03
「…それだけじゃないって…?」
「えっ?サトシって何かすごい成績でも残してたのか?」
「……サトシさんのこと、本当に知らないんですね。
…じゃあ逆に聞きますけど、サトシさんのスズラン大会の成績はどれくらいだと思ってますか?」
サトシのことを知らない様子のデントたちにキョウヘイは驚きを隠しきれない様子で、逆に問い返した。
その問いかけに予選くらいは勝ち進んだんじゃない?とか、ベスト40か50くらいはいったんじゃない?とそれぞれが思ったことを返した。
シューティーにいたっては、あんな基本も出来てないトレーナーなら予選落ちに決まってるさなどと呟いていた。
その言葉にキョウヘイの額に青筋が浮かんだが、さきほどサトシに言い過ぎだと言われたばかりだったために怒りを抑えながら口を開いた。
「サトシさんはベスト4の成績を残してます。
実際はベスト2といってもいいくらいですけどね。」
「ベスト4!?
うっそ!?サトシが!?」
「でも、ベスト2でもいいってどういうこと?」
予想外の好成績にアイリスは驚きの声をあげた。
ベルはキョウヘイのベスト2という言葉が気になったようで、その意味を問いかけた。
「スズラン大会で優勝したのはタクトさんと言う人なんですけど、サトシさん以外のトレーナーは全員、タクトさんのダークライ一体で負けてるんです。
サトシさんがタクトさんとあたったのは準決勝なんですけど、サトシさんだけなんです。
ダークライを倒したのは。
けど、タクトさんが出した二体目のポケモンはラティオスでした。
普通なら伝説のポケモン相手に怯んだり、諦めてしまうところを、サトシさんは諦めず、真っ向から立ち向かいました。
結果はラティオスとピカチュウが相討ちという形でサトシさんは負けてしまいましたけど…。
決勝の相手はダークライを倒すこともなく負けていたことを考えたらサトシさんがベスト2というべきだと思いませんか?
それに、そのバトルを見て、サトシさんのファンになった人だってたくさんいるんです。」
一番のファンはもちろん僕ですけど。と言うキョウヘイ。
だが、彼の口から語られたのは信じがたい話だった。
確かに、優勝したタクトのダークライを倒した唯一のトレーナーがサトシであればベスト2という言葉も頷ける。
「その前にもサトシさんはいろんな地方を旅されていて、初めてのポケモンリーグ…セキエイ大会ではベスト16、オレンジリーグでは優勝して名誉トレーナーの称号ももらいましたし、シロガネ大会、サイユウ大会ではベスト8、そのあとにさっき言ったスズラン大会でベスト4の成績を残してるんです。」
「……スゴい…。」
「サトシって…本当にスゴいトレーナーだったんだ…。」
「しかも、全てのフロンティアブレーンを倒した唯一のトレーナーなんでしょ?」
「あーんっ!やっぱり後でサインもらっておかなくちゃ!」
キョウヘイの口から語られる事実に誰もが衝撃を受けた。
サトシが好成績を残していたことも、イッシュ以外の様々な地を旅していたことも、知らなかったのだから。
本来なら自分はここまで好成績を残しているだと自慢してもいいはずなのに、サトシはそれを一度もしたことがない。
だから、サトシがそんなにすごいトレーナーだということを知らなかったのだが、ここまで聞くと何から驚いていいのかも分からなくなる。
「サトシのこと…本当に何も知らないのね…私たち。」
「そうだね…。」
「……僕、サトシさんの大ファンです。
それは、サトシさんが好成績を残しているからじゃないんです。
もちろん、サトシさんのバトルスタイルとかに惹かれてるのは事実ですけど、僕はサトシさんがポケモンたちと築いている絆の深さを感じ取れたからです。
まだトレーナーとして旅立つ前にスズラン大会の様子をテレビで見て、自然に思えたんです。
僕もサトシさんみたいにポケモンたちと深い絆を結べるようなトレーナーになりたいって。
…皆さんも、サトシさんがどうポケモンと向き合っているのか、知らないわけではないですよね?」
「キョウヘイ…。」
「…うん、そうだね。
サトシがいろんな大会で好成績を残していることを知ってるかよりも、サトシがどんな人間なのか知ってるかどうかの方が大事なのかもしれないね。」
「すぐに体をはるもんね。」
「優しいよね、サトシくん!」
「それにカッコイイぜ、サトシは!」
キョウヘイの言葉に、元気付けられたデントたちはそう言葉をこぼした。
キョウヘイの言う通り、サトシが大会で好成績を残しているかよりも、知らなければいけないことがある。
サトシはどんなトレーナーなのか、それは旅をして一緒に時を過ごしていなければ知らないことだ。
「ありがとう、キョウヘイ!
そうよね!サトシがどんなトレーナーなのか、私たちは知ってるもんね!」
「これからも一緒に旅をして、サトシのことをもっと知っていきたいね。」
「…………サトシさんと一緒に旅をするとか…羨ましすぎる…!!」
「ふふっ、本当にキョウヘイくんはサトシくんのこと好きなのね。」
「当たり前ですよ!!」
一緒に旅をするデントとアイリスに嫉妬の念を送るキョウヘイにベルはくすくすと笑いながら言った。
もちろん、その言葉をキョウヘイは即肯定した。
「…バカバカしい。
田舎で好成績を残しているからって何だと言うんだ。
どれだけ好成績を残しても優勝できなければ何の意味もないじゃないか。」
フンと鼻で笑うシューティーの言葉を聞いている者は誰もいなかった。
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