14
「ヤナップ!“タネマシンガン”!!」
「ナププププ!」
「ベトベトン、“ヘドロばくだん”!」
「ベトー!」
「ヤナップ!“あなをほる”!」
「ベトベトン!“どくガス”で迎え撃て!」
「僕たちはまだまだやれる!」
「俺たちだって負けないぜ!」
技と技の応酬。
どちらかが技を放てばそれを迎え撃ち。
互いに一歩も引こうとしないバトルは気付けば観客や挑戦者たちを引き込むものになっていた。
もちろん、今までのバトルも観客は引き込まれっぱなしだった。
だが、連戦で疲れているはずのサトシならば集中力が途切れても何ら不思議はない。
そんな中でサトシの表情からはそれを感じとることは出来なかった。
もちろん、多少は集中力も落ちてはいるだろう。
だが途切れたわけではない。
それこそ、サトシがこのバトル大会を心から楽しんでいる証だ。
そして、デントもその気持ちに応えようとバトルをしている。
引き込まれない方がおかしい。
そう感じさせるバトルだ。
「(…僕は本当にまだまだ知らないことがたくさんあったんだね。
君が、ここまで強かったことも…いろんな地で出会ってきた仲間とここまで確固たる強い絆を築いてきたことも、何も知らなかった。
サトシ、君とこの場でバトルが出来て本当に良かった。
また1つ、君の魅力を知ることが出来て、満足だよ。)」
楽しそうに笑うサトシとバトルしながら、デントはそう思った。
ポケモンのためなら、いとも簡単に普通の人間なら戸惑う無茶をするサトシ。
正直、自分ならサトシのように躊躇いなく体をはることは出来ない。
どこかで躊躇いが生じる。
それが分かっているからこそ、その人間性に尊敬さえも覚えたのだ。
年下の彼からいったいどれだけ大切なことを教わったことか。
ここまでまっすぐな人と、そうは出会えないだろう。
どこまでも、まっすぐで純粋で優しいサトシだからこそ、そのまっすぐな気持ちにポケモンたちも応えようとする。
それがサトシとサトシのポケモンたちの強さだ。
きっとサトシのポケモンたちの中には、普通のトレーナーからしたら、“弱い”と認識されてしまうポケモンもいるだろう。
けれど、それさえもはね除けてしまう強さをサトシはポケモンたちと共に旅をすることで築き上げてきたのだ。
それがバトルをしたことで痛いほどに伝わってきた。
「(きっと、シューティーもバトルをしたら嫌でもそれを痛感することになるんだろうね)」
相性の悪い相手だったのと、スピードが圧倒的劣っているはずなのに、それをものともしないベトベトンと、それを理解した上でバトル構成を練って責めてくるサトシに徐々におされ、ヤナップはベトベトンの“ヘドロばくだん”で戦闘不能となってしまった。
バトルは結局、デントの敗退で終わったが、サトシと熱い握手を交わしながらデントは実に実のあるバトルを経験できたと満足感に満たされ、自分は本当に魅力的なトレーナーと出会えたんだと改めて認識することの出来る素晴らしいバトルに、デントは負けはしたがどこかすっきりした気持ちを抱えながらバトルフィールドをあとにした。
***
「デント、お疲れ様!
どうだった?」
「旅の途中でもバトルは何度もしたけど…、今回のバトルは今までしてきたバトルとは違って改めて自分の信念とか、今…自分がどの立ち位置にいるのかとか、いろんなことを学んだよ。
フロンティア・ブレーンの名も伊達じゃないね。」
「フンッ!どんな言葉を並べたって負けは負けなのよ!!
ざまーないわねっ!!言っておくけど!
サトシのポケモンを初めて倒したからって調子にのるんじゃないわよ!?
負けは負け!!結局、手も足も出ないまま負けたことに変わりはないんだから!」
「…カベルネ…。」
人指し指をビシッとデントに向けながら、負けだと連呼するカベルネにデントは思わず苦笑した。
アイリスがオオスバメをデントが倒したあと、カベルネが念仏のように「デント、負けろ…デント、負けろ…!」と呟きながらバトルを食い入るように見つめていたことをデントに報告するとデントは困ったように頬をかいた。
「カベルネのバトルも、もうすぐだよね?
バトル構成とか考えてるとは思うけど…、サトシのバトルは実にファンタスティックでポケモンソムリエとしても大きく成長できる貴重な体験となると思うよ。
頑張って、カベルネ。」
「負けたくせにアドバイスなんてするんじゃないわよ!
私にだって考えがあるわよ!
デントみたいなエセポケモンソムリエと一緒にしないで!!」
何を言ってもデントの言葉には全て噛みつくカベルネにアイリスは白けた視線を向けながら「本当にめんどくさい…。」と呟きながら2人のやり取りを見つめていたのだった。
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