05
「サトシ!3対3のバトルにして!」
「わかった!!」
バトルフィールドでサトシと対峙する形で立つアイリスは、3対3のバトルを指定してきた。
それをサトシが拒否するはずもなく、二つ返事で了承した。
そしてそれを確認したエニシダが口を開いた。
『3対3ということなので、フィールドはルーレットで決めてもらいます!
では、アイリス選手!ルーレットを止めてください!』
エニシダに言われ、アイリスはルーレットのボタンを押した。
回転していたルーレットは、岩の絵の描かれたところで止まった。
『フィールドは、岩で決定しました!
それでは、フィールドをチェンジします!』
バトルフィールドは岩に決まり、ノーマルフィールドから、いくつもの岩の設置されたフィールドが姿を現した。
「エモンガ!お願い!」
「エモー♪」
「だったら、俺は…ドンファン!君に決めた!」
「ドンファーン!」
『フロンティアブレーンは、ドンファン。
アイリス選手はエモンガでのバトルです!
それでは、バトル開始!!』
「先手必勝!エモンガ!“メロメロ”!」
「エー…モッ!」
エニシダの合図と共にアイリスは先手必勝だといきなり“メロメロ”を指示した。
「ドンファン!“まるくなる”!」
「ドンファ!」
『おーっと!エモンガの“メロメロ”はドンファンの“まるくなる”で防御されてしまいました!』
エモンガの“メロメロ”にサトシは慌てる素振りもなく、冷静に指示をとばした。
エモンガの攻撃はあっさり破られてしまった。
「“まるくなる”をこんな使い方をするなんて…。」
「“メロメロ”を防ぐだけじゃない。
“まるくなる”は防御力もあげる技だ。
アイリスの攻撃も防いで、なおかつ防御力まであげるなんて…、やっぱりサトシは他のトレーナーとは違うフレーバーを隠し持っているんだね。」
「さすがサトシさん!
ドンファンもカッコイイ!!」
ただ、“まるくなる”という技だけなのに、思いもよらない技の使い方をするサトシに感嘆の声がもれた。
ただでは転ばない。
それがサトシだ。
デントの隣でサトシを応援するキョウヘイの手には“サトシさんサイコー!”その裏には“サトシさんラブ!”と書かれたうちわが、装備されていたがとりあえずデントたちは触れないようにした。
キョウヘイがサトシの熱狂的なファンであることは周知の事実だったからだ。
しかも、突っ込みを入れようものなら、何が返ってくるか分かったものではない。
「だったら、エモンガ!“めざめるパワー”!」
「ドンファン!“ころがる”!」
“メロメロ”がきかないならと、次の指示を飛ばすアイリス。
もちろん、それに対してもサトシは冷静な対応を見せた。
うまくバトルフィールドを利用し、“ころがる”ことで技の威力もどんどんあがっていく。
エモンガも空中から“めざめるパワー”を連発するも、“ころがる”のスピードもあがっていくだけでなく、岩が邪魔をしてうまく当てられずにいた。
「今だ!ドンファン!その先にある大きな岩を使ってそのまま飛べ!」
「…くっ!エモンガ!来るよ!もっと上空に逃げて!」
「エモッ!」
大きな岩を利用してエモンガに“ころがる”を当てるつもりであることに気付いたアイリスは、攻撃が当たらない更に上空に逃げるように指示した。
「ドンファン!“はかいこうせん”!!」
「ドン!ファー!」
「ええっ!?うっそ!?
エ、エモンガ!に、逃げてーっ!」
“ころがる”攻撃に気をとられていたアイリス。
それがフェイクであることに気付かなかった。
“ころがる”で空中へと跳んだドンファンにサトシは“はかいこうせん”を指示した。
まさか“はかいこうせん”を使ってくるとは想像もしていなかったアイリスは慌てた。
エモンガに避けるように指示するも、“ころがる”でスピードの増したままの状態で放たれた攻撃を避けられるはずもなく…。
ドンファンの“はかいこうせん”はエモンガにあたった。
『エモンガ、戦闘不能!
一戦目はフロンティアブレーンの勝利!!』
爆音と共に辺りを覆っていた砂埃が晴れたあと、倒れていたのはエモンガだった。
「ありがとう、エモンガ。
ゆっくり休んでてね!
じゃあ、次はドリュウズ!お願い!」
「ドリュー!」
「サトシ!他にもいろんなポケモンいるんでしょ?
次は違う子でお願い!」
「OK!ドンファン、ありがとう。ゆっくり休んでくれ。
よし!じゃあ…次は、コータス!君に決めた!」
「コー!
…コォォオオーーッ!」
「…えっ?」
ポケモンチェンジの希望もあり、サトシはドンファンに労いの言葉をかけたあと、次に出したのはコータスだった。
モンスターボールから登場したコータスは、すぐにサトシの方を振り返り…、大号泣した。
いきなり大号泣しはじめたコータスにアイリスは目を瞬かせた。
大号泣するシーンなんてあった?と言わんばかりだ。
「うん。久しぶりだな、コータス。
そんなに再会を喜んでもらえて嬉しいよ。」
「コォォオオーー!!」
「相変わらず、すぐに感激するな。」
苦笑しながらもコータスの頭を優しく撫でるサトシ。
サトシの言葉を聞き、コータスが大号泣した理由を知ったデントたちはただ、驚いた。
「えっと…つまり、サトシとの再会に感激して泣いてるってことよね?」
「久しぶりにしても、あれ、泣きすぎじゃない?」
「再会に感激して泣くなんて可愛いー!
サトシくんに交換してもらうために交渉しようっと!」
「…ベル。
君、まだ交換を諦めてなかったの?」
「当たり前じゃない!
だって、サトシくんのポケモン、みんな欲しいもの!」
「えぇー…。」
諦めの悪いベルにルークは苦笑をした。
ゾロアを交換してくれと交渉されなくなっただけ、まだマシだがベルのマイペースな発言には戸惑うなという方が無理な話だ。
サトシはきっと、これからベルに会うたびに交換交渉されるんだろうなと、ルークは密かに同情した。
「…で?あのポケモン、いつまで泣いてるのよ?
あれじゃ炎タイプじゃなくて水タイプよ。」
「確かに…。」
カベルネの言葉にデントも苦笑しながら頷いた。
大号泣しすぎて、コータスの足元には小さな涙の海ができている。
しかも、サトシがなだめればなだめるほど、感激して更に大号泣。
大号泣の更に上をいく。
大号泣の上を行く場合、何て言うんだろう?と、そんなことを思わせる泣きっぷりだ。
「コータス…?」
「コオー…クオオオオオー!」
「…あのー…、サトシ。
コータス、泣き止まないみたいだし、…他の子にしたら?」
「あ…ははは…。
うん、そうするよ…。」
どんだけ泣くんだよと突っ込みを入れたくなるコータスの泣きっぷりに、アイリスはこれではバトルにならないと他のポケモンに変えるように提案した。
サトシも、その方がよさそうだとアイリスの提案をありがたく受けることにした。
「コータス、またあとで話そうな?」
「コオッ、コォォオオーーッ!」
今だ泣き続けるコータスにサトシは優しく頭を撫でたあと、コータスを戻した。
「…グライオン!君に決めた!」
「グラーイ♪」
コータスの代わりに登場したのは、グライオン。
こうして、ようやく第2戦目が開始されたのだった。
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