06
「グラーイ♪」
「もがっ!!」
モンスターボールから登場したグライオン。
しかし、すぐにサトシの方へ方向転換すると、サトシの顔面に思いっきり抱きついた。
「グラーイ♪グライオー♪」
「わか、分かったから!
ほら、久々のバトルだから!」
「グライオーン!」
顔面に抱きついてきたグライオンを引き剥がしながら、バトルに集中しようと言えば、グライオンはペロッと舌を出してようやくドリュウズと対峙した。
「あーんっ!
私も顔面に抱きつかれたーいっ!!」
「…グライオンも交換交渉するとか言い出しかねない状況だな…。」
「あ、やっぱり分かる?
だって!ねえ!見た!?
舌をペロッて出してたんだよ!?
可愛くない!?」
「わ、分かったから!
揺するなって!!」
呆れ顔のケニヤンに対し、興奮した様子のベルはゆさゆさと激しくケニヤンの肩を揺さぶった。
その揺さぶり方は尋常じゃない。
ケニヤンの髪がみるみるうちに乱れていく激しさだ。
サトシのポケモンが登場する度にこれでは、身がもたない。
「あんなとぼけたポケモンじゃ強さも大したことなさそうだな。」
「…黙れ。潰すぞ、このカスが。」
「……っ!?」
「どうかしました?シューさん?」
サトシのことをバカにするような発言をしたシューティー。
しかし、それを聞いたキョウヘイはボソッと暴言をはいた。
あまりにも小さな声だったので、シューティー以外の耳には届いていない。
突然はかれた暴言に目を見開いてキョウヘイを見たシューティー。
しかし、キョウヘイは目をぱちぱちさせ、きょとんとしながら首を傾げていた。
「(空耳…だったのか…?)」
とても暴言をはいたような表情をしていないキョウヘイに、シューティーは気のせいだったのだろうかと疑問に思ったが、とりあえず聞かなかったことにした。
「行くよ、ドリュウズ!
“メタルクロー”!」
「ドリュー!」
「グライオン!“シザークロス”で迎え撃て!」
「グラーイ!」
ドリュウズの“メタルクロー”を真っ向から受け止めたグライオン。
その衝撃で周辺にあった岩は粉々に砕けた。
「グライオン!そのまま抑えながら“ストーンエッジ”!」
「グラーイ!」
「ドリュ…ッ!」
「ドリュウズ!“あなをほる”で体勢を立て直して!」
“シザークロス”でドリュウズを抑えたまま放たれた“ストーンエッジ”。
効果は見込めなくても、至近距離から放たれた攻撃にドリュウズは飛ばされた。
体勢を崩され、飛ばされたドリュウズにアイリスは立て直すために地中へ逃げるよう、指示した。
「“シザークロス”で抑えながらの“ストーンエッジ”…。
あのグライオンのレベルが高いからこそ出来る芸当なんだろうね。」
「お茶目なのに強いなんて素敵ー!」
「サトシさんのポケモンなんですから、当たり前ですよ!」
グライオンのレベルの高さを目の当たりにしたデントたち。
これだけたくさんのポケモンをゲットしているのなら、もう少し強さも落ちていてもよさそうなものだが、サトシのポケモンにはそれがない。
そして、どのポケモンたちもサトシのことを心の底から信頼していることが強く伝わってくる。
キョウヘイのような熱狂的なファンがいても何ら不思議はないと思える。
「グライオン、油断するなよ!どこから来るか分からない。
神経を集中するんだ。」
「グライッ!」
サトシの言葉にグライオンも強く頷いた。
いつ、どこからドリュウズの攻撃が来ても対応出来るように、警戒していた。
「ドリュウズ!“きあいだま”!!」
「…!グライオン!後ろだ!」
「グライッ!」
グライオンのすぐ後ろの地面が盛り上がったことに気付いたサトシはグライオンにそれを教えた。
ドリュウズの“きあいだま”でフィールドは再び砂埃が舞っていた。
「当たった…の?」
「グライオン!“ギガインパクト”!」
「えっ!?どこにいるの!?」
“きあいだま”が当たったのかどうかが分からず困惑するアイリス。
しかし、サトシはグライオンがどこにいるのかが分かっているようで次の技の指示をとばした。
だが、アイリスもそして、ドリュウズもグライオンがどこにいるのかが分からず、キョロキョロと辺りを見回した。
「……っ!!
上よ!ドリュウズ!!」
「ドリュ!?」
アイリスに言われ、上空を見上げたドリュウズ。
グライオンはいつの間にか、上空へ逃げていた。
「ドリュウズ!“ドリルライナー”で迎え撃って!!」
「ドリュー!」
迫ってくるグライオンにアイリスは真っ向から受け止めることを選んだ。
グライオンとドリュウズの攻撃の反動で辺りは強い地響きが起こった。
上空からの勢いがついた攻撃にさすがのドリュウズも耐えきれず、膝をついた。
「ドリュウズ!負けないでっ!
