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「あーあ…。
負けちゃった…。勝ったらポケモン交換してもらうつもりだったのに…。」
数分後、サトシに負けたベルは選手の控え室へと戻ってきた。
交換交渉するばかりで、バトルに集中しようとしなかったのだから当然と言えば当然なのかもしれないが。
「ベル。
一応、バトル大会なんだから、バトルに集中しなきゃ。」
「…だって、…サトシくんとリザードンに圧倒されちゃったんだもん。」
「えっ?」
がっくりと項垂れるベルに大会の主旨を無視して交換交渉したらダメだとデントが諌めれば、ベルは深いため息をつきながら、そんな言葉を返した。
ベルの言葉の意味が分からず、デントたちは目を瞬かせた。
「なんかね、リザードンが登場した瞬間に2人のオーラに圧倒されちゃって…。
少しふざけてみたら、緊張もほぐれるかなって思って…。」
「それはあのリザードンのレベルが相当高いから?」
しゅんとしながらのベルの言葉にラングレーがそう問いかけた。
ラングレーの問いかけにベルは少し考え込んだあと、口を開いた。
「確かにあのリザードンのレベルの高さも強く伝わってきたけど、一番はサトシくんとリザードンは本当にお互いに強く信頼しあってるだってこと、それと絆の深さがすごく強く伝わってきたから…、それを前にしたら私なんてまだまだだなって思ったの。
バトルをする前からひしひしと伝わってきたんだから。」
「対峙してみないと分からないフレーバーをあの2人は醸し出している、ということだね。」
デントの言葉にベルは強く頷いた。
サトシとリザードンがどんな旅をして、互いにどう接しあってきたのかは知らないが、ベルは対峙してみて、自分の未熟さを思い知らされた。
初戦のベイリーフは女の子が好きな男の子に好意を向けている、そんな可愛らしいものだった。
だが、リザードンはまたそれとは全然違うものを感じた。
言葉では言い表せない、そんな信頼関係をあの2人は築いている。
そう、サトシのパートナーであるピカチュウともまた違う、そんな信頼関係。
互いに認め合い、強くなろうという意志を強く持ちあっている。
それがまた互いを強くしているんだと、そう思えてならなかった。
負けてしまったのはもちろん悔しい。
けれど、ベルの心に強く芽生えたのは悔しさとは違う感情だった。
「私ね、サトシくんとバトルが出来て良かった。
サトシくんがポケモンと築いてきた、あんな強い信頼関係を私もポケモンたちと築いていきたい。
ベイリーフもリザードンも、サトシくんのことを本当に大切に思っていて、とっても強い信頼関係で結ばれている。
それが対峙しただけで伝わるってとてもスゴいことだよね!
私もあんな風になる!」
両手の拳を握りながら、ベルはそう言った。
サトシとのバトルを通して、ベルは何かを学び、感じとり、そして成長した。
「俺ももっと、今以上に修行をつんで、いつかまたヘラクロスにバトルを申し込むぜ!
負けてこんなに気分がいいの初めてだぜ!」
「その気持ち、よく分かる!!
純粋に強くなりたいって思わせてくれるよね!」
「サトシって、本当にすごいトレーナーだぜ!」
「私、サインもらっておこうかなぁ?」
サトシとバトルをしたケニヤンとベルは意気投合したのか、生き生きとした表情を浮かべて、話をしている。
負けたとは思えないほど、いい笑顔を浮かべている。
「対峙しただけで伝わる信頼関係?
そんなものあるはずがない。
勝つか負けるか、強いか弱いか、それだけだ。」
ケニヤンとベルの言葉に納得のいかない表情を浮かべながら、シューティーはそんな言葉を呟いた。
そしてシューティーの言葉を影で聞いている人物がいることに誰も気付いていなかった。
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