)」
それは、ただポケモンたちを撮影しているだけでは気付けなかったことだ。
いろんな経験をつむことはムダにはならない。
生かすも殺すも、その人次第だ。
サトシとのバトルはそれを教えてくれた。
みんなが、サトシとバトルして良かったと言う理由がここに立つことで初めて知ることが出来た。
「ジュカイン!地面に向かって“リーフブレード”!!」
「ジューイ!」
「ジュカイン!“リーフストーム”!」
地面に放たれたハハコモリの糸。
ハハコモリの動きやすい地形に変えたものの、それはジュカインのリーフブレードであっさりと破られた。
そして、追撃を受けたハハコモリは地に伏し…戦闘不能になった。
『…ハハコモリ、戦闘不能!
フロンティアブレーン、サトシの勝ち!』
バトルはやはりと言うべきか、サトシの勝利で終わったが、ルークは不思議と清々しい気分でそれを受け入れることが出来た。
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