07
「キバゴ!“りゅうのいかり”!」
「フカマル!“りゅうのはどう”!」
バトル開始早々、ドラゴンタイプの技と技がぶつかり、爆音と凄まじい砂埃に会場は包まれた。
「さすが…というべきかな。
ドラゴンタイプならではのパワーのある攻撃…。
どちらもドラゴンタイプの技が弱点である以上、相手側の攻撃をどう避けて、どう攻撃をあてるかがポイントだね。」
「…ふふふ。
サトシさんのフカマルをその辺のフカマルと同じだと思われるのは心外ですね。」
最初の技の威力をびりびりと肌で感じながら、デントが言葉をこぼせばキョウヘイが人差し指を立て、左右に振りながら満足気に笑った。
あのフカマルは君のフカマルじゃないのに、何で君がそんなに誇らしげなんだ?それ以前にイッシュにはその辺どころかどの辺にもフカマルはいねぇよと言いたくなるが、その場にいる誰もが思った。
“この子に下手に(サトシのこと限定で)ツッコミを入れようものなら、自分は屍と化すであろう”…と。
短時間でキョウヘイのサトシに対する並外れた愛情は嫌でも感じさせられたのだから。
けれど、キョウヘイの意味深な言葉が気になるのも確かで、デントはその言葉の意味を問いかけた。
「どういうこと?」
「ふっふっふ。
聞かれても答えませんよ?
サトシさんの素敵さは僕が分かっていれば十分なんですから!
分かります?サトシの素敵さはプライスレスなんですよ!プライスレス!」
「あ…、うん…。あはは…。
そう、みたいだね…。」
「は?
そうみたい、じゃなくて、そうなんです!!
なんで、あやふや表現なんですか!?
デントさん!!それでもサトシさんと旅をしてる仲間ですか!?
サトシさんの素敵さをまだ理解できてないんですか!?
サトシさんと旅が出来るなんてレアの中でもレアの更にレアをいく素敵特典なのに!!
いいですか!?サトシさんとの旅を抽選で一名様にプレゼントとかっていうキャンペーンがあったら、僕は応募ハガキを買い占めるだけ買い占めて応募しますよ!
分かります!?この気持ち!?
ていうか、どうしてそういうキャンペーンやってないんですか!?
意味不明ですよ!サトシさんと旅が出来るなんてことになったら僕の背中にはきっと羽が生えますよ!
いや、それは別にひこうタイプのポケモンになるって意味ではないですよ?
嬉しすぎて背中に羽が生えるって意味ですよ?
昇天するってことです!
僕、サトシさんに握手してもらってから手を洗ってませんから!
握手してもらった手は永久保存しておかないといけないですし!
だけど、ルカリオには汚いから洗ってくれとか言われるし!
つまり!話がそらされましたけど、サトシさんと旅が出来るっていうキャンペーンがないのが有り得ないってことですよ!
なんで応募もしてないのに、デントさんやアイリスさんはサトシさんと旅が出来てるんだってことです!
サトシさんの笑顔や優しさとか素敵さとか独り占め…2人いるから2人占めか…。
2人占めとかおかしいってことです!」
長文をノンブレスで言い切ったキョウヘイ。
あれだけの長文をノンブレスで言い切るなんてもはや人間業じゃないよ!と思わずにはいられない。
デントはキョウヘイに質問なんてするんじゃなかったと心底後悔した。
質問の答えはもらえないわ、サトシの素敵さや一緒に旅を出来ることが羨ましい…いや、恨めしいのかひたすらデントに向かって、サトシと一緒にいられることがどれだけ素敵なのかを語っている。
というか、君。
サトシファンなのに、サトシの試合をみなくていいの?と問えば、ルークを買収してサトシのバトルの全てを高画質でブルーレイかDVD希望(むしろ両方)をもらうという約束を半ば強引にさせたらしい。
しかも観賞用と永久保存用と持ち歩き用を(最低でも)1枚ずつくれと言ったらしい。
さすが、サトシの一番のファンだと言い張るだけのことはある。
いつの間にルークを買収したんだ?と思ったデント。
『キバゴ、戦闘不能!
よって、フロンティアブレーンのサトシの勝利!』
そして、キョウヘイの嫉妬に満ちた行動に強引に付き合わされたデントはサトシとアイリスの第3試合を全然見れないまま…気付いたら決着がついてしまっていたことに気付くのが少し遅れたのだった。
そして、それを他の面々は同情のまなざしを向けて見ていた…。
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