07
「ピカチュウ!ヨルノズク!
君に決めた!!」
「ピカ!」
「ヨルー!」
バトルフィールドへと駆け出したサトシはステージに立つと、ピカチュウとヨルノズクをフィールドに放った。
そしてそれを見たデントたちは1人の例外もなく驚愕にその表情を染めた。
「ええぇぇぇ!?
なんで!?どうして、サトシくんがあそこに!?なんでなんで!?」
「わ、分かんないよ!
フロンティアブレーンが登場する…はずよね…?」
「まさか…サトシがフロンティアブレーンだということ…?」
「サトシが?ま、まさか…そんな…はずはない。」
「呆けてる場合じゃない!撮影しなきゃ!
きっと、これは貴重な映像になるだろうし!!
ゴビット、ゾロア、手伝ってくれ!」
「ちょっと待って!
ピカチュウはお馴染みでもあのポケモン…見たことないわよ?」
サトシの登場に動揺を隠せないデントたち。
更にサトシが繰り出したのは見たことのないポケモンだ。
すかさずシューティーがヨルノズクに図鑑を向けた。
『ヨルノズク。
ふくろうポケモン。
ホーホーの進化系。
特殊な能力をもつ両目は、わずかな光さえあれば暗闇でも昼のように見える。』
図鑑の情報から、デントたちはサトシが繰り出したポケモンがヨルノズクという名前なのだとようやく知った。
「え?でも、図鑑と比べて色が違わない?」
「…ということは、サトシのあのヨルノズクは色違い…ということだね。」
「色違いなんて初めて見たぜ!
レアなポケモンってことだな!」
「スゴいスゴーイ!!」
「えっと、結局…サトシってフロンティアブレーンなの?」
「状況から考えるとそうなるんだろうけど…やっぱりサトシはとてもミステリアスなテイストを隠し持っていたんだね…。」
「……どうせ、フロンティアブレーンの登場前の余興でもしてるんだ。」
サトシがフロンティアブレーンであるということを認めようともしないシューティーにデントは思わず苦笑した。
この状況から考えればサトシがフロンティアブレーンであることは明らかだ。
もし、シューティーの言う通り、余興として登場しているのなら、司会をつとめているエニシダが前もって言っているはず。
それもなかったのだ。
「だけど、ポケモンを魅せる演技も気になるなぁ…。
見逃さないようにしないと!!」
「あのヨルノズク、可愛いー!!
欲しいなぁ!」
「どんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだな!!」
ルークとベル、ケニヤンはサトシがフロンティアブレーンであることをあっさり受け入れ、これからサトシが何を見せてくれるのか楽しみのようで3人の目はキラキラと輝いていた。
デントたちの動揺をよそに、ヨルノズクの背中にピカチュウが乗り、会場をヨルノズクが一通り旋回したあと、ピカチュウとヨルノズクはサトシのそばまで戻ってきた。
そして、それを見守っていたエニシダがサトシの方を見て頷いたのを確認すると、サトシはピカチュウとヨルノズクとしっかり目を合わせた。
「ピカチュウ!上空に向かって“エレキボール”!」
「ピカ!ピカピカピッカー!」
サトシの指示でピカチュウはフィールドの中央まで駆けていくと、上空にエレキボールを放った。
「ヨルノズク!“じんつうりき”!」
「ヨルー!」
更に上空へと打ち上げられた“エレキボール”はヨルノズクの“じんつうりき”により、落下することなく宙に浮いていた。
更に“エレキボール”は“じんつうりき”の力により、幻想的な光を放っている。
その幻想的な光景に感嘆の声がいたるところから漏れていた。
「ヨルノズク!そのまま“エレキボール”を上空に打ち上げたあと、“エアスラッシュ”!