“きあいだま”!」
「ドリュ!」
「グライオン!避けろ!」
「グライッ!」
攻撃の手を休めるわけにないかないとアイリスは、再度“きあいだま”を指示した。
それを、サトシに避けるように言われたグライオンはふわりと舞うことでドリュウズの攻撃を避けた。
それはまるで風のようだった。
「“ほのおのキバ”!!」
「グライッ!」
「ドリュー…!」
「ああッ!?ドリュウズ!!」
攻撃を避け、すぐにドリュウズの隙をついたグライオン。
攻撃をまともに受けたドリュウズは倒れてしまった。
『ドリュウズ!戦闘不能!
フロンティアブレーンの勝利!』
効果抜群の攻撃をくらい、地に伏したドリュウズ。
アイリスはドリュウズに「ありがとう。」と声をかけたあと、モンスターボールへ戻した。
「まさか一発目の“きあいだま”を避けられるなんて思ってもなかったな…。
でも、どうやって避けたの?
それに…あの短時間で上空へ跳ぶなんて…どうやってあんなこと…。」
ドリュウズをモンスターボールに戻したあと、アイリスは疑問に思ったことを問いかけた。
鳥タイプのポケモンなら分かるが、そうではないグライオンは最初にドリュウズが放った“きあいだま”を避けただけでなく、想像もつかないほどの上空にいたのだ。
どう考えても、あそこまで高度の高い場所にグライオンがいた理由が分からない。
だから、問いかけた。
サトシはグライオンが遥か上空にいることを知っていたようだったから。
「簡単だよ。
ドリュウズの“きあいだま”はグライオンが尻尾の力を使って跳んで避けて、そのあとに岩にあたった“きあいだま”の反動を利用して上空に跳んだだけだよ。」
「簡単って…。」
なんてことないと言わんばかりのサトシの言葉。
当たり前のように語るが、それは簡単に出来ることではない。
反動を利用するということは、どういった形でその反動がくるのかを理解していなければ出来ないことだ。
うまく読めなければ、グライオン自身に強いダメージとなって返ってくることになる。
「反動によって起きた余波…空気をグライオンはしっかり読んでいたってことだね。
そして、サトシはグライオンならそれが出来ると分かっていた。」
「本当にスゴい奴だよな…。」
デントの言葉にケニヤンは、サトシのトレーナーとしてのレベルの高さに感心した。
「…本当にサトシって、スゴいトレーナーだったんだね。」
「俺がスゴいんじゃない。
ポケモンたちがスゴいんだよ。
強くなるために努力してる。
俺はただそれを手伝ってるだけだ。
空気を読むのだって、グライオンが頑張って修行したから出来たことだしさ。」
な?と言いながらグライオンに笑いかけるサトシ。
グライオンも照れくさそうに笑っている。
自分がスゴいわけじゃなくて、ポケモンがスゴいんだと迷いなく言い切ったサトシにキョウヘイは瞳をキラキラさせていた。
「(サトシさんの素敵さは、もう世界中のどのトレーナーでも敵わないよ…!
本当に素敵だな…。
サトシさん…!貴方の素敵さはプライスレスです!)」
自分に実力があるんだと、ふんぞり返るトレーナーもいるが、サトシは全くそれがない。
ポケモンたちのことを信頼し、その意思を尊重することなんて誰でも出来ることではない。
「サトシ!最後はドラゴンポケモン同士のバトルをしよう!」
「分かった!
フカマル、君に決めた!」
「カーフッ!」
「キバゴ!行くよ!」
「キババー!」
最後はドラゴンポケモン同士のバトルとなり、サトシはフカマル、アイリスはキバゴを繰り出した。
「ちょっ!いたたっ!!
フカマル!分かったから!
今はバトル!バトルに集中!」
「カフッ♪」
嬉しそうに頭にかぶりついてきたフカマルをサトシは必死になだめた。
サトシになだめられ、フカマルはバトルフィールドに戻っていった。
「サトシのポケモンたちって愛情表現が特殊だよね!」
「特殊…なのかな?
割りとみんなこうなんだけど…。」
それに俺だけじゃなく、コジロウとかもマスキッパとかウツボットとか…激しい愛情表現されてたし…と呟くサトシ。
それは普通ではない愛情表現だとは思っていないようだ。
「とにかく!ドラゴンマスターを目指してる以上、負けるつもりはないから!」
「俺だって負けないぜ!」
そう言って互いに笑いあうサトシとアイリス。
『それでは、第3戦目!バトル開始!』
エニシダの言葉と共にサトシVSアイリスの最後のバトルが始まった。
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