08
「やっぱり強いわ、サトシ。
まだまだ私も修行が足りないな…!
ドラゴンマスター目指して頑張らなきゃ…って、デント?
ずいぶんぐったりしてるけど、大丈夫…?」
試合を終え、控え室へと戻ってきたアイリスは、げっそりしているデントに気付くと心配そうに見つめた。
「え?…あ、…アイリス、試合お疲れ様…。」
「ちょっと…大丈夫?
次の試合、デントでしょ?
体調崩したなら棄権したら?」
「それは出来ない!ジムリーダーであり、ポケモンソムリエである僕がここでバトルしないで、テイスティングもしないまま、終わることなんて、絶対にできない!
サトシみたいなレベルの高いトレーナーをテイスティング出来ることも光栄なんだからね!」
「デントさん…。
そうですよね!サトシさんをテイスティングするなんてそれこそゼクロムとレシラムに同時に会って、しかもゲットできた…なんていう幸運に匹敵する…いえ!むしろ、その上を行くくらいのことですからね!」
「え、あ…うん、そうだね!」
デントの言葉にうんうんと嬉しそうに何度も頷きながらキョウヘイが言えば、顔をひきつらせながらもデントは頷いた。
ここで、あやふやな発言をすれば自分は屍どころか、白骨化しかねないくらいにげっそりしそうだ。
キョウヘイの世界はサトシを中心に回っているんだと痛感したデントだった。
「それじゃあ、デントさん!
サトシさん相手に頑張って足掻いてください!」
「足掻いてって…、うん…もういいや…。」
デントの負けなど最初から確定していると決めてかかっているキョウヘイの言葉にデントは、突っ込もうと思ったが、もうどうとでもなれと投げやりになりつつ、フィールドへあがっていった。
「理解に苦しむよ。
あんな基本もなってないトレーナーのどこを尊敬しろっていうんだ?」
「テメェ…握り潰して中のカスタードクリーム抜くぞ、このボケカスが。」
お前なんてサトシさんにフルボッコしてもらって、一生項垂れてろ。と呟くキョウヘイ。
「言葉遣いが汚いね、君。
知能も相当低そうだ。
まあ、そういう意味で君とサトシはお似合いなんじゃないか?」
またも、シューティーにしか聞こえない小さな声で暴言を吐いたキョウヘイ。
さすがに二度も聞けば聞き間違いなどとは思えず、シューティーは皮肉を返した。
カスタードクリームがどうとか言ってる時点でシュークリームと呼んだのも、勘違いとかではなく、わざと間違えたフリをしていたとしか思えない。
さて、どんな言葉が返ってくるかな?と思っていたシューティーだったがキョウヘイは言葉を返さなかった。
━━━ガンッ!
「…っ!!」
…言葉は返ってこなかったが、代わりに返ってきたのは壁を思いっきり殴ったキョウヘイだった。
そして、シューティーの顔を睨み付け、怒りを露にしながら、ようやく口を開いた。
「おい、そこのシュークリーム。
サトシさんのことを何も知らないくせに上から目線でいるの、やめろ。
サトシさんは絶対にお前みたいな格下シュークリーム相手でも見下したりしない。
あんなに、優しくてあったかい人を貶すことしか出来ないの?
これまでサトシさんのバトルの何を見てきたんです?
これまでのバトル大会でサトシさんが負け知らずなのを、その目で見てなかったんですか?
あなたの目は節穴ですか?
でなければ、そんな言葉でませんよね?
…サトシさんとポケモンたちの絆の深さを理解できないなら、貴方は絶対にサトシさんには勝てませんよ。」
「この僕が負けるなんて有り得な…」
「絶対に勝てませんよ。絶対にね。」
「面白い。
そんなに言うなら僕の強さを見ていればいい。
君が間違ってるってことを証明してみせるよ。」
「あとで、吠え面かくんじゃ……サトシさーーーーんっ!!
頑張ってくださーーーーいっ♪」
シューティーとの会話の途中で怒りを露にしていたキョウヘイの表情は突如…一変し、飼い主に懐くポケモンのように両手をぶんぶん振りながらサトシを応援した。
どうやら、サトシがキョウヘイを見て笑いかけたらしい。
キョウヘイにヨーテリーの耳と尻尾が生えてるように見えるから不思議だ。
会話の途中で放置されたシューティーの額には青筋がぴくぴくと浮かんでいたが、キョウヘイは、欠片も気にしていなかった。
「ハア…。
サトシさんの笑顔が素敵すぎてヤバい…。
どうしてあんなに素敵なんだろう…サトシさん…。」
「ワフゥ。」
サトシが、自分に向けてくれた笑顔の余韻に浸り、1人の世界を作り出すキョウヘイにもう、誰も突っ込みを入れることはなかった。
- 22 -
[
*前
] | [
次#
]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -