09
『ベル選手、ルーレットが2で止まりましたので、2対2のバトルとなります!』
「ねえねえ!サトシくん!可愛いポケモンとカッコイイポケモンの一体ずつでお願い!!」
「えぇッ!?
なんだよ、そのリクエスト!?」
「いいじゃない♪
まず最初は可愛いポケモンでお願いね!
私はチラーミィでいくわ!」
「チラー!」
「んー…可愛い…ポケモンって言われても…人によって感じ方は違うだろうし…。
どうしようかなぁ…。」
次のバトルに気合いを入れ直したサトシにベルは無茶苦茶なリクエストをしてきた。
応える必要などないのだが、ベルの無茶苦茶なリクエストにサトシはどのポケモンを出せばいいのか、迷っていた。
もし、ベルの感じる可愛いポケモンでなければ、何を言われるか分かったものではない。
腕を組み、悩んでいる時だった。
サトシの腰についていたボールからサトシの指示もなく勝手に出てきてしまったポケモンがいた。
「ベイベーイ!!」
「ベイリーフ!?
ちょ、なんで!?」
「ベーイベイ!」
ボールから出てきたのはベイリーフ。
更にどこか不満そうにサトシに何かを言っている。
ベイリーフは、大好きなサトシが『“可愛いポケモン”といえば、ベイリーフだ!』とすぐに自分のことを選んでくれるものだとばかり思っていた。
だからこそ、今か今かと待ち構えていたのだが、予想に反してサトシは誰が可愛いポケモンなのかを考え始めた。
それを不満に思わないはずがない。
“可愛いといえば、私でしょ!?”
ベイリーフからすれば、それは当たり前の主張だった。
「どうしたんだよ、ベイリーフ?」
「ベイ?ベイベーイ!!」
「……?」
しかし、ベイリーフの考えていることが分かるほど、サトシは鋭くない。
鈍い主にベイリーフはぶうっと頬を膨らませていた時だった。
「サトシくん!その子、可愛いー♪
頭の葉っぱとかすごく可愛い!!
その子でバトルしましょ!!」
「へっ?
あ…うん、分かった。」
サトシとベイリーフのやり取りを見つめていたベルは、片手をあげながら、ベイリーフとのバトルを申し込んだ。
ベルが可愛いと納得してくれたのなら、問題はないとサトシはベイリーフの頭を撫でたあと、頼んだぜ、ベイリーフと声をかけた。
ベイリーフもサトシが自分のことを選んでくれたのが嬉しかったのか満足そうに頷いた。
「それじゃ、こっちから行くわね!
チラーミィ!“メロメロ”!」
「ラーミイ!」
「…っ!!しまった…!
ベイリーフ!避けるんだ!」
「………ベーイ…。」
ベルの指示で“メロメロ”攻撃を放ってきたチラーミィ。
その攻撃にサトシは慌てた。
ベルのチラーミィはオスでサトシのベイリーフはメス。
“メロメロ”にされてしまったら、満足に技も出せなくなると慌てたサトシ…。
しかし…。
「……ベイリーフ…?」
結果だけを言えば、ベイリーフはチラーミィの“メロメロ”をくらうことはなかった。
だが、サトシの指示で“メロメロ”を避けたわけではなく、“メロメロ”の全てをつるのむちで叩き落としたのだ。
あげくに、ベイリーフはチラーミィを強く睨み付けた。
技に名前をつけるのなら、“こわいかお”だ。
素早さが、がくっと下がっても納得のいく恐ろしい顔だ。
その顔はふざけんじゃないわよ!ああん!?とでも言わんばかりだ。
サトシに背中を向けている状態なので、サトシからはベイリーフがどんな表情をしているのかが見えないので、どうしたんだ?ベイリーフ?なんて声をかけて首を傾げている。
だが、睨み付けられた本人…、チラーミィはその迫力に怯え、思わず後退りした。
「えっと…?ベイリーフ?」
「ベイベーイ♪」
ぽかんとするサトシとベルとチラーミィ。
だが、ベイリーフはサトシに呼ばれ、嬉しそうに近付くと、擦り寄った。
その表情はとても幸せそうだ。
「…なるほど!
もうベイリーフはすでにサトシくんに“メロメロ”にされてるから、そんなもの通用しないわってことなのね!!
スゴいわ、サトシくん!“メロメロ”が使えるのね!?
しかもサトシくんのベイリーフは“こわいかお”まで使えるのね!」
「はっ?
いや、別に“メロメロ”を使ってるわけじゃ…。
そもそも、俺…“メロメロ”なんて使えないし!
ベイリーフだって“こわいかお”なんて覚えてないし…。」
ベルの言葉に目が点になったサトシ。
人間に“メロメロ”が使えるはずがないのに、何をいってるんだとサトシは慌てて否定した。
だが、ベルの言葉はあながち間違いでもない。
ベイリーフはチコリータだった頃からサトシのことが大好きで“メロメロ”にされているのだから。
“こわいかお”に関してはサトシ自身がベイリーフの怒りに満ちた顔を見ていないのだから、その言葉の意味を全く理解できなかった。
サトシはもうバトルよりもベルとベイリーフのペースに引き込まれっぱなしだ。
「“メロメロ”が使えないなら…、チラーミィ!“くすぐる”!」
「っ!ベイリーフ!“つるのむち”!」
「ベイベーイ!!」
━━━ガキン!ドカン!
サトシの指示で“くすぐる”攻撃をくらう前に“つるのむち”を放ったベイリーフ。
“つるのむち”はチラーミィに当たった。
だが、“つるのむち”ではあり得ない音が響いた。
「ラミィ…!」
「……えっと…、ベイリーフさん?」
サトシのベイリーフはメスでありながら、オスのチラーミィの“メロメロ”が通用しないというあり得ない状況にあっさり納得したベルは次の攻撃の指示を飛ばした。
それに対抗するためにサトシはベイリーフに“つるのむち”を指示するが、その威力はいつも以上に強力で、チラーミィは吹っ飛ばされた。
普通の“つるのむち”なら“バチン”とか“バチィ”というような音がするものだが、今回の“つるのむち”の音はあり得ない響きを放った。
そして、あり得ない響きを放った“つるのむち”一発でチラーミィはKOされた。
『チ、チラーミィ…戦闘不能!』
「えーっ!?
一発で終わり!?」
「…ベイリーフ…、なんか機嫌悪くないか?何かあったのか?」
「ベーイ♪」
サトシに問いかけられるも、ベイリーフは何でもないわ♪と言わんばかりにサトシのそばに寄ると、にっこり笑った。
ベイリーフの機嫌が悪かったのは、久々に会えたサトシとの時間を邪魔されたくなかったのと、サトシ以外のポケモンに“メロメロ”なんてふざけた技をはなたれたこと、更にサトシと離ればなれになったことで溜まっていたストレス解消のためのはけ口とされたチラーミィだったのだが、その事実に気付ける者はいない。
幸せそうに擦り寄るベイリーフに戸惑いつつも、御苦労様と声をかけてその頭を撫でたサトシ。
「じゃあ、次はカッコイイポケモンでお願い!」
「分かった!じゃあ、ポケモンチェンジだな?」
「うん!」
ベイリーフの頭を撫でていたサトシはベルからのリクエストに頷いた。
「お願い、エンブオー!」
「リザードン!君に決めた!」
サトシが、繰り出したのはリザードン。
そして、ベルが繰り出したのはエンブオー。
炎の対決となった。
- 10 -
[
*前
] | [
次#
]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -