月光に誓いを
あのとき…何故油断してたんだろう?
ベッドで青白い顔をして眠るジュードを見ながらアルヴィンは思った。
話は数時間前に遡る。ジュードたちは町の人から周辺にいる魔物を倒してほしいという依頼受けたのだ。
もちろん最終決戦が迫ってるので、あまり時間はないのだが、それを理由で断る訳にはいかない。
だからこそ依頼を受けることにした。
ジュードは依頼も大切だが、現地に行く前に物資の補給をしたほうが良いと考えた。
その提案を口にすると、誰も反論はしなかった。
補給物が多いので、それぞれ担当を決めて街中ではバラバラになり、入り口で会おうねというジュードの提案に頷くのだった。
「さてと…僕は道具屋にでも買い物行こう」
と呟きながらポケットにある買い物メモリストを取り出す。そのときに。
ジュードに声をかける人物がいて、聞き覚えのある声ジュードは内心あきれて後ろから抱き締めるアルヴィンを見た。
「アルヴィン、僕ちゃんとアルヴィン用の買い物リスト渡したよね、なのに何でまだこの場所にいるの?」
「悪い悪い!それにしてもジュード君は真面目だね。サボろうとかは思わないの?」
「そんなこと考えないよ。ほらっこうやって 話している時間も他の皆は担当の役割をこなしているんだから、早く行かないと!」
ジュードに急かされてアルヴィンは「仕方 ねぇな〜」と呟く。
「まぁ、ジュード君を抱き締めることが出来てエネルギー満タンになったし行くとします か」
そう言いながらアルアルヴィンは町の人混みの中に消えた。
ジュードは担当だった道具屋の買い物を済ませたが一応忘れてないものがないか確認の為に袋を開けてメモ用紙と交互に見つめながら確認する。
袋の中にライフボトルや各種のグミが入っており、メモ用紙とも一致したの買い忘れものがないことに安堵して、そろそろ集合する時間だと思い門の所に向かった。
集合場所には全員が揃っていて、何故かアルヴィンが正座をして皆からの説教を受けていた。
とりあえず状況が知りたいので、誰かに声を駆けようとするが、雰囲気的に話しかけられる様子ではなく困るのだった。
そんな考え込んでいるジュードに、仲間の1人、ティポが話しかけて…いや…噛みついてきた。
「もう!いきなり飛び付いてくるのは駄目だっていってるでしょう!」
ジュードの怒りの声もティポには聞こえなかったのか、もう一度ジュードに噛みつこうとしたティポに気がついたジュードはサッと避ける
「うぅ…ジュード君の意地悪」
「意地悪じゃないよ。ところで皆がアルヴィンを責め立ててるの?」
「えっとね、皆で買い出しをしている時にアルヴィンだけがのんびり休んでたんだよ。その時は後で行くよと言ったのに、結局アルヴィン君買い物を忘れたみたいで…」
ティポの言葉を聞いてジュードはアルヴィンに対して少しだけあった同情の気持ちを切り捨てる。
「自業自得だよね…まったく…たまには皆に説教されるほうがアルヴィンとって良いかもね
そう良いながらジュードはアルヴィン説教会に自分も入りたいと思い、少しニヤリと笑う。
「それじゃあ僕も説教会に参加しようかな?楽しそうだし」
こうしてジュード加入によりアルヴィンは余計に疲れたのだった。
「はぁ…参ったよ優等生の説教は…」
「アルヴィンが悪いんでしょ!これに懲りたら買い出しをしているときにサボるのは禁止だよ!」
アルヴィンの返答はへいへいという曖昧だったが、これ以上追及しても変わらないと思ったので、依頼の魔物の退治をすることにした。
その戦闘ではジュードは女性達に囲まれ震えていた。
女性に囲まれるなんて普通なら嬉しいが、その女性たちの目付きと雰囲気が怖くジュードは震えていた。
「ジュード!私とリンクしようよ!幼なじみの力を見せつけてあげようよ!
「いや効率的に考えたら私のほうが適任だぞ。私はジュードとたくさん共鳴技もあるか らな」
「ほほ、私の精霊術で必ずジュードさんをサポートいたしますよ。たまには私とのリンクはいかがでしょうか?
女性たちの話だったが何故かローエンも加わり誰がジュードとリンクするかを迷っていた。
ジュードとリンクしたいのは皆が同じなので、今まであまり主張しなかったエリーゼも立候補する。
「私もジュードとリンクしたいです」
『ミラやレイアより役にたつよ!』
ティポの腹黒さを聞いたような気がしたがジュードもアルヴィンも傍観していた。
「もう僕だれがパートナーでも良いんだけど…」
「そうか。じゃあ俺とリンクするか?」
「アルヴィンと…わかった宜しくね」
アルヴィンは心の中でジュード争奪戦に勝利したことをガッツポーズしていた。
二人は女性人+老人を待っていたがなかなか決着付き添うにないので、この辺りの魔物なら二人でいけそうなので二人は女性人+老人を置いて門を出ていったのだった。
肝心の女性人やローエンは五分後にジュードたちがいなくなったことに気がつき、おそらく自分たちが話しているときにジュードにリンクを頼んだアルヴィンにミラ達は殺意を覚えた。
幸い二人は然程遠くには行ってないようだが、魔物の数が予定より多いのか苦戦しているように見える。
服はボロボロになったが、怪我をしてある様子はなく、ミラ達は安堵した。
しかし、ジュードが最後の一体を倒して、アルヴィンは武器をしまい、一息ついた。
しかしその油断が甘かった。
「アルヴィン!!」
ジュードの切羽詰まった声にアルヴィンはまだ完全に敵が倒されていないことを気がつくが武器をしまってしまいなかなか戦闘体制になれなかった。
その魔物は死にものぐらいで最後の力を振り絞って鋭利な爪が襲いかかる。
「アルヴィン!!」
ジュードの声が聞こえたような気がした。
しかしドンと自分を押す音に何があったのかわからなかった。
アルヴィンには何が起こったのか理解出来なかった。
何故なら先ほど自分がいた場所にはジュードがいたのだから。
自分の油断が招いたことだから死を覚悟していた。
けどそんなアルヴィンをジュードは突き飛ばして代わりにアルヴィンに向けられていた鋭利な爪がジュードを襲う
「…っ!!」
ジュードは肩から背中まで鋭利な爪でばっさりやられて地面には赤いシミが広がる。
ジュードは痛みに一瞬だけ呻き声を上げるが最後の力で魔物を倒す。
「………っ!これで終わりだ!」
ジュードの拳に魔物は絶滅して、そしてジュードもその場で倒れたのだった。
「ジュード!おい!しっかりしろ!」
ジュードに庇われたアルヴィンは必死に意識の覚醒を促す。
「ジュード!死んじゃ嫌だよ!ジュードがこんなところで死んだら私は王先生になんて説明すれば良いの!?
「ジュード!嫌です。もう友達を失いたくないんです!」
『友達がいなくなるのは悲しいよ』
ひたすら泣き叫ぶ女性人たち。
そしてアルヴィンは自分の油断さが招いた結果に後悔していた。
何故魔物を倒したのを確実に確かめたかったのか。
何故自分は魔物相手に終わったからと言って背を向けてしまったのか。
考えれば考えるほど後悔の念は強くなるばかり。
その様子をローエンも見ていたが、ここで皆と一緒に取り乱したりはしようとはしなかった。
ここで果たすのは年長者としての務め。
だからこそ冷たいと思われるかもしれないが、ローエンは口を開く。
「皆さん、いつまでそうやっているんですか!皆さんが泣いたからといってジュードさんが元気になりますか?怪我が無くなるんですか?今は一刻も早く、街に戻り治療するのが先決です。
ローエンの言葉に初めは冷たいと思ったがローエンの目線は凄くジュードを心配しているのがわかり何も言えずに傾いた
レイアは今自分たちがいるのはル・ロンドの街の近くだと思いだし皆に提案する。
「あっル・ロンドの街には治療院があるよ。そこに行こう!!」
レイアの言葉に傾きジュードは責任があると感じているアルヴィンが背負い一行はル・ロンドを目指すのだった。
ル・ロンド。
一行はひたすら走り治療院に到着する。 バタンという音と共にレイアの母親が受付から顔を出した。
「おばさん!大変なんです!ジュードが!!」
レイアの声にハッとしエリンはアルヴィンに背負わされているジュードが目に入る。
イル・ファンに向かうときに買った服も血で真っ赤になっていた。
「ジュード!!」
エリンの叫び声が聞こえたのか診察室から父親ディラックが出てきた。
「ジュード!?どういうことだ?これは…いや今は治療が先決だな」
ディラックとジュードとエリンの三人は診察室に入っていく。
その時にディラックの瞳が一瞬アルヴィンを睨み付けるようにしていたのを誰も気がつかなかった。
何時間経ったのだろう、診察室からディラックとエリンが出てきた。
だれもが真っ先に容態を確認するが、一命はとりとめたという報告に皆が安堵して床に座り込む。
安堵したのは待合室で待っていた客人もそうだった。
診察室から出たディラックは目線だけでこっちに来いと言っているので、アルヴィンもそれに気がつく。
二人は一番奥の部屋に入り、パン!という音と共にアルヴィンを叩く。
殴られることは予想していたのでアルヴィンは特に驚かなかった。
ディラックは叩かれた勢いで尻餅をついたままのアルヴィンを憎しみの籠った瞳で睨み付ける。
「今回の怪我の原因は理解した。しかし今後アルクノアがお前がいることで狙われないとも考えられない。
「今後はジュードとの接触は避けて貰おう」
そう良いながらディラックは部屋を出ていこ うとするが、慌ててアルヴィンは立ち上がり、ディラックを呼び止める。
「初めは嘘の仲間にほとほと嫌だとも思ったさ。でも今はこのメンバーがジュードが好きなんだ!!だからこのまま一緒にいさせてくれ。頼む!!」
その言葉にディラックはため息をつき「チャンスは一度だけだと言って部屋を出ていった。
『…ジュード…』
無意識にジュードの名前を心のなかで呼んでみるが当然返答はない。
アルヴィンはジュードが眠っているベッドの部屋に入り、眠っているジャードの手を握る。
強く強く…この温もりが消えない為にも。
「俺は強くなる。お前に守られてるんじゃカッコ悪いもんな。だから互いに傷付かないように、もっと強くなろうな」
カーテンの隙間から見える月の光にアルヴィンは誓うのだった。
END
※※※
ムーン様が一周年のフリリクを受け付けていると教えてくださったのでジュードくん受けでシリアスなお話というリクエストをさせていただきました。
女性陣たちの迫力はきっとジュードくんでなくても引いちゃいますよね笑
ジュードくんなら仲間のために体をはることなんて躊躇わないと思うので、アル憫…違った、アルヴィンくんの気持ちもよく分かりますよ!!
ムーン様、リクエストに応えていただき、ありがとうございました。
これからもムーン様のご活躍を影ながら応援させていただきますね。
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