02
「サ、サトシさん!あの…!
お、お願いが…!!」
「ん?なんだ?」
シューティーには一応謝った(悪いなどとは微塵も思っていないようだが)キョウヘイは、再びサトシに向き直ると、頼みがあると告げた。
それに対し、サトシはきょとんとしながらも、内容を問いかけた。
「ゴ、ゴウカザルにも会いたいです…!
シンジさんとのバトルで僕、ゴウカザルのこと大好きになって!!ダメですか…?」
「ゴウカザルに?
ああ!いいぜ!」
両手で拳を握り、上下に振りながらゴウカザルに会わせてほしいという頼みごとをすれば、サトシは快く了解し、奥にある転送マシーンに行くと、すぐに戻ってきてモンスターボールからゴウカザルを出した。
「わあぁぁぁーーっ!
ゴ、ゴ、ゴウカザル!は、初めまして!
僕!キョウヘイっていいます!
こっちは相棒のルカリオ!」
「ワッフゥ!」
「ウキャ?ウッキャ!」
ゴウカザルが登場するなり、あわあわするキョウヘイにゴウカザルも最初は不思議そうにしていたがすぐににっこり笑いかけた。
「…あの!ゴウカザルとエレキブルのバトル、本当にすごかったです!
サトシさんがゴウカザルの頑張りとか強さとかを信じてて、ゴウカザルもサトシさんのことを心から信頼してるのがすごく伝わってきて、本当にすごかったです!」
「あぁ!ゴウカザルはすごい努力家だからな!」
「サトシさん。
僕、1つ気になっていたんですけど…、シンジさんがゴウカザルに対して何か言葉をかけようとしていたのを見たんですけど…シンジさんと、ゴウカザルって何か関わりがあったんですか?
普通にバトルしただけだったら、あんな反応はしないですよね?
ゴウカザルもシンジさんに何か伝えてましたし…。」
「…すごいな、キョウヘイ。」
「えっ?」
キョウヘイからの質問にサトシは少し驚いた様子でそう呟いた。
その言葉にキョウヘイは目を丸くしてサトシを見つめた。
「だって、そうだろ?
たったそれだけのことで気付けるなんて…、スゴいことだろ?
普通なら気付かずに終わるだろ?」
「あ…それは…。」
サトシの言葉にキョウヘイは恥ずかしそうに視線をさ迷わせた。
確かに普通なら気付かないような些細な映像だ。
けれど、キョウヘイにとっては普通ではないのだ。
なんていったって、憧れのサトシとそのポケモンのことだ。
ファンなら些細なことにも気付ければ意味がないとさえ思える。
だから、気付けたのだ。
「…もともと、ゴウカザルは…シンジのポケモンだったんだ。」
「えっ?そうなんですか?」
サトシの言葉に驚いたのはキョウヘイだけではない。
デントたちも同じだった。
「ゴウカザル、お前のこと…話してもいいか?」
「ウキャ。」
まさかリザードンに続き、ゴウカザルのことまで話すような流れになるとは思いもしなかったが、サトシは全てを話す前にリザードン同様、ゴウカザルにも確認をとった。
ゴウカザルとて、初対面の人間たちに自分の過去を晒されることに抵抗がないわけではなかったが、こうして確認をとってくれるサトシがいてくれるから了承できた。
サトシがいてくれるから。
だから、辛かった過去も今は受け入れている。
だから、頷いた。
「ゴウカザルも…、ヒコザルだった時にシンジに身限られて…逃がされたんだ。
それを俺が仲間にならないかって誘って今、こうしているんだ。
俺はさ、ゴウカザルに努力する姿とか強さとかいろいろ教えてもらった。
本当に努力家だからさ。」
そう言ってゴウカザルに笑いかければ、ゴウカザルもサトシに笑いかけた。
サトシとゴウカザルのその表情からは計り知れないほどの強い信頼感を感じた。
「サトシさん…。
僕…!もっともっとサトシさんのこと好きになりました!
ルカリオ!僕達もサトシさんみたいに強い信頼関係を結べるように頑張らないと!」
「ワフッ!」
「サトシ!お前、ヘラクロス以外にも格闘タイプの仲間がいたんだな!
あぁー!なんで俺、ルーレットを1で止めたんだよ!?
2で止めてたらゴウカザルとヘラクロスと戦えたのに!!」
「サトシ!私はフカマルと戦いたい!
ね、ねえ!フカマル抱っこしてもいい!?」
「ケ、ケニヤン…。アイリス…。
お、落ち着けって!!」
「あれ?
この人たちいつからここに??」
興奮しながらサトシに話しかけてくるケニヤンとアイリス。
その姿をようやく視界に入れたらしいキョウヘイが目を瞬かせながら、ぽつりと呟いた。
「最初からいたんだけど?」
「サトシしか目に入ってなかったみたいだね…。」
「サトシ!僕…!君のバトルを、しっかり撮影するよ!こんな大迫力の映像、そうそう撮れるものではないからね!」
キョウヘイの言葉にしらけた視線を送るカベルネと、苦笑するデント。
その隣ではルークが興奮しながらも、カメラを回している。
カメラを回してサトシを撮っているルークにキョウヘイが、また何か言ってくるのでは?と思ったのだが、予想に反してキョウヘイは何も言わなかった。
どうやら、サトシのことをバカにしていないからのようだ。
むしろ“大迫力の映像”という言葉にどこか満足気だ。
サトシさんのバトルなんだから、大迫力の映像になるのは当たり前のことだし、撮影したくなるのも分かるよ!と呟きながら頷いている。
どうやら、本当にキョウヘイはサトシのことを好きらしい。
「サトシくん!」
「…エニシダさん?」
「休憩中に悪いんだけど、後半のバトルについて話があるんだけど、ちょっといいかな?」
「あ、はい!わかりました!
ごめん、ちょっと俺…。」
会話の途中でエニシダがサトシの元に駆け寄り、声をかけてきた。
話があるというエニシダの言葉にサトシはデントたちに少し席を外す旨を伝えた。
フロンティアブレーンとして、サトシも忙しいのだと感じたデントたちは快く送り出した。
エニシダと共に関係者用の入り口へと姿を消したサトシの背中を見つめながらデントは口を開いた。
「…僕たちはサトシのことを知ってるようで何も知らなかったんだね…。
スズラン大会で好成績を残していたことなんて知らなかったよ。」
「…えっ?
それだけじゃないですよ?」
デントの言葉を聞いたキョウヘイは心底不思議そうな表情な浮かべながら、そんな言葉を投げ掛けた。
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