ピカチュウは上空の“エレキボール”に向かってもう一発“エレキボール”!」
「ピッカー!」
「ヨルー!」
“じんつうりき”と“エレキボール”が合わさり、幻想的な光景を作り出していたが、それで終わるサトシではない。
ヨルノズクの力で“エレキボール”が更に上空に打ち上げられ、ピカチュウが再び“エレキボール”を放ち、ヨルノズクは“エアスラッシュ”を放った。
2つの力が、打ち上げられた“エレキボール”に当たった瞬間、それは虹色になって弾けた。
まるで花火のように弾けたそれを見た観客は大きな歓声をあげた。
一見簡単に見えるが、ピカチュウが二発目に放った“エレキボール”とヨルノズクの“エアスラッシュ”が同時に一発目の“エレキボール”にぶつかったからこそ、出来る技だ。
タイミングがずれれば、あのような虹色に輝く花火にはならない。
その辺の計算をしたのは、サトシではなくヨルノズクだ。
だが、ヨルノズクの知能の高さを信じているからこそ、サトシも迷うことなく指示を飛ばすことが出来たのだ。
信頼関係が存在するからこそ出来ること。
この場にいる者でそれを理解できる者はエニシダだけだろう。
『それでは、ご紹介しましょう!!
たった今、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたのは、フロンティアブレーンのサトシ!
彼はカントー地方に存在するフロンティアブレーンを全員倒したたった1人のトレーナー!
何人も挑戦者がバトルを挑みましたが、未だに全てのフロンティアブレーンを倒したのは彼1人です!
今はイッシュリーグ出場を目指し、ここイッシュ地方を旅していますが、イッシュ以外の土地をいくつも旅をして、たくさんの仲間に出会っています!
皆様に、イッシュには存在しないポケモンと彼が築いてきたポケモンとの絆を見届けていただきたいと思います!
それでは!さっそくバトル大会を開始したいと思います!
では最初の挑戦者の登場です!』
『ワアアアアァァァーー!!』
エニシダの言葉に会場は更なる賑わいを見せた。
サトシが披露した演技に会場の観客はサトシのトレーナーとしてのレベルが高いことを理解し、そしてどのようなバトルを見せてくれるのかが楽しみとなったようで、観客の誰もがサトシへと視線を向けていた。
「…状況から見て間違いないとは思っていたけどやっぱり、サトシはフロンティアブレーンだったみたいだね。」
「しかも、全てのフロンティアブレーンを倒したのがサトシだけって…、これってスゴいことよね…?」
「サトシくんって、有名人だったの!?
サインとかもらえるかな?」
「どうだろう?
でも、撮影しなきゃいけないってことは確信したよ!!」
「こ、このソムリエールの私がしっかりじっくりテイスティングしてあげようじゃない!!」
「…ドラゴンポケモンも持ってるなら、絶対にドラゴンポケモンでバトルしたいわね。」
「俺は格闘ポケモンだな!」
サトシがフロンティアブレーンだったという事実に驚きは隠しきれないものの、サトシがどんなポケモンを出し、どんなバトルをするのかが楽しみでもあるメンバーは、それぞれがサトシとのバトルにどのポケモンを出すべきか考えを巡らせた。
イッシュ地方以外に生息するポケモンの情報をほとんど知らないからこそ、慎重に考えなければならない。
「…いくら田舎とはいえ、バトルフロンティアを制覇したたった1人のトレーナーが、あんな基本も出来てないサトシだなんて…僕は信じない。
大したことないんだってことを僕が証明してみせる。」
だが、そんな中でもシューティーは未だにサトシが実は強いトレーナーであることを認めるつもりはないのか、1人ぽつりとそう呟いた。
まだ戸惑いが抜けきらないまま、いよいよバトル大会が開幕された。
『最初の挑戦者は、ケニヤン選手です!!』
「…アクセントが違うって…。」
最初の挑戦者はケニヤン。
名前を呼ばれ、フィールドに立つも、相変わらず正しいアクセントで名前を呼ばれることなく、ケニヤンはがっくりと項垂れた。
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